ここ数年で一般層にも広がりを見せるクラウドファンディングは、資金集めだけではなくファンづくりの手段としても注目されています。この記事では、CAMPFIREとBOOSTERのトークセッションからその可能性を探ります。
ここ数年で一般層にも広がりを見せるクラウドファンディング。
新しい技術を活用したガジェットや新店舗オープン、コミュニティの場づくりなど様々な分野で利用されています。
今回はその中でも「Fashion Crowdfunding Night」と題し、ファッション分野におけるクラウドファンディングの可能性について探るイベントにてお話を伺ってきました。
▲CAMPFIREの遠峰氏(左)とBOOSTERを運営するパルコの佐藤氏(右)。
第一部で登壇したのはファッションに特化したクラウドファンディングCLOSSを始動させたCAMPFIREの遠峰氏と新規事業としてクラウドファンディングサービスBOOSTERを運営するパルコの佐藤氏。
ファッションを中心としたクラウドファンディングを運営する2社にファッションとクラウドファンディングの未来についてお話を伺います。
遠峰氏:CAMPFIREは2011年にサービスを開始したころからミュージシャンやデザイナー、アーティストの方にご利用いただくことが多いという特徴がありました。
そうした会社全体のとして強みを生かして、ファッションに特化したクラウドファンディングを開始しました。
佐藤氏:きっかけとしては大きく3つあります。
一つ目はファッション業界の課題解決に直結するのではないかと感じた点です。
パルコという会社自体がニッチなもの、小規模だけれどもキラリと光るものを大切にしていることもあり、そうしたアーリーステージの作り手さんたちが活躍できる場としてクラウドファンディングという仕組みが有効なのではないかと感じています。
さらにパルコの社会的役割であるインキュベートという視点からも、そうした新しいブランドをさらに大きくするとして有効に働く仕組みだと感じたのが二つ目、他業界や生活者と一緒に作り上げるかたちに新しいファッションの未来を感じたのが三つ目の理由です。
そうした点から会社に新規事業として提案し、BOOSTERを開始する運びとなりました。
遠峰氏:今もまだ「ブランドイメージを毀損するのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
ただその中でも徐々にクラウドファンディングの認知度も高まっていますし、成功している企業様を見て「何か面白いことをやりたい」というご相談をいただくことも増えています。
そういう意味では今ちょうど過渡期のように感じますね。
遠峰氏:1番気をつけているのは資金調達としてではなく、あくまで”コミュニティづくり”という文脈でお話することは気をつけていますね。
クラウドファンディングの特徴として、お店を介さずに直接エンドユーザーとコミュニケーションがとれるという点があります。
そうした結びつきの強いユーザーとはじめに出会う場所としてご紹介しています。
またPR効果やテストマーケティングという側面からもお伝えしていて、受注販売のような考え方で運用できるので、コストやリスクを抑えて新しい商品を世に出せるといった点をお伝えするようにしています。
佐藤氏:2011年にBOOSTERの前身となる投資型クラウドファンディング「ファイト・ファッション・ファンド」を立ち上げた当時は、デザイナーやブランドの方にお声がけしても8:2で反対されることが多かったです。
公に資金を集めることで「助けてもらった」という感覚があり、ブランドイメージを毀損するのではないかとおっしゃる方が多かったですね。
2014年にサービスとして投資型から購買型に移行した際にも同様にブランドの方にお声がけしたところ、ほぼ6:4くらいの割合で好意的に受け止めてくださる方が4割まで増加しました。
ファッション業界はややクローズドな雰囲気や自分達だけで創り上げなければならないというプロ意識がありますが、最近では間口を広げてもっと生活者の人たちと新しいアイデアを出し合っていこうという雰囲気になっていきつつあるように感じます。
佐藤氏:CAMPFIREをはじめクラウドファンディング業界全体が盛り上がっていることもありますし、時代的にオープンイノベーションが重視されはじめたという空気感もあるように感じますね。
遠峰氏:現状はありがたいことに問い合わせをいただくことが多く、その問い合わせに対応するのでいっぱいいっぱいという状況でですが、今後はスタッフも増員し、サービスの質を守りながら、弊社からのお声がけも増やしていきたいと考えています。
