公開日:2024年10月25日
更新日:2024年10月25日

売上目標を達成しながらコアなファンとの交流も図る「LENO」のポップアップ活用術

2015年に原宿の小さなマンションで生まれたブランド「LENO(リノ)」。どんな戦略で成長し、コアなファンをつかむに至ったのか。今回、新丸ビルでのポップアップイベントに参加して大きな成果を上げた「LENO」の代表取締役・安藤 歩さんにお話を伺いました。

目次

■立ち上げから9年で、コアなファンの心をつかむ人気ブランドへ
■インスタでファンを増やし、雑誌広告で卸先を開拓、その後ECへ
■ポップアップは新たなお客様との出会いの場であり、これまでのお客様に感謝を伝える場
■インスタのストーリーズを最大活用
■「見てほしい」と「見たい」が合致するポップアップ
■新丸ビルで初となるポップアップに出店

■立ち上げから9年で、コアなファンの心をつかむ人気ブランドへ

―まずは「LENO」のご紹介をお願いします。

「LENO」はデニムを軸にしたアメカジのレディースカジュアルブランドで、2015年にパートナーと二人で立ち上げました。パートナーがディレクションと生産管理を担当し、企画・販売・広報など現場仕事全般に加え、経営を私が見ています。
「LENO」はシーズンテーマを設けず、流行に流されない定番アイテムが多いので性別や年齢に関係なく長く着られるのが特徴です。

ブランドを始めたとき私は40歳目前で、ターゲット層は自分と同い年ぐらいのつもりでした。ところが意外にも20代のファンがすごく増えたんですね。今では下は18歳の高校生から60代までコアなファンがいて、夫婦やカップルで来てくださる方もとても多いです。
「私はこれ買って、あなたこっち買って、交換して着よう」みたいな会話が聞こえたり、50代のお母さんと20代の大学生の息子が来て、相談しながら買い物したりという風景もよく見ます。最近では「最初のころに買ったジーンズを10年近く着続けて、改めて同じモデルを買いたい」というお客様も多いんですよ。

レディースデニムジャケット(左)はデビューコレクションから継続している定番アイテム。その後ユニセックス展開になり、オーバーサイズのデニムジャケット(右)を販売し、ベストセラーとなっている。

ジーンズは形もサイズも豊富なので、必ず似合う一本が見つかる。多くのお客様は時間をかけて何回もサイズやシルエットを試着比較して自分のお気に入りを見つけて購入される

―定番であること、流行に惑わされないこと、素材が上質なことなどの理由でコアなファンが多いんですね。

■インスタでファンを増やし、雑誌広告で卸先を開拓、その後ECへ

―ブランドを立ち上げてからは、どのようなマーケティング施策をとってきたんでしょうか?

ブランド立ち上げ当初は、先輩の展示会場を間借りしてとにかくブランドをお披露目するところから始めました。ただ全然オーダーはつかなかったですね……。唯一スイスのセレクトショップだけがデビューコレクションでオーダーをくださって、それでなんとか助かった初の展示会。その後は何度か合同展示会に出しました。

2015年はじめての展示会
(先輩のブランドの展示会で1ラックを借りて出展)

インスタグラムは、早い時期から運用開始しています。
インスタ創成期で、ファッション系コンテンツの伸び率が高かったんですね。たまたまうちの洋服を着てくださっているお客様がマイクロインフルエンサーだったりして、そこから自然発生的にフォロワーさんも増え、ファンも増えていきました。今は延べ9万人ほどのフォロワーがいます。 けれども次第にインスタグラムでは、次第に一般の方でも気軽にブランドを立ち上げる動きが増えてきたんです。

それで「ここはドメスティックブランドとしてちゃんと差別化をしよう!」と考え、あるファッション雑誌で広告を打ったところ、それを見たセレクトショップのバイヤーさんからお問い合わせが少しずつ増えていきました。お客様の属性と媒体との相性が合う雑誌をいろいろと試行錯誤して、今もインスタグラムでの広報活動に加え、雑誌媒体への露出にも力を入れています。

元々は展示会ベースでの卸売で商売をしようと思っていましたが、オーダー数量が工場のミニマムロットに満たず、どうしても我々が自社で売るチャネルが必要でした。

そこで、簡易的なECサイトを開設してみました。ただ、ボトムスが中心のラインナップなので、どうしても「サイズ感」や「試着」といった問い合わせが増えてきたので、当時原宿にあった事務所を半分空けて、ショールーム機能も兼務させつつ「LENO ATELIER SHOP」をオープンさせました。
最初は週に2日くらいの営業しかできませんでしたが、ありがたいことに徐々に来店客数が増えたので2階の部屋を借りて事務所を移動し、一階を改装して完全に店舗にしました。

2016年当初のLENO ATELIER SHOP
(ショールームとして事務所の一角を活用)

■ポップアップは新たなお客様との出会いの場であり、これまでのお客様に感謝を伝える場

 ―ポップアップストア出店のきっかけを教えてください。

東京の店舗が軌道に乗ったあと、百貨店などからのポップアップのお誘いがあり、実績を増やしていきました。その後、ECでの売上では東京に次ぎ大阪のお客様が多かったことから、大阪で2店舗目の直営店をオープンしようとなりました。

テストマーケティング的にお客様の反応を検証したのが大阪での初自社ポップアップです。お客様に受け入れていただけるか不安でしたが、結果として近隣の府県からもたくさんのお客様が来てくださいました。

「ある程度、集客ができるところであれば、実店舗を構えても勝算はある」というのが、ポップアップで確認できたため、東京で直営店をオープンした翌年に大阪店をスタートさせました。

 ―ポップアップの出店に際しては、どのようなことを重視されていますか?

