開業は自分のお店を自分の思うように開いて運営できる、とても魅力的な選択肢です。一方で、「開業したいけどどのような準備が必要なのかわからない」というお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は飲食店や雑貨店など、自分の店舗を開いて開業する際に必要な準備を解説していきます。
一口に「開業のための準備」と言っても、計画の立案から役所への申請まで、その範囲は多岐にわたります。開業を考えはじめたタイミングから実際に開業するまでの手順を、10個のSTEPに分けて、ひとつずつ確認していきましょう。
当たり前のことではありますが、開業の準備は、何のお店を開くのかを考えるところからスタートします。現在の職場から独立する、長年の夢だった飲食店を開くなど、開業のきっかけは人によってさまざまですが、どのような場合でも「収益化の目処が立つか=きちんと利益を出せるようなお店を作れるのか」という視点は欠かせません。そのためは、最低でも以下の2点を押さえておくことが重要です。
・誰に対して何を提供するのか?
20代の女性から支持されそうな雑貨店、30代以上の方がターゲットの高級イタリアンレストラン……など、お店の種類やメインとなる客層はできるかぎり明確にしておきたいところです。
・同業のお店と差別化ができるか?
お店を開くとなると、同業他社との競争は避けて通れません。例えばカフェの開業を考えているのであれば、「カフェチェーン店と比較した時に、顧客から見てより魅力的な点はどこか」を意識しなければならないでしょう。
商品やサービスの質・価格・立地など、なにか“ウリ”を考えておけば、お店の開業方針が立てやすくなります。
お店を開く際には、ある程度のまとまったお金が必要です。物件の賃料や什器の購入費、当面の運転資金など、開業にかかる費用は枚挙にいとまがありません。
必要な金額は業種によって異なるため、最初に必ず、自分が開きたいと考えているお店では開業資金がどのくらい必要なのかを確認しておきましょう。その際には「物件にいくら、この什器にいくら」といったように、内訳まで詳細にしておくのが理想です。そうすれば、例えば後になって「この部分にもっとお金をかけたい」と思った場合にも、物件・什器など、項目ごとにいくら割り振るのかを調整することができます。
開業資金として必要な金額を把握できたら、次はその調達方法も考えなければなりません。貯金などの自己資金で工面できるのであればシンプルですが、実際には、どこかからお金を借りることになるケースも多くあるでしょう。その場合には、どこに借入れを申し込むのか、いくらまでなら借りられそうかといった見通しを、あらかじめ立てておきたいところです。
業種別の開業資金や調達方法の種類など、開業資金については以下でさらに詳しく解説していますので、もしよろしければあわせてご参照ください。
開業資金について知ろう。いくら必要?どうやって集めたらいい?
後述のSTEP4とあわせて見落としがちなのが、開業にあたって家族から理解を得られているか、同意してもらえているのかという点です。
言うまでもありませんが、開業にはリスクが付き物です。会社勤めのように毎月の収入が保証されている訳ではなく、想定外の赤字が続くなど、時には考えもしていなかった事態に直面することもあるでしょう。そんな時にあなたを支えてくれるのは、他でもない家族のはずです。そのため開業する際には、リスクや具体的な計画を伝えたうえで、家族からの同意を得ることが必要不可欠なのです。
世帯を持っている方はもちろん、単身の方でも、両親や兄弟への説明は欠かさずしておきたいところです。
家族からの同意に関わる部分、各種保険への加入も忘れずに済ませておきましょう。今までの勤務先で用意されていた健康保険に加入していた場合には、国民健康保険への切り替えが必要です。開業に取り掛かりはじめてからは慌ただしくなりがちですので、余裕を持って役所への手続きを終えておくことをおすすめします。国民健康の保険料は毎月ごとにコンビニやATMで支払うことになりますが、一括での支払いや口座振替も可能です。都合にあった方法を選んで、支払いの漏れがないようにしましょう。
また保険とあわせて、年金のことも忘れずに確認しておきましょう。会社を辞めることで厚生年金や企業年金から脱退する場合には、毎月の納付額が少なくなるかわりに、その分だけ将来の受給額も減ってしまいます。開業にあたっては、必要に応じて老後の生活資金のことも考えなければならないのです。
ここからはいよいよ、開業に向けての具体的な準備がはじまります。まずは開業届の提出です。
そもそも開業届とは、個人事業主として開業する場合に、税務署に提出しなければならないものです。「提出しなければならない」と言っても、実際には提出しなくても罰則などはありません。ですが以下のようなメリットもあるため、基本的には提出するべきだと考えてください。
・開業届を提出するメリット① 青色申告が可能になり、税制上の優遇が受けられる
個人事業主として得た収入は、毎年2,3月に税務署へと申告する必要があります。開業届を提出しておけば、この際に「青色申告」という税制上有利な方法を選ぶことが可能です。ここでは詳細な説明を省きますが、「きちんと開業届を提出しておけば、節税できる」程度に考えてください。
*青色申告をするためには開業届のほか、「青色申告承認申請書」の提出も必要
・開業届を提出するメリット② 法人口座を開設できる
開業届を提出すれば銀行で法人口座が開設可能になります。資金の流れを把握しやすくなるほか、取引先からの信頼度向上が期待できるでしょう。
さて、開業届を提出するメリットを確認できたところで、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。
開業届の正式名称は「個人事業の開業届出・廃業届出」です。税務署の窓口で直接受け取れるほか、国税庁のホームページからデータをダウンロードして印刷することも可能です。
書類を入手したら、記入例に沿って、氏名や納税地などの必要事項を記入していきます。不明な点があれば、管轄の税務署に確認しておきましょう。記入が済んだら、書類を税務署に提出するだけで、手続きが完了します。