代表の家入が戻ってきてから、戻る直前と比べてプロジェクト数20倍、流通金額4倍と急激にサービスとして伸びていることもあり、まずは問い合わせいただいたプロジェクトをサポートして成功させることに注力しています。
佐藤氏:私たちはこちらから声をかけることもありますね。
それもクラウドファンディングのチームだけではなく、パルコ全体のメンバーから提案されることもあります。
地方にも店舗がありますので、資金や規模の面からパルコの本業である店舗ビジネスとしてはご一緒できなくても、クラウドファンディングであれば一緒に面白いことができるのではないかという提案も多々あります。
ただ私たちも小さなチームで運営しているので、ひとつひとつのプロジェクトを丁寧にサポートし、成功に導くことを大切にしています。
遠峰氏:クラウドファンディングのやり方として「All or Nothing」と「All in」の2つのやり方があり、前者は目標額に達しなければ支払われないという仕組みで、後者は目標金額に達しなくても集まった金額すべてがプロジェクトオーナーに支払われるという仕組みです。
最近は「All or Nothing」と「All in」の割合は2:8で、ほとんどの方が「All in」の仕組みを採用されています。
その審査基準としては「目標金額に達しなくても実現可能かどうか」を見ていて、目標金額が集まらなければ実現できないプロジェクトではなくPRの一環として取り組まれることが増え、日本でもクラウドファンディングが浸透してきたことがわかる数字なのではないかと思います。
具体的な事例としてはANREALAGEのクラウドファンディングの事例があります。
彼らの目的としては毎シーズン参加している、パリコレクション協賛企業募集の新しいチャネルとして挑戦してみたいという点と、エンドユーザーとの接点をもつことでその反応を見てみたいという点が大きな理由でした。
このように「一度試してみたい」という動機で実施される例も増えてきています。
佐藤氏:クラウドファンディングの実績は海外進出時のよいレピュテーションになるというのはこれまでのプロジェクトを通して実感しているところです。
日本のブランドがニューヨークやパリでインスタレーションや展示会を開催する際、クラウドファンディングを通してある程度まとまったお金を集めたという実績は雑誌をはじめメディアにもとりあげられやすいようです。
もちろんクラウドファンディングははじめのきっかけでしかなく、そこからの各ブランドさんの努力が必要になりますが、一歩目の成功体験として有効なのではないかと考えています。
遠峰氏:CAMPFIREとしては”ファッションの民主化”を目指しています。
作り手と買い手が直接つながることでこれまでにない面白いものを作り出し、さらに作り手と買い手が一緒に新しいものを生み出せるような場所にしていきたいと考えています。
また今後の発展としては、クラウドファンディングは現状なにかやりたいときに使う点の存在でしかありませんが、もっと長い時間軸でブランドとご一緒させていただくことで、ブランドが私たちのプラットフォームを通して成長していけるようなかたちにしていきたいですね。
佐藤氏:BOOSTERとしては、突拍子もない商品を作るブランドを増やしたいというのが1つ目指している方向です。
POSデータをもとに売れ筋商品を作るだけでは同質化してしまうので、あえてマーケティングを度外視した新しい商品を増やしていきたいと考えていて、クラウドファンディングはそれが実現できる仕組みだと考えています。
クリエイターの方が本当に心の底から作りたいものを実現することで、突拍子もない商品が生まれるファッション業界になっていくといいなと思います。
もう1つ、生活者の方と一緒にものづくりをしていくことも目指しています。
そうしたユーザーイノベーションを通して、生活者ひとりひとりの力とクリエイターの力が混ざり合ってより面白いものが出来上がっていく、そうして今よりさらに素晴らしいファッション業界になっていくといいですよね。
そのためにも私たちとしても、BOOSTERを開けば面白いものが載っている、ユニークな商品が並んでいるカタログのような存在になっていきたいと考えています。
実際にクラウドファンディングを成功させたブランドが語る成功のポイントとは?
後半のレポートはこちらから!
“資金調達”ではなく “ファンを作る”。ファッションとクラウドファンディングの関係性 vol.2
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