日本でもポップアップストアが多数出店されるようになり、「ポップアップストア元年」と言われた2015年。この記事では、そんな2015年にどのようなショップが生まれ、何が流行したのかをまとめ、今後のポップアップストアの展望を考察します。
ポップアップストア元年と呼ばれた2015年では、大小様々なポップアップストアが開催されてきました。
そこでこの記事では、2015年のポップアップストア事情を改めてまとめ、2016年以降への展望を考察します。
▲2015年大きな話題となったFENDIポップアップストア。
画像出典:FENDI 公式HP
2015年を象徴するポップアップストアといえば、2015年11月20日に銀座にオープンし大きな話題を呼んだFENDIのポップアップストアが記憶に新しいのではないでしょうか。
日本上陸50周年を記念してオープンした同店舗は3フロア構成となっており、国内初のメンズとウィメンズの複合店舗となる巨大ポップアップストアとして、FENDIの世界観を多くの人に伝えました。
これ以外にも表参道や渋谷・新宿の商業施設を中心にハイブランドやモードファッションブランドのポップアップストアが相次いで開催しました。
毎日どこかしらの「ポップアップストア開催」のニュースが届くほど、ポップアップストアの話題が増えた年であったといえます。
ファッションブランドはこれまでも「期間限定店舗」というかたちで商業施設を中心に出店してきた歴史があります。
しかし、「ポップアップストア」と言い換えることでキャッチーさがでて話題にのぼりやすいことや、近年ファストファッションやフリマアプリの台頭により若者を中心にハイブランド離れが起きていることから、ブランドへの接触を増やすために出店が増えたことが、ポップアップストア出店機運の高まりを後押ししているものと思われます。
▲建物を丸ごとギフトボックスに見立てた装飾が表参道でも一際目を引く。
画像出典:OLD NAVY POP-UP SHOP特設ページ
2015年のポップアップストアの傾向として、雑誌をはじめとしたメディアが編集するポップアップストアも多く見られました。
2015年12月に原宿でオープンしたViVi×OLD NAVYのコラボや装苑がパルコの自主編集ショップ「ミツカルストア」で開催したポップアップストア、リンネルがBEAMSと組んだ限定ストアなどそれぞれの雑誌が持つ企画・編集力を武器にブランドや商業施設と組んだ事例が多くありました。
雑誌離れが叫ばれ年々発行部数が落ちていく中で雑誌名を冠したECサイトや雑誌上の通販は堅調に伸びていることからも、雑誌の企画・編集力はまだまだ根強く支持されていることがわかります。
各社共に従来のビジネスモデルから脱した収益源を模索している今、来年以降も様々な雑誌×アパレルブランドがコラボしたポップアップストアの開催は増えていくものと思われます。
▲9月に開催されたWEEKEND BASEには全国5箇所で250店舗以上が参加
すでに実店舗をもっているブランドだけではなく、オンラインショップを主軸にしたブランドの間でも徐々にリアルショップの出店が増加しています。
以前LibraryのSUCCESS STORYでもご紹介したWEEKEND BASEや3杯のコーヒーと北欧の絵本展は、どちらもオンラインショップを中心としたブランドが集まったマーケットイベントです。
これまでは実店舗をもたずにオンラインだけで販売している商品に対して「信頼がおけない」「チープな感じがする」というイメージがありました。しかし、近年のEコマース市場全体の成熟や、品質の高いハンドメイド商品のブームによって、実店舗をもたなくても多くのファンがつくブランドやハンドメイド作家が増えてきたという背景があります。
そのような中で、「より多くの人に知ってもらいたい」、「いつも購入してくださるお客様と実際に会って話してみたい」という、販売側のニーズも高まってきています。
シンプルで丁寧な暮らしやストーリーのある商品が求められる中で、こういった小さな事業者がお客様とじっくり向き合い強固なコミュニティを築いていく場としても今後ポップアップストアのニーズが高まることが予想されます。
▲コラボ商品も話題になったブルーボトルコーヒーの自由が丘でのポップアップストア。
画像出典:blue bottle coffee公式HP
ポップアップストア開催の際に販売のみではなく“体験”してもらうことをテーマにおいた店舗も多くありました。
特に飲食とのコラボは気軽に購入・飲食できる価格帯のものが多く、お店への滞留時間を延ばすことができるため、「コラボカフェ」というかたちで銘打った企画でなくとも、多くのポップアップストアで取り入れられていたようです。
その中でも特に2015年に話題になったのは、ブルーボトルコーヒーの自由が丘でのポップアップストア。
看板メニューであるコーヒーはもちろん、開催場所であるToday’s Specialとコラボした数量限定アイテムや、ここでしか飲めないコーヒーの提供など、「行きたい」と思わせる仕掛けが施されていました。
その他、原宿の東急プラザで開催されたジルスチュアートカフェや、表参道のQ-Potで開催されたセーラームーンとのコラボカフェなど、若い女性をターゲットにした期間限定のショップも行われました。
特に銀座エリアや表参道エリアはカフェ需要が大きいため、ブランドの世界観と合うコラボ先をいかにうまく見つけられるかという点が、ポップアップストア成功のためのポイントになりそうです。
2015年に開催されたポップアップストアの傾向を見てみると、購入よりも“体験”や”世界観を知ってもらう”ことに重きを置いた出店が多かった印象を受けます。
その背景には、Eコマース市場の過酷な競争が見受けられます。成長業界いわれるEコマース業界といえど、アパレルECと呼ばれるファッション関連のEコマースだけで見れば、Eコマース業界全体の9%、たった1.3兆円の市場です。その中で、数多くのアパレル業者だけでなく、個人の作家などがお客様を取り合っている現状があります。
際限なく増えていく他ブランドのEコマースサイトはもちろん、2015年大きな台頭を見せたメルカリなどのフリマアプリやファストファッションと、競争相手もどんどん増えています。
その中で、自分たちのブランドがお客様と強固なつながりを作っていくためには、Eコマースとリアル店舗との連動は不可欠です
そのため今後は、より充実したブランド体験をプロデュースするために、ポップアップストアをはじめとするリアルショップではショールーミングに特化し、販売はEコマースサイトに誘導するといった流れも加速していきそうです。
そういった実験的な店舗やAR、人工知能などの新しいテクノロジーを取り入れた店舗を、気軽に出店できるのもポップアップストアの魅力です。
全国的に様々なポップアップストアが開催され、注目された”ポップアップストア元年”の2015年。そこからさらに加速するであろう2016年以降の、新しいポップアップストアの動向に期待が高まります。
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