リアル店舗とネットショップを結ぶO2Oという考え方が一般的になってきましたが、具体的な施策と効果がわかりづらいもの。この記事では、ファッション業界でO2O施策を展開する3名のディスカッションを通してO2O施策の最前線をご紹介します。
最近小売業界でよく聞く聞かれる「O2O(Online to Offline)」という言葉。
Online to Offlineという言葉通りECやSNSなどのオンラインでの働きかけによってリアル店舗やイベントなどのオフラインへ誘導する施策のことを指しますが、実際にどういう施策が行われていてどんな効果を発揮しているのかという点についてはまだまだ情報が少ないのが現状です。
そんな中、2015年12月23日(水)にFASHION STUDIESが主催する“Fashionable Technology 002 O2O”が開催されました。
このイベントでは、ファッション業界でO2Oをビジネスのキーとして取り組んでいる方々を招き、それぞれの活動の紹介やパネルディスカッションを実施。
今回はイベントでのディスカッションをもとにファッション業界で O2Oマーケティング に取り組む意味やO2O施策を成功に導くためのポイントなど、O2Oやオムニチャネルの最前線についてまとめました。
Fashionable Technologyはファッションを体系的に学ぶ場「Fashion Studies」が主催するテクノロジーをファッションの文脈で再考するためのイベントです。
2回目となる今回は「O2O」をテーマに、O2Oの最前線で仕組みづくりやサービス開発を行う3名のゲストがパネルディスカッションを行いました。
【登壇者略歴】
唐笠亮
株式会社パルコ・シティ WEBコンサルティング2部 部長・JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 特別講師
2008年より、WEBコンサルティング会社「パルコ・シティ」で、アパレル・雑貨ブランドのECサイト構築・運営におけるコンサルティングや、パルコをはじめ商業施設等を背景とした大規模ECモールの構築、O2O・オムニチャネル戦略のプロジェクトマネージャーを務める。
小関翼
スタイラー株式会社代表取締役最高経営責任者
大手EC事業者のAmazonにて事業開発を担当。ネットとリアルをつなげることで、情報の非対称性からEC比率の低いライフスタイル領域で日本発のイノベーションを起こすことを目指す。2015年3月に“つながり”でファッションを楽しくするスタイラー株式会社を設立。
栁澤慧
文化服装学院を卒業後、PatternMaker、WebDeveloperを経て海外へ。母校のインタビューサイトのChefEditorとしてニューヨークやパリなど数カ国で”FASHION”についてのインタビューを行う。帰国後はナレッジワークス株式会社でARやセンサーを使ったアプリ開発に携わりつつ、FTLにてエドヴァスボネゲのOlga氏と共に新たな”FASHION”の可能性を探る。
【モデレーター】
西田拓志
株式会社衣屋代表取締役
2012年日本のクリエイターにフォーカスしたファッションウェブマガジン「coromo」を創刊し、2013年3月には株式会社衣屋を設立、代表取締役に就任し、2013年6月ファッションコワーキングスペース「coromoza」を原宿にオープン。
イベント当日はクリスマス直前の祝日であったにも関わらず、立ち見もでるほど満員となった会場でイベントがスタート。
まずは登壇者それぞれの自己紹介とO2Oの取り組みについての発表がはじまります。
画像出典:スタイラープレスキット
小関氏:私は現在、STYLER(スタイラー)というユーザーとショップをマッチングさせるファッションアプリの運営を行っています。
アプリはちょうど今月10日にリリースしたばかりなので、やっとサービス・インしたという感じですね。
ファッションの市場規模は18兆円といわれていますが、そのうちオンラインは1.4兆円とたった7%程度に過ぎません。
まだまだ圧倒的にオフラインが強いのがファッション市場だといえます。
これだけ技術が発達している中でなぜまだオフラインが強いのかというと、その理由は「情報の非対称性」にあると考えています。
ファッションアイテムは実物を見て、着てみないとサイズやかたちが合うか、自分に似合うかといったことがわかりません。
つまりオフラインで知ることができる情報をオンラインで手に入ることが難しいのです。
モノを見るだけではなく店舗でスタッフさんに相談したり、コミュニケーションをとる中で購入に至るケースも多々ありますがおしゃれなお店ほど店舗に入るハードルが高く、ますます情報の非対称性が発生してしまいます。
