公開日:2024年9月16日
更新日:2024年9月18日

東京以外の全国のプライムエリア7つを解説

消費者や店舗側をはじめ、幅広い層からの注目と関心を集めるエリアが、「プライムエリア」。ポップアップストア出店の際にも押さえておきたいプライムエリアですが、耳にしたことはあってもその言葉の意味をご存じない方もいるでしょう。本記事ではプライムエリアの言葉の意味や概況、全国におけるプライムエリアを7カ所ご紹介します。

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1.プライムエリアとは?

プライムエリアとは、各エリアの中でもひときわ価値が高い土地や物件が集まっている地域を指す言葉です。元々は、不動産業界で使われていました。

プライムエリアの対象となるのは、都心部や交通アクセスが優れているうえ、商業施設やオフィスなども集まる場所。いわば各地において人やお店が一段と集まっている、群を抜いた繁華街や商業エリアといえるでしょう。

プライムエリアの物件は需要が高く、価格は比例して高い傾向があります。

2.プライムエリアの概況

1F賃料からもエリアの人気度が伺えるのが、プライムエリア。2023年における、日本の13エリアの1F賃料ランキングは次の通りです。

<13エリアの1F賃料ランキング>

(円/坪・月)

順位エリア23年上半期23年下半期前期比
1銀座¥72,500¥68,00095%
2渋谷¥55,500¥60,500109%
3表参道¥53,700¥57,800108%
4新宿¥53,600¥48,10090%
5心斎橋¥35,300¥39,400112%
6池袋¥38,600¥37,80098%
7横浜¥35,300¥35,700101%
8仙台¥28,200¥28,400101%
9京都¥24,300¥25,200104%
10名古屋¥23,700¥25,100106%
11神戸¥27,200¥24,70091%
12福岡¥25,000¥21,90088%
13札幌¥20,400¥21,200104%

13エリアの23年下半期のランキングでは、東京以外のプライムエリアとして5位の心斎橋がランクイン。前回の6位から順位を上げ、東京のプライムエリアに割って入った形となっています。

全国のプライムエリアでは京都と名古屋が順位を上げたものの、神戸と福岡は順位がダウンしました。

各エリアの好調さの理由の一つが、インバウンドの存在です。2023年はインバウンドが大きく回復したことで、訪日客の旅行消費額は過去最高となりました。以前のようにドラッグストアでの爆買いは起きていないものの、訪日客に人気の商品を扱っている店舗の売上が伸びており、インバウンド客をターゲットにした店舗が増えているのが現状です。

中でもラグジュアリーブランドに関しては、販売価格が値上げしたことで国内の中間層の消費は勢いがやや落ちているものの、円安の影響でインバウンド客による消費は増加。各地のプライムエリアでも、ラグジュアリーブランドが出店しているストリートの出店需要が伸び、動きが活発になっています。

その他にも、各プライムエリアでは長らく空室だった区画に新たな出店が進んでいたり、景気が回復していたりするエリアも見られます。

3.全国のプライムエリア

横浜(神奈川)

横浜は、駅・地下街に接続する大型の商業施設が大きな存在感を放つエリア。2020年6月に開業したニュウマンやシアルなどにより、駅周辺に一層商業施設が集まっています。

2023年12月には、ダイエー横浜西口店があった場所にCeeU Yokohamaがオープン。隣接したVIVREは路面店のように展開するユニクロもあり、横浜の新しい集客核として期待を集めています。

新しく開業した商業施設だけでなく、従来から営業を続けている百貨店も立ち並ぶのが横浜です。ルミネ横浜とジョイナス(高島屋は除外)は、売り上げが2023年には19年比97%ほどまで回復。ジョイナスは衣料品に比べて飲食店の戻りが良く、ルミネ横浜店は飲食店よりも衣料品が戻ってきておりファッション専門ビルとしての強みを見せています。

2019年を超える水準まで回復した高島屋横浜店と、2019年の98%まで盛り返してきたそごう横浜店は、両店舗ともラグジュアリーブランドの展開が好調。高島屋横浜店とそごう横浜店ともに、2023年度も堅調な推移が続いています。

