公開日:2016年3月22日
更新日:2019年7月16日

イベント自体を大きな媒体と捉える / 老舗出版社・誠文堂新光社の新しい挑戦とは

年々若者の読書時間は減少の一途を辿り、問題視されている書籍離れ。 先日大学生協が発表して話題になった学生生活実態調査の概要報告では、大学生の45%以上が読書時間ゼロという驚くべき結果も。

年々若者の読書時間は減少の一途を辿り、問題視されている書籍離れ。
先日大学生協が発表して話題になった学生生活実態調査の概要報告では、大学生の45%以上が読書時間ゼロという驚くべき結果も。

そんな中で出版社や書店も業態の変化や読者との交流など新しい取り組みを模索しはじめています。
そこで今回は老舗出版社・誠文堂新光社がはじめて主催したマーケットイベント”「ものことひと市」”についてお話を伺いました。

今年初めて開催された”ものことひと市”

“ものことひと市 BOOKS CRAFTS FLOWERS”は、花・本・手芸・クラフト・食といった切り口から暮らしを、人生を豊かにする、つくる楽しさが体験できるワークショップとマーケットのお祭りです。

イベントでは創業100年を超える老舗出版社・誠文堂新光社が発刊した書籍の著者を中心に様々なカテゴリーから20以上の特別ワークショップを開催。
同時に40店ちかい物販・展示・常設ワークショップブースを募り、すぐ学べる、すぐ買える楽しいワークショップ祭り&マーケット空間を創りだしました。

2月21日には、お花の月刊誌「フローリスト」のコンペイベントも同時開催し、花屋さんのポップアップストアなど暮らしに花のある豊かな時間を過ごせるイベントとして多くの方が訪れました。

理工学、人文科学、農園芸、デザイン、 児童、教育、趣味、娯楽、ペット、各種実用の分野まで、幅広い専門的な出版活動を行う誠文堂新光社ならではのマーケットイベント成功のポイントについて誠文堂新光社の大関さんにお話を伺いました。

読者にも出展者にも楽しんでもらえる場として”ものことひと市”を初開催


▲イベントの様子。最終日の夕方も多くのお客様で賑わい、出展者とコミュニケーションをとっていました。
今回お話を伺ったのは誠文堂新光社が出版する月刊フローリスト編集長の大関さん。
メディアとして、読者との新しい関わり方についてお話をお伺いしました。

  • これまでも読者限定のイベントやセミナーなどを開催されてきたのでしょうか?

誠文堂新光社としては書店などでの刊行記念イベントはもちろんのこと、子供の科学のプログラミングキャンプや夏休みイベント、天文ガイドの星祭り、花の雑誌「フローリスト」のフローリスト・レビューなどこれまでも様々なイベントを行ってきました。

特にフローリスト・レビューという誌面上でフローリストが花の表現力を競うコンペティションのファイナルをライブパフォーマンスで行うイベントは2011年六本木ミッドタウン、2012-13年表参道ヒルズでの開催実績があるほどの人気で、今回も「ものことひと市内で同時開催」しました。

  • そういったこれまでのイベントとはかたちを変えて”マーケットイベント”を開催されたのはなぜですか?

「読者や来場者がなにをいちばん求めているか」を考え、楽しんでもらうことや、楽しさに気づいてもらうことが実現できる出展者にそれぞれアピールしてもらいたいという思いから今回のようなマーケットイベントに挑戦しました。

通常のイベントではそこで売り上げが立つことは少ないですが、マーケットイベントであれば来場者も選んで買える楽しさを感じ、出展者が作ったクリエイションに対する対価もきちんと払われる仕組みにできるのではないかと考えたからです。

  • 出版社として、こういったイベントを通して読者との接点をリアルでもつことの意味をどのように感じられますか?

最近は個人でも情報を発信できる場が増えましたが、こういったリアルのイベントは読者から発信される情報や反応を「お互い向き合って交換できる素晴らしい場」だと感じています。

また誠文堂新光社では「イベント開催自体を大きな媒体」としてとらえています。
今後もコンテンツサプライヤーとして、出版事業だけに留まらないもっと大きな枠組みで読者の求める情報をお届けできる存在になっていきたいと思います。

来場者は想定の2倍!”コミュニケーション”を中心に据えた会場設計


▲ワークショップの様子。いたるところでワークショップが実施されていました。

  • 今回はじめての開催でしたが、お客様からの反応はいかがでしたか?

とにかく楽しかったという反応がいちばんでした。
当日でも入れるワークショップや子供でも楽しめる飛び入りワークショップなどがあり、「子供も大人も楽しめた」というお声をいただきました。

結果として当初1000人と想定していた来場者数ですが、ほぼ倍となる「2,000人を超える方々にお越しいただく」ことができました。

準備をする上でも出展者とできるだけコミュニケーションを取っていただけるような空間を設計する事に力をいれ、「交流が生まれるように工夫」した点が多々あります。

そのうちのひとつがレシピカード。
各出展者ブースに小さな名刺サイズのショップカードを置き、それらを全部集めるだけでもひとつの豆本になるような仕組みづくりをしました。

これによってカードを集めながら出展者の方とお話をしたり、帰ってからも気になったブランドのHPを見てみようという仕掛けをつくることができたように思います。

  • 出展者はどのように集め、どういった基準で選定したのでしょうか?

まずは誠文堂新光社から出版していただいている著者や編集者のつながりでお声掛けしました。
それ以外にも公式ウェブサイトで特設フォームを作って募集したり、フライヤーなども展開しました。

選定基準としてはご来場いただいた方皆様に満足いただけるように、「できるだけジャンルが偏らずバランスよく並ぶ」ことを重視しました。

  • 今後どのようなイベントにしていきたいと思われますか?

今回予想以上に多くの方から「楽しかった」というお声をいただき、出展者の方々の満足度も高かったので今後も引き続き開催していきたいと考えています。
そのためにも来場者のみならず、出展者、講師、運営すべての人がもっと楽しく時間を過ごせるイベントにしていきたいと思っています。

特にものことひと市ではトークショーやワークショップのジャンルが多岐に渡るので、「それぞれのファン層にもより事前に届くような告知方法」を考えていくのが今後の課題です。

メディアが作る読者との新しいコミュニケーションのあり方


▲会場内には誠文堂新光社が出版した書籍を販売するコーナーも。
出版社主催の読者イベントといえば、ホテルや大きなイベントスペースでスポンサーをつけてブースを出し、著者やモデルなどのトークイベントを開催するというのが一般的なイメージではないでしょうか。

そういったイベントも雑誌のブランディングのひとつの手法ですが、今回ものことひと市を訪れてみて「いかにイベントにユーザーを引きつけるか」、という点で”体験してもらうこと”は今後避けて通れないように思いました。

特に雑誌や出版社そのもものアイデンティティやブランドメッセージが伝わるイベントづくりによって、読者との関係をより強固なものにすることができそうです。
インタビューの中でも誠文堂新光社ではイベント開催自体を大きな媒体としてとらえているというお話がありましたが、それが
紙の上なのか、リアルの場なのか、Webなのかの違いはあっても読者にとって有益な情報や体験を提供するという根底の価値は今後も変わることがないように感じます。

特に創業100年を超える誠文堂新光社がこういった新しいかたちのイベントにチャレンジしているというのも、今後の出版業界の新しい可能性を感じるポイントではないでしょうか。