毎月の品揃えを”色”の切り口で変化させるという新しいファッションの見せ方で話題のIROZA。 2016年2月には東急百貨店東横店西館1F SHIBUYA スクランブルⅠに旗艦店をオープンし、これまで以上に幅広い層へアプローチを広げています。
毎月の品揃えを”色”の切り口で変化させるという新しいファッションの見せ方で話題のIROZA。
2016年2月には東急百貨店東横店西館1F SHIBUYA スクランブルⅠに旗艦店をオープンし、これまで以上に幅広い層へアプローチを広げています。
“色”でキュレーションした売場という点が注目されがちなIROZAですが、その独自性を支える裏側のシステムも彼らの強さの秘訣。
そこで今回はIROZAならではのVMDの工夫や独自の在庫管理システムをもとにした今後の展望について様々なお話を伺いました。
「色から、モノを好きになる。」をコンセプトに、毎月テーマカラーを変えて様々なアイテムをリアル店舗・ECの両方で展開するIROZA。
2014年3月にECとキャットストリートのリアル店舗を同時にオープンしてから、”色”を切り口にした商品展開と独特の世界観で人気を集めています。
もともとリアル店舗を持っているブランドがECをオープンしたり、先にECをオープンしてからリアル店舗に進出するなどどちらか一方を基点にオムニチャネルを構築するブランドが多い中で、「共通の世界観で同時にECとリアル店舗をオープン」したところにIROZAのこだわりを見てとることができます。
VMDの大きな変更は年に2回程度シーズンが変わる時期にしか行われないのが一般的ですが、IROZAは毎月VMDが大きく変わるためにお客様を飽きることなく楽しませることができる点も他のブランドや店舗と同質化しない特徴といえるでしょう。
これまでになかった”色を切り口にする”といった点が取り上げられやすいIROZAですが、独自の在庫管理システムもその強さのポイントです。
通常ECとリアル店舗で同じ商品を扱っている場合には物流システムの違いのためにEC分とリアル店舗分で在庫を分けて所持しておく必要があり、余剰在庫を抱えてしまったり販売の機会損失を招いてしまうことがオムニチャネルの壁と言われてきました。
しかしIROZAではオープン当時から「ECとリアル店舗で一括した在庫管理システム」を構築・運用することでこの問題を解決。
そんなIROZAならではの店舗展開の工夫や次に目指すものについて代表の大野敬太氏と事業推進マネージャーの飽浦尚氏にお話を伺いました。
▲2016年2月にオープンしたIROZA フラッグシップストア。3月のテーマカラーは桜を連想させるピンク&ホワイト。
百貨店という館の中なので高さ制限などの決まりはあるものの、それを補って余りあるメリットを感じています。
東急百貨店東横店の西館1Fという立地は人通りも多く、色でキュレーションしているIROZAの売場は目に留まりやすいためかたくさんの方に商品をご覧いただけています。
これまでリピートしてくださっていたお客様からも、キャットストリートにあった路面店よりも立地がよくなったため来店しやすくなったというお声もいただきました。
トラフィック量が多く足が速い売り場なので、店頭で着脱しやすい羽織りものや雑貨、アクセサリーといった商品を中心に品揃えしています。
リアル店舗は展開できる商品数に限界があるので、そこで買ってもらうというよりも「まず興味をもっていただく」ということが重要だと感じています。
もちろん東急東横店全館で統一するカラーに合わせるときもありますが、差し色のような感じであえて外した色をテーマカラーにすることも考えています。
カラーだけではなく、プロジェクションマッピングやビーコンなどの新しい試みも今後施設側と相談しながら取り入れていきたいと思っています。
百貨店というある程度制約のある環境でどこまで自分たちらしい新しさを出していけるかという挑戦をしていくつもりです。
▲3月のカラー・ピンク&ホワイトは春風に舞う花びらをイメージしたもの。春らしいウキウキを感じさせるVMDで商品を提案する。
リピーターのお客様の声としては「今まで見なかった色を見るようになった」「毎月ECをチェックするようになった」というものが多いです。
これまでIROZAを知らなかった方がリアル店舗に立ち寄っていただくきっかけは好きな色だったということが多いですが、そこからIROZAのコンセプトを理解していただく中で来月はどんな色がテーマになるのか?と楽しみにしてくださる方も多いようです。
色の並びやグラデーションも大事にしていますが、商品の色合わせだけではなく什器やライティングも含めた全体の世界観を統一するように気をつけています。
あとは「売れるカラーと展開して映えるカラーは異なる」ということもこの2年間でわかってきました。
