世界的な商業の中心であるNYでは、ここ数年でファッションやリテール関連のスタートアップが増加しています。この記事ではMaterial Wrldの矢野氏が語った、NY発ファッションスタートアップの最新情報をご紹介します。

ここ数年で様々な新サービスが立ち上がり、盛り上がりを見せるファッションスタートアップ。
スタートアップといえばシリコンバレーのイメージが根強くありますが、実はファッションやリテール関連のスタートアップは世界の商業の中心地・NYに集積しています。
アメリカではシリコンバレーに対して「シリコンアレー(Alley=裏通り)」とも呼ばれ、女性起業家比率が高いことからも注目を浴びているNY。
今回はそんなNYのスタートアップシーンのリアルを知るために開催された「NYC×Fashion×Startup」イベントの様子をお届けします!
目次
▲トップバッターとして登壇したMaterial Wrld Co-Founderの矢野莉恵氏(写真左)とモデレーターの(株)ソウゾウ代表取締役社長 松本 龍祐氏
「NYC×Fashion×Startup」は5/16に開催されたNYのスタートアップ・シーンやファッション・ビジネスに興味のある人たちのためのMeetupイベント。
ルビーグループが運営するTheFLAGの運営責任者・吉岡芳明氏が発起人となって開催されました。
この日はスペシャルゲストとして今注目のNY発スタートアップ・Material Wrld Co-Founderの矢野莉恵氏が登壇。
Material Wrldは高級ファッションアイテムに特化した下取りサービスで、下取りして欲しい商品を無料のキットに詰めて送ると査定額をメールで提示してくれ、代金はそのまま専用のデビットカードに入金されるという仕組みになっています。
ユーズドアイテムを売却した金額をそのまま買い物に回す仕組みによって既存のブランドとの共生ができている点が高く評価されており、4月にはスタートスタートトゥデイとニッセイ・キャピタルから資金調達したことでも話題になりました。
今回は(株)ソウゾウの松本龍祐氏をモデレーターに迎え、ハイブランドから敬遠されがちな”ユーズド”という分野で各ブランドや小売業者とのリレーションを構築するまでの苦労やNYスタートアップシーンの最新情報についてなどの熱いトークが繰り広げられました。
松本氏:まずはMaterial Wrldのサービス内容についてお伺いしてもいいですか?
矢野氏:Material Wrldはクオリティの高い高級ファッションアイテムに特化した下取りサービスです。
品質の保証されている、一定の期間内に購入されたファッション用品を私たちに売っていただくと、査定額が専用のデビットカードに入金され提携しているデパートやショップで次のお買い物に使っていただくことができる仕組みになっています。
買い取ったユーズドアイテムは私たちのサイト「The Wrld」上で販売しており、こちらからの購入もできるようになっています。
ユーズドという分野はファッション業界、特にハイブランドから敬遠されがちなのですが、ユーズドを売ったお金でまた新しいアイテムを購入するという流れを作ったことでアパレルブランドからも受け入れられています。
お客様にとってもブランドにとっても「”みんなが嬉しい仕組みをつくりたい”」と思ってサービスを立ち上げたので、そういった仕組みができつつあることを嬉しく思っています。
松本氏:はじめから現在のかたちを目指していたわけではなかったんですよね?
矢野氏:もともとは有名ブロガーのクローゼットを公開してそのまま販売できるというサービスを提供していました。
業界の流れとして「商品の魅力だけではなく、売り手の人となりを知って商品を購入する」というソーシャルコマースの考え方が普及したこともあり、ユーザーがクローゼットを公開しつつ販売もできるという仕組みにしていたのですが、モノを売りたい人にとっては販売以外の要素は邪魔なのだと気付き、販売機能のみのサービスへ変更しました。
そうすると今度は出品される商品がファストファッションなどの低価格なアイテムやマス向けの商品ばかりになってしまい、CtoCサービスのためそのあたりのクオリティコントロールが全然きかなくて…。
出品されるアイテムが低価格なので年齢層も10代〜20代の若い女性が中心となっていて、本来のターゲットとは違ってきてしまったなと。
松本氏:それで今の業種にピボットしたと。
矢野氏:その間にも試行錯誤があって、プロダクトをだしたり潰したりもあったのですが、ひとつきっかけになったのが百貨店でもありブランドでもあり「Steven Alan」の店舗で行われたイベントです。
そのイベントはお客さんが着なくなった洋服を店舗に持ってきてその場で販売し、お客様は買取で得たお金をそのまま店舗内で新作を買えるという仕組みだったのですが、ブランドにとってもメリットが大きい流れだったんですよね。
これをもっと面白い仕組みにできないかと考えて、お店の商品券で買い取ることによってお客様がそのお店に買い物にくる流れを作ってみるのはどうかと考えたのです。
そこから20社以上のブランドのトップにアイデアを提案してよい反応を得られたことから本格的にMaterial Wrldを開始しました。
松本氏:ITベンチャーだとすべてオンラインで完結するイメージがありますが、お話を聞いているとMaterial Wrldではかなり地道な営業を積み重ねていらっしゃいますよね。
矢野氏:そうですね、1年間はほとんど営業ばかりしていました。
