公開日:2023年11月20日
更新日:2024年2月22日

年商5,000万~1億円を目指すアパレル企業向け成長施策ディスカッション

2023年10月に開催されたカウンターワークス × オープンロジ × フィードフォースの3社合同セミナーで、「年商5,000万~1億円を目指すアパレル企業をモデルケースに考える成長施策」をテーマに具体的な事例を交えながら、施策のポイントについてディスカッションされた内容をレポートいたします。

 ブランドが継続した事業成長を図っていくためには、自社の事業フェーズに合わせて適切な投資や業務効率化を行っていく必要があります。しかし、実際の事業運営においては、「次にどのような手を打ったらいいかわからない」「周りはどのようなことをやっているのだろうか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

今回のディスカッションでは、下記に記載する状況のモデル企業を設定。

・D2Cで自社ブランドを立ち上げたアパレル企業
・商品単価:10,000~15,000円
・年商1,000万円程度の売上がある
・メインの顧客層: 20~30代の女性、ルミネでよくお買い物される
・自社サイト、自社SNSのみで運営、実店舗やECモールに出店していない
・自社倉庫があり、自分で発送している


 出店戦略・物流・CRMの観点から、「年商5,000万円(平均月商420万円)」、「年商1億円(平均月商830万円)」といった目指す年商フェーズに合わせ、取るべき成長戦略について、各領域に精通した事業担当者3名が「自分だったらどういう話をするか?」というテーマで議論しました。

目次

1.年商1,000万円の事業者が年商5,000万円を目指すフェーズの場合
 Omni Hub 井形パート
 SHOPCOUNTER 中原パート
 OPEN LOGI 篠原パート
2.年商5,000万円の事業者が年商1億円を目指すフェーズの場合
 SHOPCOUNTER 中原パート
 Omni Hub 井形パート
 OPEN LOGI 篠原パート
3.まとめ

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1.年商1,000万円の事業者が年商5,000万円を目指すフェーズの場合

 年商1,000万円となるとブランドオーナーと直接の知人以外にもお客様が増えてくる段階ですが、一方でお客様の顔も見えづらくなってくると思います。こういった段階でのお客様との関係性づくりについて、Omni Hub事業責任者を務める井形 岳史氏に紹介いただきました。

Omni Hub 井形
 「この規模であればまだ購入客は“友達の友達”のような距離感で収まっている状態。ですので、CRMに投資をするより、そういった距離感の方々といかに親しみをもって繋がれるか、またはインタビューや投稿しているSNSを通じて生活実態などを、あまりコストをかけずに探っていくのが重要です。そこで把握した共通点を、SNSで発信するハッシュタグに反映することで、同様のお客様にも新規アプローチできるのではないでしょうか。

 個人的なおすすめとしては月商300万円を超えてくると、メルマガ配信やLINEなどを使った関係性の構築のほか、Web広告へのチャレンジをおすすめします。ある程度のトラフィックがないと、広告配信をしてもムダ打ちというか、それ以上は何も分からないというリスクも発生します。

株式会社フィードフォース
Omni Hub事業責任者
井形 岳史

2016年に株式会社フィードフォースに新卒入社後、自社サービスの広告代理店向けセールス担当として従事。その後、Googleショッピング自動運用サービス「EC Booster」のカスタマーサクセスを経て、Shopifyを活用した新規事業開発を担当。Shopify・スマレジ会員連携OMO支援アプリ「Omni Hub」のローンチに伴い、本アプリの事業責任者を務める。「いちばんやさしいShopifyの教本」共同執筆者。


 続いて、カウンターワークスのマーケティング担当・中原 祐一郎氏に、ブランドの既存顧客と接触機会を設ける上でポップアップストアに出店するとなった場合、年商1,000万円の規模だと、どういった場所を選ぶべきか解説してもらいました。

SHOPCOUNTER 中原
 「ポップアップストアと聞いて一番イメージしやすい出店場所は百貨店やショッピングセンターといった『商業施設』だと思います。アパレル系の会社さまだと伊勢丹やルミネ、食品系だとデパ地下。そこに出店できるのが第1希望だと思うのですが、皆さん同じことを考えているため、出展に向けた競争率も高く、賃料も高い。仕入れの予測を見誤ると在庫リスクも生まれてしまう。
 ポップアップストア出店においては、売上+什器も含めた出店コストをできるだけ抑えることが肝になります。初期のポップアップストア出店で売上と出店コスト双方のバランスを取りやすいスペース例を挙げると、商店街の空き区画。自由が丘のこちらのスペースなどは最低で5,000円/日から出店可能で、什器なども無償で貸し出してもらえます。