会場全体の雰囲気はかなり大事にしています。什器一つとっても物が安っぽく見えては洋服も良く見えません。

売れればいいのではなくて「LENO」がちゃんとブランドの世界観も含めて、この場所で、みなさんに会いにきました!ということは大事にしたいと思ってます。

大阪のポップアップ会場(2019年)

―テストマーケティングのほかにも「LENO」がポップアップに求めていることはありますか?

うちの場合は、新規のお客様を増やすというよりは、元々「LENO」を知っているファンの人たちに向けての感謝の気持ちが大きいですね。普段ECでしか買えないというお客様が見に行きたいと思う場にしたいです。新規のお客様ももちろんいますが、洋服って趣味志向が大きく影響されるからたまたま通りがかりのポップアップで初めて見て、すぐに買う、とはなりにくい。どうしても既存のお客様が比重としては大きくなります。

■インスタのストーリーズを最大活用

―告知ではどのようなことを心がけていますか?

告知はインスタでしますが、事前にどのモデルを見たいかをインスタグラムのアンケート形式で聞きますね。定番商品がを含め常時60型があるので全部は会場に持っていけないですから。見たいものをメールやDMで教えてください!と告知しても動きはないんですよ。でもインスタグラムのストーリーズの中でアンケートにすればポチっとするだけでいいというのは、お客様にとっても気軽にできるからか、反応はいいです。

―インスタでの「LENO」さんは文章少な目でクールな雰囲気を重視しているように見えますが、ストーリーズで顧客との対話に活用しているんですね。

はい、ストーリーズと通常の投稿は使い分けています。今回、新丸ビルで開催された「丸の内 POP UP week」(※)では元従業員の2人が手伝ってくれたんですが「今日はこのスタッフが在店してます!」とストーリーズにアップしたところ、当時そのスタッフの担当顧客様がわざわざ会いに来てくださいました。

※2024年9月6日(金)〜 10月5日(土) の期間限定で、新丸ビル3F アトリウムにて個性的な5つのブランドが週替りで登場するオンライン限定販売のPOP UPイベント

 ―ほかにもポップアップ出店の際に何か工夫をしていることはありますか?

PCやスマホの向こう側にいるお客様が実際どういう人たちなのかをうかがい知るためには、とにかく会場に足を運んでもらわなくちゃいけない。ただ、実のところ、そういった行動を起こさせるのは思ったよりもハードルが高いんです。

お客様はそのイベントに特別感を求めていますから、例えば限定商品やノベルティは必ず用意しています。買った商品を入れるオリジナルのエコバッグが人気なので、イベントごとに用意をしたりしていました。

歴代のエコショッパー

ノベルティグッズに関する記事はこちら

―「SHOPCOUNTER」に出会ったきっかけやご利用されたのはどういった理由だったでしょうか?

展示会場をネット上で探す際、会場の運営会社に直接問い合わせてましたが、手間と時間がかかる上、規模を広げていくたびに使い慣れた会場が手狭になってきたり、タイミングによってスケジュールが合わないことがあったりして新たな場所を見つける必要が出てきました。

そんな中、「SHOPCOUNTER」にたどり着きました。多くの会場は半年以上前から電話をかけて空き状況を確認する手間がありましたが、「SHOPCOUNTER」では、空き状況がリアルタイムで見られるので、いくつか用途にマッチした会場を見つけては使わせていただいています。

LENOが利用したポップアップストア会場

「渋谷」駅、「原宿」駅からそれぞれ徒歩圏内に位置する、150㎡の広々としたイベントスペース。

通常はバッグブランドのショールームとして使用されており、ハンガーラックやディスプレイラック、商談テーブルなどが豊富に揃っている為、アパレルの展示会やポップアップストアに非常に利用しやすいのが特徴。

白を基調として設計された広々とした空間のため、ブランドの世界観を自由に演出したいポップアップストアにおすすめ。

■「見てほしい」と「見たい」が合致するポップアップ

―ポップアップ出店されてみて、どのようなところに効果を感じられていますか?

