公開日:2019年11月28日
更新日:2023年11月30日

CX DIVE AKI 2019「熱量あるブランドづくりで、極上の体験をつくる」セッションレポート

CX(顧客体験)について議論するイベント「CX DIVE」。今回はその2019年秋版、「CX DIVE AKI 2019」にお邪魔してきました!イベント内の「熱量あるブランドづくりで、極上の体験をつくる」というセッションのレポートをご紹介します。

ご覧の方の中には、ブランドの作り方に悩む方も多いのではないでしょうか。
先日行われた「CX DIVE AKI 2019」は顧客体験について議論するイベントです。
今回、こちらのイベントの一部のセッションにて、
ブランド作りのヒントを聴いてきました!
ぜひ、ブランド作りのヒントとして参考にしていただければ幸いです。

今回のセッションの登壇者は、それぞれに濃いファンを獲得し続けているブランド3社にモデレータ1社。
株式会社スマイルズ取締役 野崎亙さん
株式会社Clear代表取締役CEO 生駒龍史さん
株式会社BAKEチーフクリエイティブディレクター 貞清誠治さん
株式会社オールユアーズ代表取締役 木村昌史さん
上記4名のセッションでした。

トークセッションは、新規ブランドの立ち上げ時の話からスタートしました。
まずは、オールユアーズ木村さんが投げかけます。

「新規ブランドを開発する上で、インスピレーションを得ているものとは?」

木村さん:最初に聞きたいのが、新規業態や新規ブランドをつくる上で、(製品への想いとかでもいいんですが、)インスピレーションを得ているものってありますか?

最初にマイクを取ったのは、株式会社Clear代表取締役の生駒さん。sake100は“100年誇れる一本を”というコンセプトのもとに立ち上がった、高級路線の日本酒ブランドです。日本酒のブランドを立ち上げた経緯は、実際に蔵を巡って得た構想とのことでした。

生駒さん:そもそも日本酒の業界課題として価格がめちゃくちゃ安かったんです。蔵を巡る中で、もう少し高く売れればこれを試したい、みたいな話も結構耳にし、金額という蓋さえなければ…という話を多く聞きました。

そこで、僕らはブランドとして、本当に地道に蔵を巡ったりして、業界に深く入り込むことで、日本酒の高付加価値マーケットのポテンシャルを感じ、そこに事業の着想を得ています。あとは、もっと出会ったことのない日本酒の価値に出会いたい、という欲が自分の中にありますね。

株式会社BAKEは“お菓子を進化させる”をコンセプトに、現在6ブランドを展開している、お菓子の作り方全てに本気で向き合う企業です。彼らの場合は創業者の「できたてケーキ」の原体験がベースのようです。

貞清さん:弊社は社長がお菓子屋さんの息子だった、と言うところから創業しました。社長は子供の頃から工場に通っていたので、その時のできたてのケーキの美味しさを世に広めたい、という原体験から始まっています。そのため、初めはSKU絞って、できたてを食べてもらいたい、という部分が一番伝わるようにしていて、そこからスタートしていますね。今も事業を考える時はそのテーマが基本ではありますが、昔よりも「色んなことをやってみようよ」となってきています。

前の2社と同じようで違う、と語ったのは株式会社スマイルズ取締役の野崎さん。野崎さんはスマイルズでは、基本的にはマーケティングをせず、“これまでの経験の中にヒントと可能性がある”と話します。

野崎さん:会社のテーマが“世の中の体温を上げる”なので、そのテーマに沿うものであれば、何でもやっていきたいと思っています。 自分の欲しいものを作ろう、という発想があって、基本的に答えは自分の後ろ側にあると思っています。これまでの経験の中にヒントも可能性もあると考えています。

あと、見たことない業態を作ることはまずないです。例えば、僕の初めての外食は「シャロン」というファミレスだったんです。今のファミレスには少なくなってきた、その時のちょっとカッコつけたような家族の時間をもう一度戻してみたらどうだろう、というところから100本のスプーンができる、といった形です。

「ブランド作りで人格を作る意味ってなんなんですかね? 」

ブランドを作る上で欠かせないのが、ブランドの“人格”。そのブランドがユーザーからどのような見られ方をするのか、そのキャラクターはどのような振る舞いをするのか。それらを決めてきた彼らに投げかけられた、「人格を作る意味」という質問。Clear生駒さんはとにかく人格の解像度を上げていき、社内に対して共通認識を持つために、決めていると話しました。

生駒さん:sake100というブランドはどういう人格を持っているのか、その解像度を徹底的に上げています。ブランドの360°、どこを切ってもブランドの哲学が透けて見えることが大事だと考えています。
今は少人数なのでいいのですが、人が増えた際に、sake100はこうあるべきだよね、というのを共通認識するために人格設定やwho we are?を考えています。これらは僕らがどうかって話なので、外にはあまり出してなくて、お客様には商品やサービスでそれらが反映されていればいい。

一方、スマイルズ野崎さんは比較的長期での目線で、ブランドの人格についてコメント。2000年創業という他の3社よりも歴が長いからこそ、最低限の人格ではなく、柔軟な対応のために、人格を定めて、ブランドを“独り歩き”させる、と話します。

野崎さん:ブランドエクイティを決めたときに、そのブランドが長く続くと「こうなってればいい」みたいな観点になるときがあるんですよね。そのリスクを回避するため、柔軟に対応できるように人格設定をしています。ブランドを独り歩きさせるために、人格を設定している感じです。
例えば、スープストックは誠実な印象が強いですが、人格的には遊び心があります。3,4年前にカレーを盛り上げたい、という話から、1日のみカレーだけのメニューになる、「カレーストックトーキョー」を始めたんです。側から見たら誠実そう、お高く止まってる、というイメージだったが、そうではなく、「楽しむ時は楽しむ」という人格設定があったからこそ、この施策が走っていますね。

1日限定のカレーストックトーキョー

ブランドを独り歩きさせるように

各社の人格設定の意味の話を受け、木村さんはその人格が意思決定にどのように効いているかを問いかけます。

木村さん:人格が決まってる時、やってることと実際直面している問題との乖離があると思うんですけど、人格から答えを弾き出すこともありますか?

