卸専門から販路拡大を目指す老舗靴メーカーがポップアップストアで踏み出す一歩

今回ご紹介する株式会社トーヨーシューズさまは、50年以上継続してきた「卸」としての販売方法を守りつつ、小売という販売方法にも今年から舵を切り始めています。それはなぜか。またSHOPCOUNTERを利用した理由や、ポップアップストア出店を経て得た知見についてお話を伺いました。

紳士靴専門会社として52年の歴史
小売を開始した理由
初めて出店スペースを決めた経緯
ポップアップストア出店による効果
ポップアップストア出店による思わぬメリット
ポップアップストアならではの購買傾向
今後の展望

紳士靴専門会社として52年の歴史

弊社はもともとはトーヨーゴム工業直系の総合商社でした。トーヨーシューズ関西販売という社名で靴部門が独立したのが1972年。関西を中心に営業していましたが、全国展開になったことをきっかけに株式会社トーヨーシューズと社名変更（1977年）し、一貫して紳士靴の卸をしています。

取引先としては、百貨店、大手スーパーマーケットの他、靴の大型専門店や商店街の靴屋さんとも商売させてもらっています。ブランドは弊社オリジナルであるFRANCO LUZIやARUKURUN。また、LANVIN COLLECTION、KATHARINE HAMNETT、CASTELBAJACなどブランドの靴を仕入れての販売もしております。

また、ブランドとのライセンス契約という形にはなるのですが、Yumi Katsura，Yumi sienneやBobsonなどを扱っております。

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今まで小売は全く未経験だったのでしょうか？

はい、百貨店であれば、展示会でバイヤーさんに来期の春夏や秋冬の商品をチョイスしてもらって、その時期になれば商品を納入します。スーパーマーケットでしたら、弊社の作ったサンプルを商談に持っていって検討していただく。専門店だとキャラバンという形でサンプルを持って回る、そんな販売方法でこれまでやってきました。

2023年に3代目社長に曲尾が就任し、小売にも注力をしていこうと社の方針が変わりました。そこで初めて“ポップアップストア”という販売方法を考え、2024年1月から大阪の梅田にあるオフィスビル「毎日インテシオ」で出店。直接売るとなるとどうすればお客様はついてくれるのだろうというところを、いまも試行錯誤しています。

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小売を開始した理由

直接的にはコロナ禍です。
同業他社で倒産していくところもありましたし、大手のスーパーマーケットや百貨店でも店舗を閉めるところもあり、卸先が少なくなってくるのでは？という危機感がありました。

その状況を指をくわえて見ているわけにはいかない。ただし、やみくもに我々が小売をすると今お世話になっている卸先にご迷惑をかけてしまうことになるので、そういったことがないように販売していこうと考えました。例えば弊社の得意先があるエリアの商店街や商業施設では、ポップアップはしないよう気をつけています。

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ネット通販(EC)の取組状況

ネット通販(EC)は、以前からやっています。
ただ、ネット上だと弊社が卸している得意先と同じ土俵になってしまうので、迷惑をかけたらいけないという気持ちもあってあまり力を入れていませんでした。

ポップアップストアであれば、得意先にご迷惑をかけないエリアを自分たちで選定していけますし、今後直営店や小売を強化する上でのテストマーケティングにもなるんじゃないかと考えたんです。

ポップアップストア出店の想定メリット

事前に2つ想定していました。1つは、卸売と小売では構造の違いにより利益率が異なるため、小売であれば、多少の値引きを実施しても利益は残るということ。

もう1つは、卸の最たる取引先である百貨店とは完全買取ではなく、委託買い取りの条件でやっており、基本的に半年クールで商品が入れ替えになります。売れ残り返品された商品は特価品として大幅な値下げをすれば原価割れをしてしまうため、直接お客様に適正な価格で提供することで、在庫消化をできる場所がないか探していたというのもあります。

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初めて出店スペースを決めた経緯

弊社は大阪が本拠地でメイン商品が紳士靴なので、このエリアのビジネス街でビジネスシューズを売りたい。当然ビジネスマンがたくさんいるところが第一条件でした。一番ここがいい！と候補に挙がったのが、大阪駅の各路線からのアクセスがいいオフィスビル「毎日インテシオ」でした。

最初は、毎日インテシオの会議室スペースを借りようと思って見に行ったんです。そのときにたまたまエレベーター前に出店していたおにぎり屋さんがあって、お昼になるとみんなここのエレベーターから降りてくるんですよ。
エレベーター前で人通りも多く、視認性も高かったので、「このスペースも毎日インテシオさんでしょうか？お話を聞けますか？」とお願いをして、SHOPCOUNTERを通した問い合わせを案内いただきました。他のフロアにもスペースはありましたが、導線としてはここのエレベーター前が一番いいということで、決めました。

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ポップアップストア出店による効果

集客数など具体的な数字は会期ごとにバラツキがあり、一定の数字が出ているわけではないのですが「わざわざ百貨店やスーパーとか休みの日に行かなくても、仕事帰りに買って帰れる」といった声も聞かれました。

男性は潜在的な買い物需要だけでは、休みの日にわざわざ買い物に行かない人も多いので、通勤導線でアプローチし、購入検討してもらいやすい体験設計がうまくはまったかなと感じています。人通りが多くて、のぼりを立てたら見に来てくれたりしていたので、認知度の向上にもなったと思います。

ポップアップストア実施時および出店後の効果

※カウンターワークスによるマーケティング担当者127人を対象にした「ポップアップストアに関する実態調査」より

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ポップアップストア出店による思わぬメリット

近隣スペースに紳士シャツメーカーの方が同じくSHOPCOUNTERを通じて出店されました。
紳士関係を扱っているという共通項があったので、名刺交換をし、情報共有ができてよかったです。
将来的には何かしら紳士シャツと紳士靴でコラボ的なことができたら面白い、そんなお話もできたらいい。そういう出会いは思いがけなくうれしいことでした。

また、商品の価格帯でも予想外のことはありました。
弊社のビジネスシューズは10,000円～25,000円の価格帯で販売しています。ポップアップストアでは、、安い価格帯しか売れないのかな？という先入観があったんですが、意外に高価格帯の商品も売れたんですね。
やはり定価よりもお買い得な価格設定で販売しているので、売れたんでしょうね。それはうれしい誤算でした。

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ポップアップストアならではの購買傾向

ポップアップストアは常設店舗でずっと販売しているのとは違って、次にその場所に行ってもそのお店があるとは限りませんよね。
商品を見たお客さんが「今、買いたい」という気持ちでパッと買っていくわけですから、靴というカテゴリーでいいますと、サイズをきちんとそろえることが大事ですね。

服であればMかLか迷っていたらどちらでもいけるというところはありますが、靴の場合は特にきちっと合わないと履けないので。少々きつくてもブカブカでも履きにくい。だからサイズ欠けしていろんなモデルを販売するのでなくて、モデルを絞ってでもサイズを25から27.5まできちっと揃えている方が、効果的だと思いました。出店当初は聞かれたサイズをすぐ用意できず、逃してしまったお客さんも一定数いたんですよ……。

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