 コスト以外にも不安なポイントは、集客面。そこについては“マルシェ”という複数店舗が出店することで集客効果を担保するイベントの一角を使うのも良いでしょう。例えば、SHOPCOUNTERだと新宿のサザンテラス前、大手町のオフィスビル内でのマルシェなどは5,000円〜10,000円台/日で出店募集をされています。そういったところで着実に実績を作っていくことが肝要です。

 また穴場でいうとホテルのロビー。通行量は多くないものの、ホテルにチェックインした方はその後、ご飯に行く以外の用事がそこまでないです。商品を見てもらったり、接客を受けてもらう時間はそれなりに確保しやすいです。例えば、セミオーダーのジュエリーなど、きちんと見てもらうことで商品理解を深めさせ、当日購入に至らなくとも、送料無料クーポンなど付けることで次のアクションに繋げることもできます。

株式会社カウンターワークス
プラットフォーム事業部・マーケティング担当
中原 祐一郎

EC運営会社にてイベントスペース併設型の実店舗の立ち上げ、運営に従事。
その後、経営企画を中心に広報・事業開発業務を経て、現在はカウンターワークスにて、出店効果の最大化に向けた各種プロジェクトを担当。

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 最後に、オープンロジ パートナーセールス エキスパートの篠原 良隆氏に、どのくらいの売上規模になれば、発送業務の外注や保管倉庫のレンタルを視野に入れれば良いか伺いました。

OPEN LOGI 篠原
 「年商1,000万円のレベルであれば、日に3オーダー分くらいの配送なので(商品単価1万円前提)、ロジを使わず内製でも十分です。それ自体まずくはないのですが、2つの視点を気づきとしてお伝えします。

 まず、売上に対して自分たちの物流費用(人件費含め)がどれくらい掛かっているかを把握すること。今回のモデル企業だと原価をそれなりに抑えているでしょうから、適正値は2割くらい。これを超えると成り立たなくなるので、可視化できる体制を取ったほうが良いです。

 委託する場合、物流費用は「入庫、保管、配送」それぞれの内訳をきちんと把握できるのですが、自分たちでやるとそこに人件費が加わり、正確な数字が一気に見えなくなります。

 もうひとつの大事な視点である『業務効率化』について。人員が少ないD2Cであれば、初期段階から物流という業務を自分たちから外したほうが良いでしょう。年商1,000〜5,000万円は自分たちの商品軸が定まってないフェーズなので、単純作業である物流業務にリソースを割くのではなく、ブランド拡大に必要な商品企画や販売に人的コストをかけるべきです。選択と集中をすることで年商5,000万円といった目的への到達スピードが上がるのではないでしょうか。」

株式会社オープンロジ 
パートナーセールス エキスパート
篠原 良隆

2020年12月にオープンロジ入社。入社後パートナーマーケチームの立上げに従事し、現在に至る。主に、Shopifyのエコシステム内のShopifyApp事業者とのパートナーシップを担当している。


2.年商5,000万円の事業者が年商1億円を目指すフェーズの場合

 続いて2つめのケーススタディである年商5,000万円から1億円を目指す企業の場合、出店戦略にも何か違いがあるのでしょうか? カウンターワークスの中原さんにお聞きしました。

SHOPCOUNTER 中原
 「2つの方向性があると思ってます。1つ目は常設店舗を出すことを目標にする。1、2年の期間で出店しても一定の売上を維持できる常設店舗にするためのターゲティングや立地条件を探るテストマーケティング。それに向けたポップアップストア出店です。
 直近だと元AKB48で現在“Her lip to”というブランドを展開する小嶋陽菜さんの事例がそれに類します。弊社サービスも利用して、表参道や代官山でポップアップストアを実施されていました。その数ヶ月後、表参道で常設店舗をオープンし、新商品をリリースする旗艦店としてはもちろん、小嶋さんが店頭に立って話題性を作るリアルメディアとしても機能していました。