このように、開業届の提出自体は意外とシンプルです。しかし開業の形態によっては、従業員に給与を支払う際の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」や、従業員から徴収した所得税を支払う際の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」など、その他の書類を提出しなければいけないケースもあります。後になって不備が発覚しないためにも、自身の開業でどの書類が必要になるのか、確認を欠かさないようにしておきたいところです。
業種によって、税務署の他に、国や地方自治体からの許認可が必要になることも考えられます。許認可には許可・認可・届出と3段階の基準があり、それぞれの段階からさらに細かく、各手続きに分かれています。詳しく確認していきましょう。
・許可
“許可”は一般的に法律で禁止されている行為を、事業として行うと認めることを指します。例えば飲食店(食品衛生法など)や旅館・ホテル(旅館業法)を開業する際には、この許可を得る必要があります。
「一般的に法律で禁止されている行為」と前述したように、許可によって可能に事業はなるのは、安全上の問題にも関わるものです。そのため仮に書類や申請の内容に不備がなくても、なんらかの理由で開業が不適当だと判断されれば、許可が降りない場合もあります。
以下の記事では許可の中の「食品営業許可」について詳しくまとめていますので、飲食店の開業を考えている方はぜひご参照ください。
「飲食系ポップストアを経営したい方必見!食品営業許可の取得方法」
・認可
“認可”は、わかりやすく言えば「国や地方自治体からの公認」です。開業からは少し離れてしまいますが、一番身近な例としては公共料金の値上げなどが認可に該当します。
・届出
“届出”は文字通り、国や地方自治体へ「こういった事業をはじめました」と知らせる手続きです。クリーニングや美容室、エステサロン(医療行為を行う場合を除く)を開業する際には、届出が必要になります。許可・認可とは異なり、原則としては手続きをした時点で開業を進めることが可能です。
開業届の提出・許認可の取得といった事務手続きが終わったら、今度はお店を開く立地を決めていきましょう。
一部の高級店を除いたほぼすべてのお店では、集客数が収入の額に直結します。そのため立地を考える際には、人通りの多さや、通る人の属性(ビジネスマンが多いのか、若者が多いのか)、周りにある競合店の存在などを、総合的に考えなければなりません。
立地の候補がいくつかある場合には、後述の物件決めとあわせて、「店舗を中心にした時、半径○○m以内に競合店がいくつあるのか」「人通りが多いというメリットと競合店があるというデメリット、どちらの方が大きいのか」といった視点で考えるとよいでしょう。
立地の次はお店を開く物件選びです。まず注意が必要なのが、物件選びは多くの時間を必要とする作業である点。立地が決まっていても、理想の物件が見つからず、想像以上に開業まで時間がかかってしまうケースも少なくありません。「いつまでに開業したい」という希望がある際には、余裕を持ってスケジュールを組んでおきましょう。
物件には数多くのタイプがありますが、今回は飲食店と、雑貨店などの物販を行う業種に合った2つと、そのメリット・デメリットをご紹介します。
・スケルトン物件
スケルトン物件は、コンクリートがむき出しになった、まっさらな状態の物件です。窓ガラスに「テナント募集」という貼り紙がしてある、がらんとした物件を見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
スケルトン物件のメリットは、床や天井を含めて、内装を自由に作り上げられること。お店のイメージにこだわりたい方にとっては、うってつけであると言えるでしょう。一方で、そのための工事を手配する手間や費用がかかるのがデメリットです。
・居抜き物件
居抜き物件は、以前に別の業者が開いていたお店の、内装や什器をそのまま残した物件です。メリットとデメリットは、スケルトン物件の正反対。初期費用が抑えられる一方で、内装をある程度妥協しなければならないことがほとんどです。またその業者が経営不振で撤退していた場合、つまり「お店が潰れた」場合には、お客さんからの印象があまり良くない点も注意しておきましょう。
このように、物件のタイプごとにそれぞれメリット・デメリットは異なります。そのため立地のことも考えると、条件にあった理想の物件を見つけるのはなかなか難しいものです。それでも物件選びは開業の根幹に関わるため、複数の不動産サイトを利用して比較検討するなど工夫して、妥協せずに進めたいところです。
物件が決まったら、残るSTEPはあと2つだけです。次は事業(お店)の名前を表す「屋号」を決めましょう。あまり聞き覚えのない言葉かもしれませんが、個人事業主の場合には「○○食堂」「○○ショップ」などの店名が屋号にあたります。
確定申告の書類などにも記載欄がありますが、屋号は必ずしも決めなければならないものではありません。しかし取引先とのやり取りなどの際、あった方が便利なことは間違いないでしょう。「開業した」という実感を得るためにも、開業にともなって決めておくことをおすすめします。
ついに最後のSTEP、事業用口座の開設です。開業届についてのご説明で少し触れましたが、事業を続けるにあたって、お金の流れをきちんと把握しておくのは重要なポイントです。普段使っている口座では、事業に関係のない取引履歴も残ってしまうため、専用の口座を作っておくとよいでしょう。
法人口座も含めた事業用口座は、普通口座よりも少し開設の手続きが複雑です。しかし口座の名義を先ほど決めた屋号に設定できるなど、手間をかける価値は十分にあります。
開業を成功させるためには、なんといっても入念な準備が必要不可欠。「準備不足が原因でせっかく開いたお店が立ち行かなくなった」という事態を避けるためにも、ぜひ今回の記事を事業計画づくりに役立ててください。
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