ファッションテックはそもそもニッチな分野でプレーヤーの数も限られているので、百貨店やブランドなどの既存企業をうまく巻き込んでいかないとインパクトがでないなと。
ベンチャーの感覚からするとオフラインはスケールしづらいイメージがあると思うのですが、ファッションブランドはまずオフラインでお客様の反応を見ることで納得してもらえることが多かったので『「まずは店舗でやってみましょう」という入り方は効果が高かった』と思っています。
松本氏:クーポンからはじまって、次にカードに移行していったんですよね。
矢野氏:そうですね。
下取りした金額を8つくらいの百貨店と組んでギフトカードに変えられるという仕組みにしていたのですが、ギフトカードという「モノ」を送るにはアメリカは広すぎて、遠いところだと到着までに一週間もかかることもあって。
私たちとしては簡単で、すぐに買い物できる仕組みを作りたかったのに逆に手間がかかってしまっているなと感じていました。
それとやはり営業にも限界があって、まずひとつひとつの百貨店に営業をかけて契約をとっていくのはどうしても時間がかかります。
そこでリローダブル・デビットカードという自社のオリジナルデビットカードをつくりました。
これは下取りした金額が瞬時にカードへ入金され、提携店舗ですぐに買い物をすることができる「”ファッションのためのキャッシュ”」となるので、百貨店やブランド側から逆に私たちのサービスを使いたいという問い合わせが増えました。
Material Wrldのユーザーは2ヶ月に1回という頻度でサービスを使ってくれている買い物好きな方が多いので、その方々が店舗に足を運んだりWeb上で買い物をしてくれるという点がブランドにとって魅力的に映るポイントなのだと思います。
結果として現在はほぼインバウンドだけで回せています。
松本氏:今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?
矢野氏:オリジナルデビットカードの機能をより強化していきたいと考えています。
現在は買い取ったときのみお金が入る仕組みなのですが、私たちが推奨するショップで買い物した時にはポイントがつくといったロイヤリティを付与していきたいと考えていて、そこからわたしたちのECで買い物をしてもらう流れを作っていきたいなと。
またデビットカードでの買い物データが蓄積されることで、そのデータをもとにパーソナライズドされた情報をECに反映しておすすめの商品を表示してあげることもできるようになりました。
例えば以前買取したブランドの新作を表示してあげるなど、コンテキストのあるフィードをつくることが可能になります。
そういったショッピング機能の強化も今後やっていきたいことです。
究極的には「”新品とユーズドの垣根をなくしたい”」と考えていて、クオリティの高い商品であれば新品でもユーズドでも使い続けられるので、ブランド側からお客様に「いらなくなったらMaterial Wrldに送ればいいよ!」とおすすめしてもらえるような状態を目指しています。
松本氏:Material Wrldを運営する中でとれてきたデータもあるんですよね?
矢野氏:そうですね、まず私たちのユーザーはお買い物大好きな方が多いので、「2ヶ月に1度平均10着くらい」送ってくださいます。
そして「下取り金額の2.5倍の金額を買い物で使ってくれています。」
つまり2万円がカードに入っていたら、次の買い物で5万円分の商品を購入しているんですね。
それだけ買い物をしてくれる方を送客しているということで、ブランド側からも喜ばれています。
今はファッションブランド全体がECにお客様をとられている状況で、リアル店舗に送客できるサービスは少ないのでそこが私たちの強みのひとつでもあるように思います。
松本氏:今日集まっている方はこれからファッションスタートアップに挑戦したいとかNYに興味があるという方も多いと思うのですが、ここまで成長できたポイントはどこにあると思いますか?
矢野氏:私が起業してからこの4年間でも環境が大きく変わりました。
その間にたくさんのスタートアップができてはつぶれていく様子も見てきました。
百貨店は年々実店舗での売上が落ちているのでECヘ参入し始めていますし、ブランドはコンテンツとインフルエンサーに力をいれていますね。
出版社はブログやInstagramの影響からNYでもどんどん潰れていて、メディアからコマースへ移行するなど各社試行錯誤しています。
このように業界全体が大きく変わっている中で、私たちも常にトライ&エラーを繰り返して試していくしかないというのがひとつあります。
あとは、toCのような一般消費者に直接響いてスケールできるサービスとは異なり、私たちは単価が高いブランドを相手にしているので「”ブランドにとって何が有益かをつきつめる”」ことを大切にしています。
ある程度限られている業界へアプローチするためには、相手が何を課題にしているかを理解し、その解決方法を提案できる側にならなければいけないなのだということがこの4年間の気づきですね。
実際に今生き延びているのはブランディングをきちんと理解していたり、課題解決のためのシステムの提供、有益なデータの提供などブランドのサポート役に徹しているところが成功しているように感じます。
松本氏:そういったポイントでここまできたということですね。
矢野氏:まだまだこれから挑戦は続いていきますが、このポイントは私たちも大切にしていきたいと思っています。
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