そこでSTYLERでなにを解決できるかというと、店舗とお客様とのコミュニケーションハードルを下げるため来店前の0回目の接客ツールとして使っていただいています。
ある商品を探しているユーザーが”Post”すると、それに対して様々なショップから”Reply”がコメントとして返ってきます。
ショップからのReplyによって、ユーザーがショップを訪れるきっかけづくりをしています。
ショップからのReplyはPostしたユーザー以外も閲覧することができ、同じ悩みをもつユーザーが投稿を”Watch”すると、ショップがReplyを投稿するたびにWatchしているユーザーにも通知がいく仕組みになっています。
投稿されたPostとそれに紐づくReplyは私たちのオウンドメディア STYLER MAGにまとめて掲載し、外部のニュースサイトにも配信しています。
今後は「なんとなくこんなものがほしい」というぼんやりしたユーザーのニーズにも応えられるサービスにしていきたいと考えています。
画像出典:カエルパルコリリース
唐笠氏:私は株式会社パルコ・シティで、ショッピングセンター「パルコ」のWeb活用・ICT活用・オムニチャネル推進を手がけています。
パルコは「いつでも、どこでも、24時間パルコ」をキーワードに、ショッピングセンターの新しいO2O・オムニチャネルの形「カエルブログ(R)・カエルパルコ」を2014年にスタートしました。
これは店頭の販売機能の拡充を主目的とした新しい仕組みで、店頭のショップスタッフさんが発信する「ショップブログ」から、店頭取り置き申し込みとWeb注文ができるサービスです。店頭の在庫を店頭から配送してもらい、売上も店頭につくようになっています。
ECとリアル店舗をシームレスにつないでいくために、ECをEC事業として独立させるのではなく店頭が中心になるように仕組みを整えました。
画像出典 : daub(だーぶ)
栁澤氏:私は現在ナレッジワークス株式会社でARやVRを使ったアプリの開発をしています。
もともとパタンナーをしていたのですが、ファストファッションの台頭もあって同じ型紙で作られた洋服が量産されていくことに問題を感じてテクノロジーの分野からファッションを変えようと思い今の仕事に至っています。
それぞれの紹介が終わるとまずは西田氏から小関氏に質問が飛びます。
西田氏:小関さんはO2Oの中でもなぜファッションという分野を選ばれたのでしょうか?
小関氏:私自身ファッションが好きだったということが大きな要因ですが、前職のAmazon時代の体験が元になっています。
同僚も含めたIT系の人たちがAmazonをヘビーユースしてECで多くのモノを買う一方で、ファッション関連のアイテムだけはECで買わずに実際にリアル店舗に足を運んで買っていました。
これは先ほどご紹介した情報の非対称性によって、ファッションアイテムはリアルの体験に頼らざるを得ないことが大きいと思っています。
だからこそ他のアイテムよりもファッション分野におけるO2Oの可能性が大きいのではないかと思いこの分野を選びました。
先日STYLER MAG上で公開し多くの方にご覧いただいたのですが、FASHION TECH MAPというものを作ってFASHION TECHの業界をまとめてみたんですね。
するとファッションとテクノロジーの両方が得意な人がそう多くないので、自分がやる必要を感じました。
画像出典:STYLER MAG
もちろんECの市場規模で見ても、日本は流通額ベースでまだ10%にも達していないのに対しアメリカはすでに12%、イギリスは13%まで伸びていますので、これからますます伸びていく分野であると感じています。
西田氏:唐笠さんは現在のEC市場をどのようにご覧になっていますか?
唐笠氏:私たちはECを単体で捉えるのではなく、「リアル店舗もECも、都合に合わせてどちらも便利に利用したい」というお客様のニーズを、リアルとWebを連動させることによってどちらにも取り込む必要があると感じ、このカエルパルコをスタートさせました。
西田氏:カエルブログは店頭のショップスタッフの仕事が増える施策だと思いますが、反発などはなかったのでしょうか?
唐笠氏:もちろんはじめから全テナントさんが積極的だったわけではありませんが、ブログの書き方やSNSの活用法の研修を継続的に実施することで、徐々に理解を広げていきました。
ブログやSNSの発信力は年々高まっていますし、それによってショップスタッフさん個人に多数のファンが付き、来店や売上に寄与する事例も多く見られるようになってきましたね。
小関氏:そういえばパルコでは毎年開催している接客コンテストの項目にブログの書き方やWeb接客が新設されたそうですね。リアルとWebの接客のうまさには相関があるものですか?