横浜は今後、各大型商業施設の売り上げ回復が見込まれているエリア。インバウンド客は他のエリアと比べて少ないものの、国内客を中心に売り上げを見せています。観光エリアであるみなとみらい地区では、新高島駅の近隣にあるKアリーナの好調さや2024年に開業の横浜シンフォステージ、リニューアルオープンの横浜美術館なども予定しており、客数が一層戻ると予想されます。

心斎橋(大阪)

心斎橋のエリア内にある、西のブランドストリートとして名高い御堂筋は、ラグジュアリーブランドをメインに活発な動きを見せています。御堂筋はプライムエリアが短いながらも、ラグジュアリーブランドブランドの出店が競合・加熱しているのが特徴的です。

御堂筋の東側で心斎橋の集客の核となっている心斎橋筋商店街・道頓堀の周辺では、インバウンドの回復に伴い再度ドラッグストアの出店が競合。心斎橋北商店街から心斎橋筋商店街においては、短期間にマツモトキヨシが3店舗出店しました。

ドラッグストア以外にも、再出店したユニクロやナイキ心斎橋店、リユースを行うALLUが開業し、出店が活発に行われています。

心斎橋は今後もインバウンドが一層増加する見込みがあり、新規の出店も加速すると予想されているエリアです。

四条河原町(京都)

京都の四条河原町はインバウンドの増加に伴い出店に勢いが出ており、四条通を中心に客数が増加。プライムエリアとなる四条通には大丸と高島屋の百貨店が存在し、両施設を結ぶ通りには数々の店舗が立ち並びます。

通りには23年7月にチャールズ&キースが、10月にはアルマーニが開業しました。インバウンドをターゲットに、ラグジュアリーブランドや時計、シューズのお店が出店しています。

コロナ禍が払拭された京都には訪日観光客が押し寄せており、今後も更なる増加が予想。京都においてもインバウンド対応の出店に、勢いがあります。

京都は国内外における観光客の消費が好調な反面、増え過ぎた観光客によるオーバーツーリズムの問題が深刻化している点は、気掛かりな点です。四条河原町の売り上げは、円安を背景に外国人観光客の消費によって好調に推移。

コロナ禍の期間はメイン通りには空き店舗がありましたが、現在は観光客をターゲットにした店舗の出店が続いていることに加えて、富裕層向けのラグジュアリーブランドの新規出店もしています。

その他にも新京極通や寺町通において飲食店や古着店などの出店が見られ、飲食やファッションの売り上げも好調です。売り上げにおける外国人観光客の割合も高まっています。

エリア内にある京都高島屋では、増床したT8の開業や大丸京都店のレストランフロアが改装するなど、百貨店内での投資を積極的に実施。新たに加わったT8では任天堂オフィシャルストアをはじめ数々のカルチャー系の店舗が出店し、既存の店舗との相乗効果により客足が増えています。百貨店の集客力の向上により、四条河原町エリアの一層の活性化が期待されています。

三宮(神戸)

三宮は関西の中でも屈指の商業エリア。神戸阪急や丸井といった百貨店が立ち並ぶ三宮駅前や、三宮センター街をはじめとしたアーケード街、ラグジュアリーブランドの路面店が数多く並ぶ旧居留地で構成されているプライムエリアです。

ラグジュアリーブランドの店舗は大丸付近に移転が続いており、昨今では大丸近隣のポテンシャルが高まっています。三宮エリアはインバウンドの影響が限られているため、売り上げが上昇傾向にある大丸は、地元の富裕層から強い支持を受けているといえるでしょう。

神戸阪急は大型リニューアルが2023年10月に完了したことで、リニューアルの効果もあって大丸同様に売上が上昇傾向です。2023年12月には、神戸阪急の新館にロエベがオープンしました。

大丸周辺へのラグジュアリーブランドの移転と神戸阪急のリニューアルにより、一層のラグジュアリーブランドの集積が進む三宮。両百貨店の売り上げは上昇傾向にあるものの、競合関係にあるため今後の動向に注目が集まっています。

百貨店以外の話題としては、三宮センター街の周辺に中古リユース系の店舗やドラッグストア、カプセルトイの専門店なども出店。各地で賑わいを見せているのが三宮です。

天神(福岡)

天神駅と西鉄福岡駅を中心に、東西にかけて大型の商業施設が集まっているのが天神。駅の東側には大丸が、駅の西側にはパルコや岩田屋本館・新館、 ソラリアプラザなどの商業施設が立ち並びます。

