公開日:2016年12月20日
更新日:2019年7月12日

海外事例に学ぶ!アパレルECの未来トレンド

テクノロジーによるファッションの活性化は欧米だけでなくアジア諸国でも進んでいます。そこでこの記事では、海外のファッション×テクノロジー事例を紹介するトークイベントを通して、今後のアパレルECトレンドについて考察します。

“ファッションテック”というフレーズも浸透しはじめ、テクノロジーによってファッションを活性化しようとする動きが広がってきました。

しかし様々なファッション向けサービスやEコマースの成功事例が話題となった結果、本当に取り入れるべきものや今後のトレンドなどがよくわからないといった方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は2016年のファッション×テクノロジー市場の動向を俯瞰し、ECビジネスに直ちに導入可能なノウハウ・サービスについてスタイラー、ブティックスター、バーチャサイズ、電通ダイレクトフォースの4社合同で語った“話題のファッションサービスを振り返る 2016冬”の内容をレポートします!

“コミュニケーション”と”コマース”が近づいている!アジアアパレルEC最前線

▲スタイラー株式会社代表の小関氏

はじめに登壇したのはファッションを提案するO2OアプリSTYLER代表の小関氏。

ユーザー・エクスペリエンスを中心にしたファッションテックとの付き合い方を中心に、アジアを中心とした海外事例についてお話しいただきました。

ファッションテック業界ではここ数年で新しいサービスがたくさん生まれています(※下記のFashion Tech Map参照)が、細分化されトレンドの上下もあることから実際にどのサービスをどんな目的で使うべきなのかがわかりづらい状態になってしまっています。
【参考】:Fashion Tech Map

しかしただオンライン/オフラインと切り分けたりサービスの導入を検討するのではなく、ユーザーがどういった買い方を望んでいるかにあわせて設計すべきだと言います。

小関氏:「例えば香港は先進国の中ではEC化率が低いのですが、これは香港という街自体のサイズが小さいために職場と買い物の場所が近く、且つ店舗が夜中まで開いていることからわざわざECを使って買い物するメリットがないためです。

他にも台湾では再配達の仕組みが発達していないためコンビニ受け取りが多く、決済もその場で行いたいというニーズからコンビニ決済が多いといった特徴もあります。」

このように、各国の文化や地理的要因から買い物に求められている最適なフローは異なるため、常に「どんな買い物の仕方を望んでいるのか?」から発想することが求められているとのこと。

またアジアの事例として、テレビや雑誌といったマスメディアよりもネットが大きな力をもっているという点があげられます。

特に日本はSNSの接触時間が17〜19分程度の長さであるのに対してアジア諸国は3〜4時間と言われているそうで、SNSでのコミュニケーションを起点とした購買行動が進んでいるようです。

アリババやタオバオでは買う前に2、3回やりとりするのが当たり前となっており、おすすめの商品やコーディネートの相談はもちろん、リアルの売買でも発生する”値切り交渉”もオンライン上で行われると言います。

▲台湾のファッションブランドPAZZOのFacebookページ

小関氏:「台湾にPAZZOというレディースカジュアルブランドがあるのですが、Facebookのいいね数は100万以上で、投稿するとすぐに何百という数のコメントがつきます。

投稿内容もまるでファッションカタログのように写真を多用しており、その投稿に対してユーザーが色やサイズ、在庫についてコメントで質問した上で購入に至るという流れです。

ブランドによってはFacebookメッセンジャーで住所を送ってもらい、アリペイやWechatペイを通して決済が確認できたら商品を送るというスタイルをとっているところもあり、SNSを中心としたユーザーコミュニケーションとコマースの距離はどんどん近づいています。」

このようにコミュニケーションとコマースの関係が変化している中、小関氏がてがけるSTYLERではユーザーが投稿した「こういうアイテムがほしい」といった要望に対して各店舗からアイテムの提案が届くといったサービスを展開しています。

小関氏:「一般的な口コミサイトと同様に、STYLERでも大多数の人は自ら投稿をするのではなく、別のユーザーが投稿した要望とそれに対しての店舗からの提案のやりとりを見て楽しんでいます。

それらのコンテンツは記事としてまとめて提携しているメディアにも配信することで、さらに拡散されていきます。」

STYLERを神南地区にあるセレクトショップで導入したところ、InstagramとWEARからの送客数は1ヶ月平均で20人程度だったのですが、STYLERではその10倍の送客を実現したという実績もあります。