唐笠氏:やはりあると思います。接客がうまいショップスタッフさんは、総じてニーズを把握する力に長けているなと感じます。リアルでもWebでも、お客様のニーズを感じ取って提案するのは同じなんだと思います。
接客コンテストの審査項目にブログのスキルを追加したのは、ショップブログやカエルブログ(R)という仕組みを用意するだけでなく、店頭での接客とWebでの接客を一気通貫で向上させたいという考えからです。
小関氏:今は買う前にネットで調べることは当たり前ですから、ブログで商品やブランドについて情報発信をしたりWeb接客をすることも当たり前になりつつありますね。
特にスマホはPCよりも画面が小さい分一度に表示できる情報が少ない一方、コミュニケーションが生まれやすくなっているように感じます。
画像出典:PAZZO Facebook
例えば台湾のPAZZOのFacebookでは毎回の投稿に何百というコメントがつきます。
色違いやサイズ、素材などそれぞれが気になることについて質問をしており、この時点でWeb接客が発生しているんですね。
中国や東南アジアはPCを飛び越して先にスマホが入ってきた分、こういったコミュニケーションへの適応力が高いと感じています。
栁澤氏:O2Oといえば、2015年11月にLINEとスタートトゥデイが提携してビーコンによるO2O施策が話題になりましたが、ビーコンについてはどのようにお考えですか。
小関氏:そもそもBluetoothをオフにしている人も多いので、個人的にはGPSの方がよいのではないかと思っています。
日本ではまだ始まっていませんがアメリカのモバイルアドは9割位置情報が組み込まれており、位置情報からパーソナリティを予測して広告をだしています。
そういった位置情報取得によるO2Oの進化はありそうですね。
唐笠氏:ビーコンを使った施策でいうと、名古屋パルコ館内にビーコンを多数設置し、お客様に専用のアプリをインストールしたスマホを持ってお買い物をしていただくという実験をしました。
Beacon Analytics(R)というんですが、これによってお客様の館内の動きをデータ化し、見える化することができます。リアルの場は、経験則や感覚的な判断が多くなりがちですが、今後はこうした科学的なアプローチをより良い売り場作りにつなげていきたいですね。
西田氏:この実験とてもおもしろいですね!この話題だけで何時間でもいけそうなので、このあたりで質問に移りたいと思います。質問のある方どうぞ!
質問者:今後日本全体が高齢化していく中で、40代以上の層へのアプローチについてはどのようにお考えですか?
小関氏:現在STYLERがターゲットにしているのは25〜35歳の男性ですが、意外と40歳以上の方にも使っていただいています。
というのも、昔に比べて40代、50代が格段におしゃれになってきているんですね。
現在雑誌を買い支えているのも40代以上の方々だと思います。
今後はご利用いただく年代層が広がってもそれぞれの方に快適にご利用いただけるように、蓄積されたデータをもとに人によって見せ方を変えるといった工夫をしていきたいと考えています。
西田氏:私の父もiPadを渡したとたんに自分で検索して高額な食器を購入したりしていたのですが、若い人向け・高齢者向けと分けられていなくても興味のあるものであればみんな検索して買っちゃいますよね。
小関氏:まさにそうで、シニアに絞り込みすぎたサービスはあまり発展していない気がします。
誰にとっても便利なものは若者にとってもシニアにとっても便利なものなので、STYLERもみんなにとって便利なサービスを目指していきたいと思っています。
質問者:カエルブログ・カエルパルコの定量的な効果の数値などはありますか?
唐笠氏:カエルブログ(R)・カエルパルコのWeb注文の売上は、ショップさんそれぞれのブログへの力の入れ方で大きく幅があって、月に数万円くらいのショップさんから、百万円を超えるショップさんもあります。
売れる店舗は先にカエルパルコで売れる分を予測して店頭に在庫を積んでおくところも。
Web注文の6〜7割は地場の商圏外から、つまり来店することが難しいお客様の購入で、店舗の営業時間外の購入も2〜3割ほどと、店頭の販売機能の拡充というもともとのコンセプトに合致した結果が出ていると思います。
今回のレポートに掲載した以外にもITとFashionに関する事例や参加者からの質問が飛び交い、O2Oへの関心の高さを改めて感じました。
特にお客様が店舗に足を運ぶ前の「プレ接客」の需要は今後より増えていく、という点は現在のSNSやブログでのお客様との交流のニーズからもイメージしやすいかと思います。
その一方でディスカッションの中でしきりにリアルの重要性が強調されていたのも印象的でした。
書籍や消耗品とは異なりWeb上での情報だけでは買いづらいファンション関連のアイテムは、どれだけECが発達してもリアル店舗とは切っても切り離せない分野であることを感じます。
唐笠氏がカエルパルコの説明の際に強調されていた、ECとリアルを切り分けて考えるのではなくお客様にとってより便利な方で買ってもらうという意識が今後の小売業全体で求められていくのではないでしょうか。
このようにO2Oが重要視されていく中で、日本でのEC化率は引き続き上昇を見せていきます。
実店舗を持たないオンラインショップ事業者の方々がリアルの売場を気軽に持つためにも、ポップアップストア出店の必要性を改めて感じたイベントでした。
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