駅の西側には路面店が集まった天神西通りや大名エリア、 天神2丁目エリアがあるのが特徴。中でも天神西通りはアップルストアやZARAといった名だたるブランドの路面店が集まっており、ポテンシャルが最も高いストリートとなっています。

天神西通りは一部の区画では空室が長引いているものの、近々ではインバウンド客をターゲットにした業態が出店しており、空き区画の消化が進行。路面店はコロナ前の賃料水準に回復しています。

岩田屋三越は、富裕層のインバウンド向けの時計や宝飾品などの高額商品による売り上げが好調。ソラリアプラザは2023年の売り上げが2019年比で13%増えており、コロナ以前の水準を上回っている状況です。

インバウンド需要が拡大するにつれて、天神における大型の商業施設の売り上げは軒並み好調となっています。

天神のインバウンドは中国市場がコロナ禍以前の水準に回復していないものの、台湾や香港市場、欧州豪市場はコロナ禍以前の水準を上回っており、今後も更なる増加が予想。また、天神では先進的なビルに建て替えが進む天神ビックバンにより、2023年4月に開業した福岡大名ガーデンシティの商業部分に加えて、パルコを含む複数のビルの建替計画も予定しており、一層の商業集積が見込まれています。

大通(北海道)

大通は、札幌市内において札幌駅前の地区と双璧をなすエリア。三越や丸井今井をはじめとした百貨店以外にも、パルコをはじめファッションビルも並ぶ商業集積地区です。

市内の中心地ともいえる大通は、冬場の雪の影響を受けない地下街が発達。地下の歩行空間から出入りができる店舗や地下の歩行空間に面する店舗の新規賃料が、路面店以上に高水準になっているところもあります。

大通を含めた札幌中心部は、道内・国内観光客・インバウンドの消費の受皿として機能してきた地域。コロナ禍では影響を強く受けて苦戦を強いられていましたが、コロナ禍の収束により2023年上期における札幌市内への入込観光客数がおよそ950万人となり、コロナ禍前の2019年同期比マイナス2%まで回復してきています。

同様にエリア内の百貨店売り上げも回復しており、2023年の売上総額はおよそ1,479億円。2019年と比べて、およそ93%まで回復しています。

大通は再開発事業により、大型の商業施設の閉館や新施設の開業が続いているのも特徴。他方で、全国的な建設工事費の高騰に加えて、北海道の千歳市における半導体工場の建設など道内の大型工事の影響から開業が延期になる施設もあり、計画の見直しをする動きも見られます。

仙台(宮城)

宮城県のプライムエリアである仙台は、次の3つのエリアで構成されています。仙台駅に直結する駅ビルとペデストリアンデッキでつながった大型商業施設の周辺エリアと商店街エリア、そして駅と商店街を結ぶ通りのエリアです。

駅の東口には2023年6月にヨドバシ仙台第1ビルが開業し、ヨドバシカメラをメインにさまざまな店舗が出店。同じくヨドバシ仙台第2ビルにも石井スポーツやロピア、マツモトキヨシといった数々のお店が出店しており、賑わいを見せています。

仙台駅にはtekuteせんだいが2024年3月に誕生し、駅周辺への出店も続いている状況です。

駅の西口にあったEDENは2024年1月に閉館し、商店街方面にあった仙台フォーラスは2024年3月から休業に入っており、入居していた店舗は商店街や駅周辺へと移転しています。

商店街の空室は駅との競合やコロナの影響で2021年に増加したものの、最近は空室が減少傾向に。飲食店が全体的に増加し、物販においては古着屋が多数出店しています。

今後の仙台エリアは、商店街であるぶらんど~むに医療モールが2025年7月に開業予定。その他にも、電力ビルを解体してツインタワーを建設する計画もあり、長期的に見ると更なる活性化が見込まれています。

4.まとめ

各エリアの中でも商業施設や路面店が集まり、人も賑わうのがプライムエリアです。ポップアップストアの出店には、プライムエリアの現状や今後の動向を把握しておく必要もあるでしょう。

本記事を参考に、全国各地のプライムエリアへの出店を検討してみてはいかがでしょうか。

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