導入した時期は秋物立ち上がりで天候も悪く苦戦しているタイミングであったにも関わらず、売り上げの22%がSTYLER経由で増えたそう。

今後日本でも徐々にコミュニケーションとコマースの距離が近づいていく可能性を感じます。

海外ではECとブランドサイトはわけないのが当たり前!?EコマースにおけるVMD開発とは

▲株式会社ブティックスター代表の高田氏

次に登壇したのはECの構築から運用までトータルに支援する株式会社ブティックスター代表の高田氏。

ECにおけるVMDの重要性についてお話しいただきました。

リアル店舗では専門家がおり、専門書なども多数出版されるほど当たり前になっているVMD。

しかしECではVMDに該当するWebデザイン分野がまだ成熟しきれていないと言います。

高田氏が語るVMDの専門家に必要な資質は以下の3つ。
①ファッションに対するセンスやトレンドの理解
②空間に対するセンス(=Webの世界に置き換えるとWebページの構造や設計)
③買い手の心理に対する知識と理解

Web上でこうした知識・スキルを持つ職種はUI・UXデザイナーにあたりますが、日本ではブランドサイトとECが別に存在していることもあり、優秀なデザイナーがECの方までデザイン面で入ってくることは少ないそう。

高田氏:「欧米ではトップブランドも含めてほとんどのブランドがブランドサイトとECサイトを統合されており、ブランドの世界観を体験してすぐに商品を購入できる仕組みになっています。

ユーザーから見ても1つのサイト上でコンテンツを楽しみつつそのまま買い物までできる方が断然便利ですし、事業者側から見てもページ遷移をはさまない分離脱が生じにくいというメリットがあります。」

近年SNSをはじめとするWeb接触時間が延び、ブランディングの主戦場がWebに移行しつつあることからECサイトがブランディングも担い始めているそう。

カテゴリ一覧を無機質な文字の羅列ではなく写真を使ってデザイン性をもたせたり、動画の活用、トップページ上でそのままカートにいれられるようにするといった海外事例を聞きながら、ユーザーが楽しみながら買い物できるデザインの重要性を改めて感じました。

▲Banner Barrett HP上のInstagramコンテンツ箇所。クリックするとInstagramではなく商品詳細ページに飛ぶ仕組みになっている。

また最近アパレルECのトップにInstagramのフィードを埋め込む手法も広がりを見せていますが、ただ埋め込むだけではInstagramのページにユーザーが流出してしまいます。

そこでBanner BarrettではトップページにInstagramを埋め込みつつ、独自のシステムを使ってクリックするとその商品の詳細ページに遷移するような仕組みを導入しています。

ブランド体験から購入までの高揚感を断ち切ることなく、スムーズに購入へ至るためのVMD開発は今後より重視されていきそうです。

サイズの不安を解消して、オンラインショッピングをもっと楽しく!

▲バーチャサイズ株式会社のアンドレアス氏

3人目の登壇はオンライン試着ツールVirtusizeのアンドレアス氏。

ECで買い物をする際に必ずつきまとうサイズ問題について語ります。

アパレル業界ではサイズが標準化されておらず、同じ”Mサイズ”でもブランドが異なると実際に着た時のサイズがあわないといったことが多々起こります。

そうしたサイズへの不安感がECでの購入を躊躇させる要因でもあります。

▲Virtusizeの利用イメージ

Virtusizeでは購入履歴やユーザーがサイズ登録をすることによって、EC上で買い物をする際に対象商品が手持ちの商品と比較してどのくらい近いサイズかがわかりやすいビジュアルで表現されます。

幅や長さだけではなく、袖の長さや首回りもパッと見たイラストで表現されるので、自分に合ったサイズかどうかだけではなく「丈が長めのものがほしい」「袖は短めが好き」といった細かい好みも反映することができます。

