公開日:2016年12月9日
更新日:2019年7月12日

“資金調達”ではなく “ファンを作る”。ファッションとクラウドファンディングの関係性 vol.2

ここ数年で一般層にも広がりを見せるクラウドファンディングは、資金集めだけではなくファンづくりの手段としても注目されています。この記事では実際にクラウドファンディングを成功させた3組の事例から成功のポイントやこれからの可能性を探ります。

ここ数年で一般層にも広がりを見せるクラウドファンディング。

新しい技術を活用したガジェットや新店舗オープン、コミュニティの場づくりなど様々な分野で利用されています。

今回はその中でも「Fashion Crowdfunding Night」と題し、ファッション分野におけるクラウドファンディングの可能性について探るイベントにてお話を伺ってきました。

後半のvol.2では実際にクラウドファンディングを経験する/した3名のお話を伺います。

前半のレポートはこちらから。

資金を集めるだけではない、クラウドファンディングの魅力とは

▲左からFACTOTUMデザイナーの有働氏、成遂寺プロデューサーの安藤氏、TO NINE代表の増田氏。
後半で登壇したのは12月末からCLOSSで開始予定のFACTOTUMデザイナーの有働氏、アトリエ「成遂寺(せいすいじ)」立ち上げプロジェクトを成功させた成遂寺プロデューサーの安藤氏、ファッション分野で最も多額の資金を集めた永久ストレッチのオーダーメイドシャツ「KEI(ケイ)」のTO NINE代表・増田氏の3名。

それぞれの視点からクラウドファンディングの魅力や苦労話について伺います。

  • まずみなさんクラウドファンディングのどこに魅力を感じ、なぜやってみようと思われたのでしょうか。

有働氏:実はつい最近までクラウドファンディングもCAMPFIREのことも知らなくて、たまたま知りあいづてで紹介されたことがきっかけです。

そのころちょうど亀田縞という300年の歴史がある生地使って商品作りをしていて、これが海外生産におされて生産が減少してしまっていたところを機屋さんが復刻させたというストーリーのある生地なんですね。

私たちは毎シーズンテーマを設けて新しい商品を作っていますが、そうした1回きりの利用ではなく、いいものともっと長くお付き合いし残していきたいという思いとクラウドファンディングのお話のタイミングが合致したことから、この度挑戦してみようということになりました。

クラウドファンディングの開始は12月末ごろを予定しています。

安藤氏:私たちはBOOSTERさんからお声がけをいただき、新進気鋭のクリエイターやブランドデザイナーが使える共同アトリエ・成遂寺設立のためのクラウドファンディングを実施しました。

ファッション分野から見るクラウドファンディングの魅力としては、まず自分たちのセンスをアピールできるという点と、ビジネスやマーケティング視点を身につけられるという点だと思います。

ファッション系のクリエーターの中には、創る行為が得意なものの、「どう展開するか、どうビジネスモデルに変えていくか」ビジネス面が苦手な人が多いように感じます。

しかしクラウドファンディングで資金を集めるためには人に伝え、広めるためにどうすればいいかを考えなければなりませんし、製作過程を公開するといった新しいアプローチも必要になります。

そうしたクラウドファンディングの活動を通じて、営業や広報、ブランディングを深く学ぶこともできると思います。

増田氏:私たちはクラウドファンディングを始める前にECサイトも立ち上がっていましたし、資金調達というよりは自分たちのブランドやプロダクトを知ってもらってファンになってもらいたいという想いで実施しました。

ただ調達金額はそのあともレッテルとしてブランドについてまわるので、大きな飛躍を目指すのであればある程度大きな金額を調達しなければならないというプレッシャーもあります。

もちろん自己実現を目的とした場合はその限りではありませんが、ゴール設定次第ではそういう一面もあるように思います。

クラウドファンディングは魔法ではない。成功させるための施策とは?

  • クラウドファンディングの裏話や苦労話を教えてください。

増田氏:500万円を集めたという結果だけ見ると華やかに見えて、プロダクトがよかったからと言われがちなのですが、私たちは500万円を達成するための準備を綿密に時間をかけて準備していました

さらに終了前日にはポップアップストアをやって採寸会を開催したり、知人の会社で採寸会をやらせていただいたりなど、少しでも私たちのブランドやプロダクトに触れてもらえるよう、足を使って機会を増やしました。

本当に成功させようと思ったら、そういった泥臭い施策によってクラウドファンディングをギャンブルにしないということが重要だと思います。

安藤氏:私たちのプロジェクトと増田さんのプロジェクトは規模の意味でもコントラストが大きいと思うのですが、共通しているのは”クラウドファンディングは魔法ではない”といことですね。

ただネットを介しているというだけで、その裏には必死の営業や個々の動きがあります。
そこからシェアされて支援者が増えると行列効果で集まる、という流れだと思います。

また私たちは増田さんたちとは違ってプロダクトやサービスを提供するのではなく自分たちのアトリエがほしい、という話だったので、いかに他人事ではなく自分ごとにしてもらうかという部分を気をつけました。

誰でも利用できるサービスやモノを作る話ではないですし、自分たちの所有物がほしいという話なので見せ方の部分で非常に難しく感じました。

そのためにもただアトリエがほしいだけではなくなぜアトリエがほしいのかを掘り下げることで、そこにあるファッション業界に共通するイシューを見つけ、その問題に一石を投じるような社会性のある魅せ方をすることを重視しました。

自宅だと夜はミシンが踏めない、生地や衣装を置いておくスペースがない、スタイリストと会うためにいちいち外に出なければならない、といった問題を知ってもらう空気をつくり、それを解決するための方法が共同アトリエだった、というストーリーですね。

あえて過程を見せることで、中だるみを回避

▲当日はクラウドファンディングを成功させた商品も紹介。こちらは500万円の資金を集めた永久ストレッチのオーダーメイドシャツKEI。

  • プロジェクトの中で中だるみを感じたり、それを乗り越えるために意識したことはありますか?