例えば黒とネイビーは着まわしやすいのもあって人気のカラーなのですが、店舗全体を黒やネイビーで統一してしまうと全体的に暗い雰囲気になってしまい反応が芳しくなかったり…。
以前白・ピンク・緑の3色展開をした際、年配の方ほどピンクが人気だったことも意外でした。
そういったこれまでに蓄積してきたデータと出店場所の購買傾向を掛け合わせてよりその場所にマッチしたカラーを提案していきたいと考えています。
また今後はもっと「色のもつストーリーや色の解釈」を伝えられる売場作りをしていきたいと考えています。
“色”は言語の壁を越えて興味を引きやすい切り口なので外国人のお客様にもよく立ち寄っていただくのですが、ワンカラーでまとめられているのが珍しいというだけではなくそのカラーの背景も伝えていけたらと思っています。
そのためにも赤なら赤、白なら白といった単色のテーマだけではなく、色の濃淡や組み合わせで季節感だったりそのエリアらしさが伝わる売場づくりを目指しています。
▲今回お話をお伺いした株式会社IROYA 代表の大野敬太氏(写真右)と飽浦尚氏。
しばらく常設店舗は旗艦店となる東急百貨店東横店のみで、あとは旗艦店だけではアプローチできない方々に向けてポップアップストアというかたちで出店していきたいと考えています。
ブランドを運営する上で出店戦略というのは手をつけやすい部分であると思っているのですが、「常設店舗を増やすとマネジメントやクオリティコントロールが難しくなってしまう」という側面もあります。
またリアル店舗は展開できる商品数に限界もありますし、店舗面積や営業日数などを掛け合わせるとだいたいの天井が見えてしまいます。
とはいえ地方やEC利用率の低いF3層(50歳以上の女性)にはリアル店舗のアプローチが有効なので、ポップアップストアというかたちで「IROZAを知っていただく機会を増やしていく」予定です。
今後はよりECの売上が伸びていくと考えていることもあり、リアル店舗は認知度をあげてIROZAのコンセプトを知っていただく場所として位置付けています。
現在IROZAで実際に運用している「ECとリアル店舗で一括した在庫管理システム」を他のアパレルショップへ導入する支援事業にも力をいれていきたいと思っています。
ECとリアル店舗でそれぞれ在庫を保持しているところが多いですが、ECとリアル店舗では売れるものにバラつきがあるなど機会損失につながりやすい状況になってしまっています。
特にヴィンテージやオリジナル商品といった1点ものを多く扱っているショップでは「ECとリアル店舗で横断的に在庫管理ができることで消化率が大幅に改善できる」と考えています。
アパレル分野はクリエイティビティやセンスが重視されがちですが、「それを支えるテクノロジーがあることでよりよいものを生み出す」ことができます。
そのテクノロジー部分を私たちのノウハウで補完できる仕組みを作っていきたいと思っており、エンジニアを中心に人材採用も積極的に行っています。
私たちIROZAだけではなく、他の様々な店舗・ブランドでも”買う”という行為がより便利に楽しくなるような仕組みを広げていきたいと考えています。
ここ数年で”ファッションテック”という言葉も定着し徐々にITなどのテクノロジーが反映されるようになってきましたが、実体としてはまだアナログな業界というイメージが拭えないアパレル・ファッション業界。
特にもともとリアル店舗の展開を中心にしてきた企業はまだ比重がリアルに寄っていることが多く、「ECの運営が効率的に行われていない店舗も多い」のが現状です。
しかしインタビュー中にもあったように、リアル店舗の売上は商品数や営業時間といった制約が多く比較的早い段階で限界がきてしまいます。
業界全体としてもECの購入比率が年々高まっていることもあり、今後「ECでの売上をいかにつくるかがブランドの成功を左右する」と言っても過言ではありません。
その際ネックになりやすい「EC用に在庫を確保しなければならない」という問題を解決するIROZAの在庫管理システムには期待が高まります。
また今後の出店戦略を考える上で、「常設店舗は積極的に出店しない」ブランドも増えそうです。
実際昨年も大手アパレルブランドの大量閉店や撤退が相次ぎ、”販売だけ”を目的としていては採算性がとれない店舗が増えてきている現状が垣間見えます。
世界観を伝える「旗艦店や少数の直営店はクオリティにこだわってマネジメント」し、Webだけではアプローチしづらい層の認知度を高めるために「ポップアップストアで身軽に出店する」というのが今後の新しい出店トレンドになっていきそうです。
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