2025年12月8日

出店計画には商圏分析が重要!無料ツールを活用したやり方を徹底解説

ポップアップ初心者の方や複数店舗出店を検討している方に向け、無料ツールを使った商圏分析のやり方を解説します。RESASやJ-STATMAPなどのツールを用いて得られるデータに基づいた、説得力のある出店計画を作成する具体的な手順がわかります。

新たに店舗を出店する際に重要なのが「立地選び」です。どんなに魅力的な商品やサービスを用意しても、お客様が来なければ売上は生まれません。

だからこそ、出店計画では「どこにお店を出すか」を慎重に見極めることが重要です。しかし実際には、「駅前だから人通りが多い」「競合が少なそう」といった勘や経験に頼った判断で出店エリアを決めてしまうケースが多く見られます。一見うまくいきそうに思えても、エリアのニーズと提供価値がマッチしていなければ、集客は思うように伸びません。そこで役立つのが商圏分析です。

この記事では、初めてポップアップを出店する方や複数出店を検討されている方に向け、無料ツールを活用した商圏分析のやり方をステップごとに解説します。感覚に頼らず、データに基づいた出店計画を立てたい方は、ぜひ参考にしてください。

勘に頼る出店計画の落とし穴

出店場所を決めるとき、「人通りが多い場所」「駅から近い場所」を第一条件に考えることが多いのではないでしょうか。もちろん、それも重要なポイントです。しかし、それだけで判断してしまうと、「お客様の数は多いはずなのに売れない」という事態に陥ることがあります。なぜ、そのようなことが起こるのか、どのように出店場所を見極めるべきかを解説します。

◆人通りの多さだけで決めるのは危険!

駅から近い商店街やオフィス街の大通りは、昼間の人通りが多く、平日昼には行列ができる飲食店も少なくありません。ですが、そこだけを見て、同じ場所に夜間営業が中心のカフェやバーを出してもうまくいかない場合があります。その理由はシンプルで、そのエリアにいる人がお店の「ペルソナと違う」からです。
商圏選定で大切なのは、「人が多い」ことではなく、「自分のお店の顧客となりえる人が多い」こと。つまり、自社の商品やサービスに最も関心を持ってくれる人(ペルソナ)が、そのエリアにどの程度いるのかを見極める必要があります。人通りの多さはあくまで参考値であり、購買行動の主役は「誰が」「何を求めて」その場所にいるのかという点にあります。

◆商圏分析データに基づいた出店計画

ペルソナがそのエリアにどれだけいるか、を判断するのが商圏分析です。商圏分析では、以下のようなデータをもとに出店エリアの妥当性を判断します。

  • そのエリアに、ペルソナと同じ年齢層・性別・世帯構成の人が住んでいるか
  • そのエリアに、ペルソナが訪れている(通勤・通学・買い物などの行動圏に含まれている)か
  • ペルソナが、扱う商材に対してどれだけ支出している傾向があるか

こうした情報をデータで確認することで、出店リスクを大きく下げることができます。

【準備編】分析を始める前に必ず押さえたい3つのこと

商圏分析は「いきなりツールを触る」のではなく、事前準備が何より大切です。ここを曖昧にしたまま分析を始めると、せっかくのデータをうまく活かせず、ただ数字を追うだけの作業になってしまいます。
まずは、分析を始める前に押さえたい3つのポイントを整理しましょう。

Point1:ターゲット顧客の「ペルソナ」を解像度高く設定する

商圏分析の出発点は、「誰に来てほしいか(ペルソナ)」を具体的に描くことです。ペルソナとは、理想的な顧客像を、年齢・職業・趣味・ライフスタイルなど細かい属性まで設定した「架空の人物像」のことを指します。ペルソナと混同されがちなものに「ターゲット」があります。ターゲットは、理想の顧客セグメントで、年齢や地域、業種などによって分類された集団(顧客群)のことを指します。

たとえば、カフェを出店する場合、「会社員の20代女性」はターゲットであり、「仕事帰りにほっと一息つきたい20代後半の会社員。SNSで雰囲気のあるカフェをチェックするのが日課」といった具体的な人物像を描くのがペルソナです。

ペルソナを設定することで、

  • どんなエリアにその人が多いのか
  • どんな時間帯に行動しているのか
  • どんな価値にお金を使うのか

といった視点でデータを読み解けるようになり、商圏分析の「軸」ができあがります。

Point2:お店の「コンセプト」と「強み」を言語化する

ペルソナが決まったら、次は「その人に何を、どのように提供するのか」というお店のコンセプトを明確にします。

たとえば、同じパン屋さんでも、

  • 「素材にこだわった健康志向のパン屋」
  • 「焼きたてを朝7時から楽しめる駅近ベーカリー」
  • 「SNS映えするスイーツ系ブレッドが人気の店」

といったように、お店のコンセプトによって方向性がまったく異なります。このコンセプトが定まっていないと、商圏分析でどんなデータを重視すべきかがブレてしまいます。お店の強みや差別化要素を言語化しておくことで、「健康志向」を打ち出すなら健康への支出が多い地域、「朝利用」を狙うなら通勤導線を重視するなど、分析の着眼点が明確になります。