そうですね。ポップアップの一番の効果効用は、「商品を見てほしい、感謝したい」という私達の気持ちと「見たい、試着したい」というお客様の気持ちがちゃんとマッチできる場所を提供できるということ、それに尽きるかと思っています。

ほかのプロモーション施策と比較してのポップアップストアの優位性から考えても、実際にお会いできるということが一番ですね。東京と大阪の直営店は一定の役割を果たしたので今年でクローズさせたということもあり、これからますますポップアップが貴重な出会いの場となります。

たとえその場で服を買われなくとも、後々思い出してくださればきっとECでの購入も検討いただける、と思っていますので「これだけ予算をかけたので、やるからにはこの売上目標を達成しなければ」といったことはあまり考えていません。

もちろん一定の目標は決めますけど、目の前のお客様との時間を大事にすることを重要視しています。結果としてそれを上回る集客数と売上が必ずたたき出されるので、いつもありがたいなぁという印象ですね。

 ―ポップアップ出店での印象的な出来事がありましたら教えてください。

わざわざ近隣の県から来てくれた方が、お土産とか持ってきてくれるんですよ。一般人の私もちょっとアイドルになった気分がします(笑)。

東京のお店に行って接客してもらいましたとか感謝の気持ちを伝えてくれるお客様も多く、全身LENOの服でコーディネートして来られる方もいらっしゃって、うれしいですね!

―ポップアップ出店時には、どのような点で苦労しますか?

販売スタッフの手配でしょうか。おそらくD2Cブランドでは販売に特化した人が常駐していないと思うんです。
飲食店は店に入れば絶対食べていくし、カフェも飲んでいきますが、何もお金落とされないで帰られちゃう可能性があるのがアパレルです。

だからこそ、接客は常設店と同じ熱量で挑みます。私たちはお店を運営していたので慣れていますが、現在はお店の閉店と共に販売スタッフがいなくなったため、人材含め、接客のクオリティなども今後苦労していくのかなと思います。

―弊社では一応オプションとして販売スタッフをサポートするサービスは持っているんですよ。

ポップアップ出店に慣れていないとか、人手が足りないときには、無理に自分でやるよりはそういうサービスを利用するのもいいと思います!

■新丸ビルで初となるポップアップに出店

―さて、今年9月に新丸ビル3Fのアトリウムにて初となるポップアップが開催されました。

こだわりの機能・デザインを兼ね備えたオンライン限定販売の5つのブランドの出店サポートを「SHOPCOUNTER」が担当し、「LENO」さんにもご参加いただきました。
新丸ビルという場所にマッチするD2Cブランドに出店してほしいと思い、お声がけさせていただきましたが「LENO」さんは、話を聞いたときにどう思われましたか?

まず条件として物販ができない(商品をお試しいただきECサイトにて購入)スペースであるということと、新丸ビルの客層に合うだろうかというところに少し不安はありました。

―実際、出店してみていかがでしたか?

9月13日から9月19日まで出店したのですが、最初の3日間は特にたくさんのロイヤルカスタマーが来店くださいました。

その後も店舗に行けないまま閉店して残念、という初めましてのお客様もたくさんいらしてくれたので、売上は予算の600%という異例の結果となりました。

―それはすごいですね!苦労された点は?

その場で会計ができず、自社のECサイトにつなげて購入いただくという形だったので、諸手続きが煩雑になった点でしょうか? またお客様が買った商品を持ち帰る楽しみがなかったのでそこには仕掛けが必要でした。

―今回は、どのような仕掛けにしたのでしょうか?

ECで買ってご自宅にお届け、は荷物がない分便利ではありますが、持ち帰りができないので、人気のエコバッグもノベルティとして使えない、となったんです。それが配れないということで、思い切って20%OFFのを打ち出しました。

通常定番商品は割引にすることはなく、セールにもかけていませんから、定番商品をずっとほしくて悩んでいる人が来てくれるだろうと思いました。確かにすごく効果があって、そこを目がけてくる人が多かったです。あとは、やはり何か持ち帰りたいという気持ちはみなさんあると思ったので、ノベルティとして、こちらも人気の定番オリジナルソックスを袋に入れてプレゼントにしました。

今回のポップアップイベントの来場特典で用意したオリジナルソックス
最新のエコショッパー

―初めてポップアップを実施する人たちに20%OFFは勇気が必要ですが、ショッパーやオリジナルグッズを用意するというのは参考になりそうですね。それでは最後に今後の展望をお聞かせください。

そうですね。「LENO」というブランドを知ってもらい、信用してもらい、商品を買っていただくということを10年地道に積み重ねてきました。ここから先もお客様を裏切らないように、どういうふうにブランドを続けていけるかというのがずっと私の中でのテーマです。

定番商品が多いので、初期の頃に買われた方がそろそろ買い換えたいと同じものを求めて来られることが増えてきたんですね。ですから次の10年後にまた買いたいなと思ったときにブランドや商品がないということはないようにしたいと思っています。「LENO」として核となるプロダクトはずっとお客様に提供し続けたいなと思っています。

 ―BasicでStandard、普遍的なものを作り続けていくというのはとても大変ですが、大切なことですね。これからますますご活躍ください。ありがとうございました。

インタビュイー

安藤 歩さま

株式会社GOOD STANDING 代表取締役。
90年代をアメリカ西海岸で過ごし、2001年に帰国。 映像制作、アパレルPRなどを経て、2015年に「LENO(リノ)」を設立。

HP: https://lenoandco.com/
Instagram:https://www.instagram.com/leno_brand/

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