インターネットの発展によってものづくりやブランド立ち上げのハードルが下がり、短期間で大きく飛躍するブランドも増えてきました。この記事ではKnotとMakuakeの事例から、急成長するブランドの秘訣をご紹介します。
これまでブランドを立ち上げる際には、実店舗をオープンさせるための多額の資金と長い準備期間、豊富な人脈が必要でした。
しかし最近では誰でも簡単にECサイトを立ち上げられるようになり、自分のブランドを持ちやすくなりつつあります。
そこで今回は「急成長するネット生まれのブランドたち」というテーマで開催されたイベント「Start-Upのためのbranding×business #002」のパネルディスカッションの様子をレポートします!
前回のレポート:短期間でもスケールできる!これからの”ブランド”のつくり方
▲2014年に生まれたメーカーズウォッチブランド『Knot』はカスタムできる自由度の高さと高品質な製品、スタイリッシュなデザインで年齢を問わず人気ブランドへ急成長した
今回はメーカーズウォッチブランド『Knot』代表の遠藤弘満氏、クラウドファンディングプラットフォーム『MAKUAKE』取締役の木内文昭氏の2人をゲストに迎え、TO NINE CEOの増田氏がモデレーターを務めるかたちで始まりました。
『Knot』は2014年3月に誕生したメイドインジャパンの時計ブランド。
ブランドの本格展開前からクラウドファンディングを利用するなど新しい試みを通じてファンを獲得し、現在では国内3店舗、海外1店舗の4店舗を展開しています。
すでに月間の注文数は5,000件を超え、今後は1号店がある吉祥寺に工房を設立したり、ニューヨークへのギャラリーショップ出店などさらに活躍の場を広げています。
クラウドファンディングプラットフォーム『MAKUAKE』は新しい製品やサービスのプロジェクトを立ち上げ、支援してもらうことができるサービスです。
MAKUAKEを通じて1,000万円以上調達したプロジェクトはすでに27件にものぼり、資金だけではなく認知度を高めるための施策として人気を集めています。
増田氏:今回は「急成長するネット生まれのブランドたち」ということでお二人にお話を伺っていきたいと思いますが、まずはKnotがここまで短期間で支持された理由についてどのようにお考えですか?
遠藤氏:Knotとしてはブランド立ち上げ当初から、「必要とされているものを提供する」という点を意識してきました。
時計は本来時間を確認するためのものですが、今や時間を見るだけならスマートフォンで十分です。
そんな中で時計が提供する価値とはなんなのかと考えた時に、コンタクトレンズが出てきた際「アイウェア」として打ち出して人気を再燃させたメガネのように、「リストウォッチ」としてファッション性が高い商品を提供することだと再定義しました。
時計のベルトをセルフで簡単に付け替えられることでファッション性を高め、さらに高級化している時計市場の中でリーズナブルに提供したことでたくさんの方に受け入れていただけたのではないかと思います。
▲メーカーズウォッチブランド『Knot』代表の遠藤氏
増田氏:初期のファンはどんな方が多かったのでしょうか?
遠藤氏:はじめはMakuakeを見て知っていただいた方が大多数だったので、中高年以上の男性がメインでした。
そのあと徐々に客層が広がり、今では女性の方が多くなっています。
先日も70代のおばあさまが20代の男のお孫さんへのプレゼントを買うために一緒にご来店くださり、ご自分用の時計も一緒に購入してくださいました。
このようにカップルや友人、家族など年齢、性別や趣味嗜好に関わらず一緒に楽しんでいただけるのがカスタムオーダーの魅力だと考えています。
増田氏:Makuakeでプロジェクトを支援されるのはどんな属性の方が多いのでしょうか?
木内氏:今は30〜40代の方が多く、やや男性が多い傾向です。
新しいものが好きというのはもちろんですが、新商品や新店舗といった新しさというよりも「ユニークな体験、これまでになかった面白いものを求めている」という傾向があるように思います。
▲画期的なプロダクトや店舗のプロジェクトを数多く輩出するクラウドファンディング『Makuake』では毎月100件もの新しいプロジェクトが立ち上がっている
増田氏:KnotもMakuakeも雑誌やテレビなど大手メディアにも多数取り上げられていますが、見せ方や伝え方で気をつけていることはありますか?
遠藤氏:ブランド立ち上げ初期に様々なメディアの方にアプローチしてわかったのは、メディアとして大きければ大きいほど単独ブランドの宣伝というのは難しく、「公共性や社会性が求められる」ということです。
もともとKnotのコンセプトとして日本の技術を生かし、現代のライフスタイルと結びつけていきたいという想いもあったので、大手メディアに対してはそういった側面を主にアピールするようにしました。
例えば着物を着る人が減ったことで生産も減っている組紐。
Knotではこうした組紐などの伝統技術を使って時計ベルトを作ることで、形を変えて技術を継承していきたいと考えています。
この組紐の事例は大手メディアに取り上げられ、組紐を生産しているメーカーにもノベルティ製作の注文も入ったそうです。
またメディアの力という意味では、WBSで取り上げられた時は特にサイトがダウンするといったことはなかったのですが、アスキーのWeb記事で取り上げられたことでアクセス集中によってサーバーがダウンしたことがありました。
「認知拡大の面ではテレビや雑誌などのマスメディアの力が依然として強いですが、Web記事はリンクから飛んだり検索するといった行動に直結しやすい」ように感じます。
木内氏:Makuakeもすでに1000以上のメディアに取り上げていただいたのですが、それぞれのメディアによって読者の属性も異なるので、「そのメディアが好んでくれそうな部分を切り取って情報を渡す」ようにしています。
切り口さえよければあとは記者さんがうまく編集して書いてくださるので、いかに記事にしやすい素材を渡すかが肝になると思っています。
また、メディアに取り上げて頂いた後の盛り上げも重要だと思っており、記事の掲載後にMakuakeのメンバーから記事を積極的にSNSでシェアしたりと更に多くの人に読んで頂けるように工夫しています。
なるべく多くのメディアに露出して『「盛り上がっている雰囲気」を演出する』ことも重要ですね。
▲クラウドファンディングプラットフォーム『MAKUAKE』取締役の木内氏
増田氏:クラウドファンディングの今後についてはどのようにお考えですか?