安藤氏:ほとんどのクラウドファンディングがはじめは友人や知り合いが支援・シェアしてくれても、一定日数が経つと中だるみするものだと思います。

私たちも中だるみへの危機感があり、途中からSNSを通して自分たちの過程を見せていくことを意識しました。

出来上がったロゴや建物を見せるのではなく、経過や会議の様子など、人の顔や見えて想いが伝わる部分を見せることで共感を得る点を重視したのです。

クリエイターは完成された作品だけを見せたがるものなので、必ずしも美しいとはいえない泥臭い過程部分を公開することに反発もありました。

しかしそうした頑張っている姿は共感を呼びやすいため、表面的なソーシャルグッドにとどまらず心からの「いいね」を集めることができ、結果として支援も再度グッと伸びました。

  • 増田さんはSNSでの投稿の工夫や見せ方で意識している部分はありますか?

増田氏:まずは同じように身内へのPR、それから中だるみしないようにメディアとのリレーションも意識しました。

あとはクラウドファンディングで重要なのはキャッチーさ、わかりやすさだと思っていて、KEIでは「永久ストレッチ」のシャツ3枚にフォーカスして訴求をわかりやすくしました。

そういう意味ではブランディングにこだわってかっこつけすぎるとコンセプトが伝わりづらく、支援が集まらないということが往々にしてあると思います。

逆に伝統工芸といった分野はストーリーがあるのでわかりやすく、支援も集まりやすいのかなと思います。

  • 安藤さんから見て成功するクラウドファンディングはどういうものだと思われますか?

安藤氏:最近では大小様々なクラウドファンディングのプロジェクトが立ち上がっていますが、本当に想いが込められているかどうかは見透かされてしまうように思います。

ただ単に「こういうものがあったらいいな」だけでは通じなくて、本当に自分が心からやりたいもの、血の通ったプロジェクトこそが向いているのではないかと思います。


▲共同アトリエ成遂寺を拠点に活動するブランドZOKUZOKUB。

  • 今後クラウドファンディングによって、アパレルの仕組みやファッション業界がどのように変わっていくと思いますか?

有働氏:これまではショーがあって、展示会があって、受注があって生産するというのが一般的な流れでしたが、クラウドファンディングを利用することでどんな人でもどんな時でも思いだけで立ち上げられるというのが素晴らしいポイントですよね。

これから公開する私たちのプロジェクトに対してどれくらいリアクションを得られるかはまだ未知数ですが、たくさんの人がプロジェクトに挑戦した方が全体として楽しいクラウドファンディングにつながっていくと思うので、気軽にはじめる人がもっと増えていくといいなと思います。

そして今後作る人と買う人を直接つなげる架け橋になれば、クラウドファンディング自体ももっと広がっていくように感じています。

安藤氏:まず大きなところで言うと、光ったり浮いたりする服のようにテクノロジーを駆使した製品など、ファッションにおけるイノベーション開発を促進する役割もクラウドファンディングは持っていると思います。

もっと小さなところでいくと、これまで挑戦できなかった人たちのチャレンジの間口になるという部分ですね。

専門学校生が10万、20万の規模でクラウドファンディングで資金を集めて、ショーを実現できたら十分立派だと思うんです。

クラウドファンディングを通してマーケティングを学ぶこともできますし、教育の一環としても有効だと考えています。

増田氏:アパレル業界全体となると話が大きすぎるので難しいと思いますし、あくまでクラウドファンディングは手段なので、その後の成功は保証してくれないですよね。

ただそれは「ファッションビジネス」という観点からで、クラウドファンディングは「ファッションエンターテイメント」を目指すべきだと思っています。

万人受けではなく、100人に1人だけでも心から楽しませることが出来たり、わくわくさせたりできれば、商業的になりすぎている現代のファッションビジネスとは異なった、意義ある場になると思います。

そういった観点から今後のクラウドファンディングの繁栄を期待したいですね。


▲BOOSTERで支援を集めた無くさないIoT手袋・MAMORIOグローブ。
【協力】
Bridge of Fashion(イベント企画運営)

“Bridge of Fashion”は 「ファッションに携わる人や業界を繋げる場を作る」をコンセプトにファッション業界に関わってきた4人で結成された任意団体です。
各々がファッション業界に関わっていく中で 「ファッション業界が他の業界の人々と触れ、知る機会が少ない」という問題意識を持ち、その問題を自らの手で解決するため、定期的にファッション業界の方々を集め、今話題になっている業界やファッション業界にメリッ トをもたらしうるような業界の人々を繋げる場を提供しています。