また現在のVirtusizeではユーザー個人を識別していませんが、今後はパーソナライズに力を入れていきたいと言います。

アンドレアス氏:「2017年1月にリリース予定なのですが、お気に入りの商品をもとにフィット優位でレコメンドされるサービスを展開予定です。

自分にぴったりの商品を選んでいただければ、サイズ感の近い商品から順に表示されるという仕組みです。

また今後はそうしたデータをもとに、ユーザーの好みを予測しておすすめの商品をメールマガジンで送るといった展開もできるようになると思います。」

アパレルECに常につきまとうサイズの問題を解決する手法として、今後のVirtusizeの展開に期待が高まります。

圧倒的な表現力と新たなストーリーテリングで「デジタルで態度変容を」

▲株式会社電通ダイレクトフォースの小川氏

最後に登壇したのはインタラクティブ動画の制作・配信プラットフォームEICHIを運営する電通ダイレクトフォースの小川氏。

日本でも徐々に事例が増えてきているインタラクティブ動画について、国内外の事例をベースにお話いただきました。

事例として紹介されたハリーウィンストン×ELLE ONLINEの動画では、シーンや気分を選ぶことでストーリーに分岐が発生し結末が変化するという試みで話題を生みました。

ハイクラスジュエリーのブランドイメージを保ちつつも、気軽にブランドに接してもらうための取り組みとして効果が高かったとのこと。

小川氏:「まだ各社実験的な取り組みの段階ではありますが、CMとの連動も徐々に増えてきています。

海外ではまるでドラマのような動画を見ながら、そこにでてくるアイテムをクリックするとカートに溜まっていきそのまま購入できるという仕組みを提供しているところもあります。

しかし、ただCMにコマース機能をつけただけでは購買につながらないので、ユーザーに響くコンテンツを作ることが重要になってくると思います。」

▲ハリーウィンストン×ELLE ONLINEのインタラクティブ動画例。 ※画像をクリックするとページへ遷移します(公開は2016年12月26日AM10時まで)

また紹介された中で特にユニークだったのはマイクロソフトが開発しているHoloLens(ホロレンズ)。

kinectの技術を利用して現実世界とバーチャル空間を融合して楽しめるものです。

現実世界をスキャニングすると、そこにARのように仮想データが現れるという全く新しい体験です。

小川氏:「HoloLensはまだ開発段階の技術なので一般的に普及するにはもう少し時間がかかるとは思いますが、一般化すれば業界全体に大きな変化が起きるのではないかと思います。

まだLINEが一般に普及する前にLINEスタンプの施策を導入したお菓子メーカーさんはその当時検索数・売上共に大きな効果があったのですが、現在同様の施策をしてもそこまでの結果を得るのは難しいものです。

こうした例からもわかるように、新しい取り組みを先行して実施するのは後から参入するよりも大きな効果を得やすいので、常にアンテナを張っておくことが重要だと思います。」

動画元年とも言われた2016年、これからの動画がアパレルECに及ぼす影響も徐々に大きくなっていきそうです。

海外から見た日本のアパレルEC業界の今とこれからのトレンド

イベント終盤は海外事例をメインにこれからのアパレルECについて語ります。

はじめに話題に上がったのは日本と海外の返品率の違い。

海外では返品を必ず受け入れなければならないという法律がある国もあり、ほとんどのブランドが返品ありきでビジネスモデルを構築しています。

そのため消費者も「まず買ってみて、合わないものは返品する」というスタンスなのだそう。

対して日本では文化的な背景からか返品率が低く、購入してもらうハードルが高い傾向にあると言います。

そういった点からも、購入前の不安を解消するバーチャルフィッティングサービスは日本においてより広がる可能性を秘めていそうです。

また今後のブランディングにおけるメディア接触について、日本では未だにテレビCMの威力は大きく、話題のWebサービスもテレビCMをきっかけに大きくユーザーを伸ばしたという実績が多々あります。

しかし海外、特に新興国ではテレビや雑誌などのマスメディアが整備される前にスマートフォンが普及したため、一番影響力が大きいのはFacebookやWeiboといったSNS上でのコンテンツなのだそうです。

最近では各SNSサービスも動画に力をいれており、中国ではテレビと同じようなコンテンツがWeibo上で展開されているとのこと。

日本でも若年層を中心にマスメディアへの接触時間が短くなっており、今後SNS上でのブランディング施策を考える上でそうした新興国の事例も注視していく必要がありそうです。

次々に新しいトレンドが生まれるアパレルEC業界。
2016年の動きを振り返りつつ、大枠のトレンドを押さえた上で来年以降の施策に反映していきましょう!