Point3:出店候補エリアを3〜5つリストアップする

分析をする前の準備として、最後に分析するエリアを複数ピックアップしましょう。最初から「この駅前に出したい」と一択にするより、3〜5つ比較してデータを見比べるのがおすすめです。候補は「自分が興味のある場所」「商材と相性がよさそうなエリア」から選びます。複数を比較することで、「思っていたよりペルソナ層が少ない」「競合が集中している」などの気づきが得られます。数字に基づく判断ができるようになると、勘や雰囲気に左右されない出店計画につながります。

【実践・商圏分析編】2大無料ツールを使いこなして商圏分析

準備ができたら、実際に商圏分析にうつっていきます。無料で使える商圏分析ツールを紹介したうえで、具体的な分析方法を説明します。

◆RESASとJ-STATMAPの特徴と使い分け

商圏分析のツールとして代表的なのが、「RESAS(地域経済分析システム)」と「J-STATMAP(統計LOD地理情報システム)」の2つです。どちらも行政が提供しているツールのため信頼性が高く、店舗開発担当者や自治体職員なども実務で利用しています。

RESASは、経済産業省と内閣官房が提供する地域データ分析システムです。人口動態や産業構造、人の流れなど、地域経済に関わる統計データが、地図やグラフで分かりやすく可視化されています。人口構成や支出分析、消費の傾向などが分かるため、「エリア全体の傾向をつかむ」「地域性を理解する」のに便利です。

一方、J-STATMAPは総務省統計局が提供するツールで、国勢調査や家計調査などの国が公表している統計データを、地図上に表示させて分析できます。住所単位でデータを細かく見られるため、「正確な数値をもとに候補地を絞り込みたい」場合に適しています。

◆Step1:「人口データ」でターゲットの量を知る

それでは、商圏分析を実践していきましょう。最初のステップは、「そのエリアにターゲットがどれくらいいるか」を把握することです。ここで活用するのがRESASです。

RESASでは、「地域経済循環マップ」や「人口マップ」機能を使って、昼間人口と夜間人口のバランスを確認できます。昼間人口が多ければ通勤・通学者の利用が見込め、夜間人口が多ければ住宅地としての需要が見込めます。また、年齢層や世帯構成のデータも重ねて表示できるため、設定したペルソナと照らし合わせて「自分の顧客層が多いエリア」を見つけることができます。

たとえば、ペルソナが「仕事帰りに立ち寄る30代女性」なら、夜間人口の多い住宅エリアよりも、昼間人口の多いオフィス街や商業エリアが有力候補です。逆に「ファミリー層に向けたベーカリー」なら、子育て世帯が多い住宅地を重視する、といった具合です。

この段階で大切なのは、「人の数」だけでなく「行動のリズム」を読み取ること。昼と夜、平日と休日で、まったく異なる顔を持つ街もあるため、数字の裏にある生活を想像することで、商圏分析の精度がぐっと上がります。

◆Step2:「競合分析」で出店エリアをさらに絞り込む

次のステップでは、候補エリアの中で「どこに競合が多いのか」を確認します。ここではJ-STATMAPとGoogleマップを活用しましょう。J-STATMAPでは、商業統計や業種別事業所数などのデータをもとに、エリアごとの事業者分布を把握できます。その上で、Googleマップを開き、実際の店舗数や口コミ評価、立地条件を確認していきます。

ここで注意したいのは、「競合が多い=悪い」とは限らないという視点をもつことです。むしろ「一定の需要があるエリア」として参考になるケースも多くあります。重要なのは、「自分のコンセプトで戦える余地があるか」を見極めることです。たとえば、どの店も同じようなメニューを出しているなら、素材や時間帯、体験価値などで差別化できる余地があるかもしれません。これまでに得た情報をもとに最終的な出店エリアを絞っていきましょう。

◆Step3:ショップカウンターで候補エリアにあるスペースを探してみる

出店エリアを決めたら、出店できるスペースがあるかどうかを探します。スペースを検索する際に便利なのが、『ショップカウンター』です。『ショップカウンター』は、ポップアップストアやイベント出店など、短期から利用できる商業スペースを探せるオンラインプラットフォームで、エリア別やマップ検索で条件を絞り込み、どんなスペースがあるのかを確認できます。

まとめ

立地選びの重要性から商圏分析による出店エリアの選定方法まで、詳しく紹介しました。商圏分析を行うことで、「ペルソナが多く住む・働くエリアがわかる」「競合の分布や強みが見えてくる」「出店候補地を数字で比較できる」ため、根拠をもって出店エリアを絞れます。事前準備を行ったうえで、無料ツール「RESAS」と「J-STATMAP」を活用し、商圏分析にトライしてみましょう。

また、出店エリアが固まったら、実際のスペースを調べてイメージを具体化していくのも大切です。ぜひ『ショップカウンター』を活用してお気に入りのスペースを探してみてください。

関連記事

人気記事

新着記事

カテゴリ一覧から記事を探す