 もう1つは、年間を通して一定頻度(例えば月に1回)のポップアップストアの出店計画をもとに実行していく。年商5,000万円を超えるとECでのペルソナ像ができあがっていると思うのですが、一方でECでは買わない“リアル”なシーンでの顧客を捕まえていくのも重要です。」

SHOPCOUNTERを活用した出店フロー

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 店舗を持った場合におけるこれまでECで接点を持ったお客様の情報管理や関係性づくりの違いについて、フィードフォースの井形氏は次のように言及しました。

Omni Hub 井形
 「一般的に店舗の場合、密なコミュニケーションや体験価値は提供できても、顧客ごとの詳細な購買情報がECと比べて取得しにくいです。同じ会員として登録されていても、リアルの方はECで蓄積されるデータと比較して不公平感が存在していました。そこで当社ツールを使って実施したあるスイーツブランドでは、リアルとECの会員データを一元化し、「ポイント発行×ステージ制」という特典を設けて、店舗来店時にスペシャルドリンクの提供を受けられる取り組みをしました。

 店舗でもECでもリピートしやすく、どちらに行ってもポイントが使えて、共通のサービス特典を受けられるというのは、最近だと、大手のアパレルショップでも当たり前のように取り組んでいるので、年商1億円を超えるあたりでは、同様の体制を整えておく必要があるでしょう。

 また同時に、このタイミングで顧客とどう接していきたいかも考えておきたいですね。ある程度、リピートしてくれる顧客が重要になる中、全ての会員に同じサービスを提供するのでなく、どの顧客を大事にするのか? ある種“えこ贔屓”のような差分をつけることが、顧客の体験価値を上げ、LTVを伸ばすことに繋がるのではないかと思います。」


 販売チャネルが複雑になり、取り扱う商品数も増えてくるタイミングだと、在庫管理や配送関連のトラブルなどにどう向き合うべきなのか? オープンロジの篠原氏からは、「商品到着時の体験デザイン」、「コストダウンの重要性」、「盤石な物流体制」の3点について事例を交えて説明いただきました。

OPEN LOGI 篠原
 「D2Cブランドとして、商品がお客様の手元に届いた時にどういう価値提供をしたいのかを考えるいい機会でもあります。さきほど中原さん・井形さんも“オフライン・タッチ”の話をしていましたが、実は物流でもそれは実現できます。

 分かりやすいのが同梱施策。チラシやパンフレットなどを使って、いかに感動させて、次の購入にいかに繋げるかを、物流シーンで散りばめていくのです。
具体的には、自分たちでこだわってデザインした箱やパッケージを作る。これによって、ファンになる度合いが全く異なり、次の購買につながるどころか、場合によってはSNSでシェアまでしてくれる場合もあります。このように商品が届いた時の体験デザインは物流にしかできません。

 また、年商1,000万円の時と比べると、物流費が可視化できるようになり、コストダウンへの要望も出てきます。使ってる配送業者が自分たちの事業にとって適正値になっているかシビアに見出しはじめます。気づかないうちに売上の3割になる会社などは相当に経営を圧迫するでしょう。

キャンペーンを打つときにも課題は生まれてきます。例えば、ECでフラッシュセールを期間限定でやった場合、オーダーが集中します。そうなると今度は配送ができなくなる。急いで梱包すると、入れ間違えや箱の破損などの事故が起きます。そういう課題の根本原因は物流波動なんです。フロント側のトラブルであれば、API連携して解決できたとしても、物流の場合は、人が関わるのでそうはいきません。通常の100倍のオーダーが来ると全く対応ができなくなります。
 このくらいの規模になると、仕掛けるキャンペーンに対して、どのくらいのオーダー数になって、どういう物流体制を作るかを真剣に考えないと年商1億円を達成するまでのスピード感も大きく変わってきます。」


3.まとめ

 3社の観点から、アパレル企業の成長戦略について講演いただきました。当日は開催後に登壇者・参加者を含めた簡単な懇親会を開催しましたが、より具体的な悩み相談や、参加者同士の意見交換が活発に行われました。
今後もカウンターワークスではこのようなセミナーを企画してまいります。

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