木内氏:クラウドファンディングはある意味先行予約販売に近く、あくまでバリューチェーンのひとつのポイントにしかすぎないと思っているので、製品開発の前後をいかにサポートするかだと考えています。
クラウドファンディングだけ成功しても意味がなく、プロジェクトが成功した後に事業として成功しなければ意味がありません。
特に今の消費者は簡単にモノを買わなくなっているので、20代の女性ならこういうものがウケるだろう、といった発想で作られたものは商品化してもうまくいかないことが多いです。
それよりも「どんなユーザーにどんな体験価値を提供するかを徹底的に考えぬかれたブランド」は、プロジェクトが成功した後も事業として成功しているところが多いように思います。
Knotさんはブランド初期から拝見していますが、すでに4回ほどベルトを装着する穴の位置を変えるなど徹底したユーザー目線を感じるブランドで、そういった点が短期間でここまでの人気に押し上げたポイントだと感じます。
▲モデレーターを務めたTO NINEの増田氏
増田氏:それぞれブランディングで特に心がけていることはありますか?
遠藤氏:現在ちょうど来期に向けて新商品の開発をしているのですが、テーマとして『モノはつくるな、サービスを作れ』と伝えています。
Knotの商品もモノである以上、類似品がでてくるのは必然で、すでにいくつか類似商品もでてきています。
しかし私たちはただ時計を売っているのではなく、リストウェアのあるライフスタイルを提供しているブランドだと考えているので、サンプルの型を1つ作るのにかかる何百万円もの予算を無料電池交換サービスを作ることに使えないか、といった発想をします。
見た目は簡単に真似できますが、そのブランドの内側にある信念や考え方は真似できるものではありません。
またモノは地域や時期によって売れるものと売れないものがありますが、「いいものをリーズナブルに買いたい」「質の高いサービスを体験したい」という気持ちは万国共通です。
だからこそモノにフォーカスするのではなく、どうすればお客様により喜んでいただけるかを常に考えていくことが結果としてブランディングにつながるのではないかと思います。
木内氏:様々なブランドの立ち上げを見てきましたが、やはりまずは競合商品を徹底的に調べることだと思います。
その上で「自分たちが強みにする部分をどこにするか決めて、その強みを作り出していくしかありません」。
ゼロからの立ち上げでは強みなんてないに等しいので、最後はいかに周りの意見に惑わされず自分の意志を貫いて強みを実現していけるかという点に尽きるように感じます。
増田氏:Knotでは海外1店舗目を台湾に出されましたが、なぜ台湾という国を選ばれたのでしょうか?
遠藤氏:私自身、これまでの仕事の中で海外の時計ブランドを日本で展開する際に必ず本国以外での結果を聞いていました。
例えばノルウェーのブランドであれば、ノルウェーで売れるのは当たり前です。
しかしその人気はノルウェーだけの局所的なものなのか、それともグローバルに展開できる素養があるのかを知るためにはノルウェー以外の第三国での結果が重要なんです。
だからこそ今後Knotを海外展開していく際に、日本以外の国での成功が必要不可欠だと感じました。
つまり「海外初出店は必ず成功させなければならないプロジェクトだった」のです。
その中でなぜ台湾を選んだかというと、日本と比較的ライフスタイルが近く、親日国であることからKnotの価値観も受け入れられやすいだろうと考えたからです。
実際に台湾のお店も盛況で、この実績を足がかりにこれからさらにグローバル展開を目指していく予定です。
増田氏:店舗の運営で気をつけていることはありますか?
遠藤氏:私たちの店舗では店頭に立つスタッッフを販売員ではなく「アドバイザー」と呼び、どんな職種でも必ず月に2回は店頭に立つようにしています。
スタッフに話しかけなくても自由に商品を手に取ることができるオープンディスプレイなので、売り込みはせずお客様の気持ちに寄り添った対応をするように心がけています。
またお客様が選ばれた組み合わせを否定しないということも大切にしています。
通常の時計メーカーは多くのお客様が好む最大公約数の商品しか発売できませんが、私たちは自分好みにカスタムできるという点が強みです。
だからこそ既製品では満足できない、独自のセンスをもつお客様にも対応することができます。
組み合わせのアドバイスはしつつも、お客様の好みを決めつけない、否定しない。
ブランドとしてこういった点は特に重視しています。
セッションの中で何度も強調されていた「お客様思考」という考え方。
当たり前のことのように思いがちですが、ついつい自分たちを主語にした施策や商品開発に傾いてしまうことも多いのではないでしょうか。
手っ取り早く認知度を高める・買ってもらうための方法を考えてしまいがちですが、改めてブランディングは「急がば回れ」という考え方が重要なのだと感じました。
またKnotの海外進出、Makuakeのメディア露出のお話から小さな成功事例を積み重ねる重要性も感じました。
人気や世の中の空気を追い風にするためにも確実に成功できる場所を選んで実績をつくり、それをもとに本来の目標に挑戦する。
これも一見すると遠回りに見えて、実は成功への一番近道となる方法なのかもしれません。
ブランディングについて考える際は、まずお客様に対して自分たちのブランドはどんな価値を提供できるのかという点に常に立ち返ることが重要だと言えそうです。
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