ここ数年で、メディア主催のイベントやカフェが増えてきました。これまで紙やWebを通して情報発信してきたメディアが、あえてリアルの場をもつ意味とは?4つのメディア事例からその理由に迫るレポートの前編です。
メディアを取り巻く環境は激変する中、新聞や雑誌などのマスメディアが仕掛けるイベントが増えてきました。
これまで紙やWebを通して情報発信してきたメディアが、あえてリアルの場をもつ意味はどこにあるのでしょうか?
そこで今回はPeatixが主催したいま、メディアが「場」を作る意味 それぞれのメディアが考えるリアルの場の役割とは – イベントサロンvol.13のイベントレポートを通して、メディアが場をもつ意味について考察します。
▲朝日新聞メディアラボ 鵜飼誠氏
トップバッターは朝日新聞メディアラボの鵜飼氏。
2013年6月、築地にオープンした朝日新聞メディアラボは、2014年10月に渋谷にも新たに分室を立ち上げました。
渋谷分室はIT企業が集積する渋谷とサブカルチャーの発信地である原宿の間に位置し、新聞社の枠組みを超えた新たなコラボレーションを生み出しています。
鵜飼氏はそんな朝日新聞メディアラボの意義を “超メディア”という言葉で説明します。
鵜飼氏:朝日新聞メディアラボは「朝日新聞のDNAを断ち切る」というコンセプトでスタートした場所です。
そのためには新聞という伝統的なメディアの形から見直し、新聞としての限界を “超”えていくという思いから朝日新聞メディアラボの意義を「超メディア」という言葉で表現しています。
場というメディアを作ることでそこに局地的な熱狂が生まれ、共感をベースに次の新しいものが生み出されていく。
そうした流れの起点でありたいと考えています。
また新しいものを生み出すには「局地的な熱狂」が必要で、無理に広げるとそこに集まった熱が薄まって冷めてしまいます。
だからこそリアルの場で熱を高めることが重要なのです。
朝日新聞メディアラボでは今後さらに、場の提供だけでなく「朝日新聞アクセラレータープログラム」をはじめとする朝日新聞ならではのリソースを活用して新たな価値を作り出していきたいと考えています。
– Q:朝日新聞ほどの知名度があると、その看板に惹かれてくる人も多いのではないかと思いますが、そうした動きに対してはどのようにお考えですか?
鵜飼氏:「朝日新聞」というブランドをきっかけにして興味をもっていただけるのは大歓迎ですし、ぜひ従来の新聞のイメージとのギャップを感じていただきたいと思っています。
期待に応える部分と、いい意味で期待を裏切る部分。
そのどちらも大切にしていきたいですね。
– Q:この場に異能な方を集めることで朝日新聞にはどのような影響がありましたか?
鵜飼氏:やはりオンラインでは得られない、リアルの場で対面したからこそ発せられる言葉というものがあるように思います。
メディアラボ自体が、「創造的余白」となって、自由に発想できる場として機能しています。我々含め、ここに来る人たち皆が自分とは異質な人や考え方、発想と出会い変化が起こる場所になりました。
▲コンデナスト・ジャパン マーケティングディレクター 菊井 直人氏
次に登壇したのはコンデナスト・ジャパンの菊井氏。
VOGUE、GQ、WIREDなどハイセンスな雑誌を出版するコンデナスト・ジャパンは、イベント開催にも力をいれています。
コンデナスト・ジャパンが考えるマガジンとイベントの関係性やこれからの可能性について語っていただきました。
菊井氏:コンデナスト・ジャパンではVOGUE、GQ、WIREDといった雑誌を展開しているのですが、実はすでに紙よりデジタルの売り上げが大きくなっています。
特にSNSの伸びが大きく、今後全社的にデジタルを主体にしていく方針です。
またイベントの開催も増やしていて、3誌あわせて年間で40件以上開催しています。
年間の雑誌発行数が3誌あわせて36冊なので、雑誌の発行数よりもイベント開催数の方が多いことになりますね。
イベント規模も小さいものから大きなものまで様々で、一番大きいところだとFASHION’S NIGHT OUTがあります。
森ビル、ラフォーレ、表参道けやき会といった表参道の商業施設やブランドと協力しながら、表参道を中心にファッションを盛り上げていくためのショッピング・イベントです。
毎年30万人ものファッション・ピープルが集うイベントということで、そうした人々にアピールしたいブランドにスポンサーとして入っていただいています。
VOGUE Women of the yearやGQ Men of the yearも同じく、スポンサーをつけて開催しているイベントです。
これらはコンデナスト主催のイベントにスポンサーとしてついていただいているかたちですが、それ以外にもクライアントとタイアップで開催するイベントもあります。
考え方としては雑誌でのタイアップと同じで、クライアントがアプローチしたい層に届けるために各雑誌のファンの傾向などを分析してイベントを開催するといったかたちです。
アプローチ方法が雑誌かリアルのイベントか、という違いですね。
コンデナストが発行している雑誌の読者はどれも、ラグジュアリーミレニアルズ、スタートアッパー、イノベーターと呼ばれる層の方々なので、そういった層にアプローチしたいクライアントからご相談いただきます。
またWIREDは六本木にWIRED Lab.という施設を持っていて、毎月1回WIRED on WIREDというシリーズでイベントを開催しています。
これは雑誌のスピンオフとして、その月に取り上げたテーマの中からゲストを呼んでトークイベントを開催するというものです。
このように大小様々なイベントを通して各誌のファンを増やし、さらにそこにアプローチしたいクライアントへつなげていくという手法をとっています。
– Q:イベントを通して読者に提供するもの、またコンデナストにとってのメリットについて教えて下さい。
菊井氏:読者に対しては「その雑誌らしい空間」を提供することを心がけています。
例えばVOGUEであればおしゃれでラグジュアリーなものを好む方が多いので、イベントでシャンパンをお出しするなど “VOGUE的な雰囲気”を演出しています。
コンデナストとしては、やはり実際に会うことでしかわからない読者の雰囲気があると思うので、イベントを通して読者への理解がより深まると考えています。
– Q:タイアップイベントで、スポンサーに満足して継続的に開催してもらうために気をつけていることはありますか?
菊井氏:開催したイベントをそのイベントの中だけで終わらせず、いかに広げるかを意識しています。
イベント開催が他のメディアでニュースになれば認知拡大にもつながるので、そうしたPRの部分まで意識して設計するようにしていますね。
(後編はSENSORSプロデューサーの原氏、NPO法人グリーンズの植原氏のトークです。)
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