野崎さん:人格は縛りではないと考えています。ブランディングの枠組みは可能性を犠牲にしている部分もあるかなと思います。僕らは人数も多いので、それぞれがそれぞれで思う人格、例えば、あなたがスープストックさんだったらどう行動するか、という解釈を大事にしている節があります。
その際には各人のパーソナリティも入ってくるのですが、その意味でも独り歩き、という言い方をしてます。当然失敗していることもありますが、可能性を見ていっている感じですね。

貞清さん:僕らはようやく幼少期が終わって、次のフェーズに入った感じがありますね。みんなが能動的に人格を作り上げていく、という感覚は良さそうな印象です。
例えば、コムデギャルソンさんとかはブランドのキャラクターに色んな面があると思っていて、年配の店員さんと若者が共存している感じがします。ブランドの多面性があるというか。あのような在り方は素敵だな、と思いますね。

一方、Clear生駒さんはこれらは“フェーズの問題”、という意見。まだ幼少期であるから、激烈な印象をつけていくことが必要、と語ります。

生駒さん:完全にフェーズの問題だな、という印象があります。僕はゆらぎがあることが怖いんです。なので、今は選択肢の幅をあえて減らしていて、一つ強烈な印象、一本の筋を作っているところです。 その結果、お客様から知る僕らがどうなのか、という部分を考えて再設計していく。そういうフローがいいのではと考えています。

続けて、生駒さんから野崎さんに対して「フェーズが変わったことは明確に分かるものですか?」という問いが。これに野崎さんはコミュニティとして排他的にならないギリギリを狙う、と語ります。

野崎さん:僕らはお客さんの期待値が固定化されてきた時に、それをリスクと捉えていますね。強いコミュニティほど固定客は生まれるけど、新規の人が入りづらくなるので、極力期待値が揃いすぎないようにしています。

sake100のコンセプトが活きた日本酒「百光」

個人の強い熱量が大切

続いて、もう少し踏み込んだ話題に移ります。ブランドの人格を誰が決めているか、共通していたのは「熱量」というキーワードでした。

木村さん:ちなみに、ブランドの人格って誰が決めてます?

貞清さん:僕らは、みんなで話しながら、商品を作りながら、そこに言葉を載せていく感じですかね。

野崎さん:例えば、スープストックは社長の遠山が決めてますけど、最近立ち上げたブランドは、やいのやいの話しながら私達は何者だ、を議論する感じです。ただ、その過程自体が自分たちがコミットしていくことに繋がると思っています。決裁フローがそこまで決まってないので、自分とブランドをどのくらい一致させていくかが大切で、声がでかい人が勝つ、というのが理想。

貞清さん:BAKEもそれは一緒で、ある程度やりたいって人、大きな熱量がある人に任せて、あとは頑張って!といったやり方です。

生駒さん:僕らも合議の形だが、決定権は多数決ではないですね。

野崎さん:例で言うと、例えば100本のスプーンを作った時、庭部分がジャングルみたいなになっている場所があって、そこを公園にしようとしたんです。初めの方は、普通の公園のような感じでつくっていたんです。
ただ、途中まで進んでいたものを広報が気に入らなくて。それを一回白紙にして、子どもたちが自分たちで作る公園にしよう、という方向転換をしてるんです。こういうプロセス自体が人格を形成しているんだと思ってます。

貞清さん:個人の熱量から走り出すことの方が多い印象ですね。僕らは皆がブランドのことを自分の子供みたいな形で思っていて、「これ自分だったら買う?わざわざ行ってまで。」みたいな話をしながら突き詰めていってます。

100本のスプーンのコドモ建築家プロジェクト

熱量のある個人がブランドをつくる

後半の方は“熱量”という言葉が多く出てきた時間に。スマイルズ野崎さんは個人の思いつきとか熱量とかがないものは成功しないのでは、と語ります。

野崎さん:何かがうまく行かない理由なんていくらでもあるんです。なので、きっと成功のロジックにはまらないものが成功してくるのではないかなー、と。それをドライブするのは熱量だと思いますね。

木村さん:つまり、熱量のある人のコンサマトリーが事業を引っ張っていくってことですね。

生駒さん:普通に日本酒販売をやっていくなら、ちょっとずらしたくらいの価格で売りますよね、皆わかりやすいので。
ただ、僕は世界は人間の意志によって出来上がっていると思っていて。誰かがやり抜きたいという意志があれば、世界はそれに合わせて対応していくはずです。
僕らは世界に日本酒を広めたい、という強い意志があります。ただ、特定の原体験に紐付いてモチベーションが続くってそんなに気にしてなくて、小さい喜びが降り積もっていって、それが揺るぎないものになっていくのでは、と考えてます。

貞清さん:その積み重ねがブランドなんだと思いますね。


ブランディングには多様な議論がされていますが、
今回のトークセッションでは総じて、
「個人の熱量」がキーワードだったように感じます。
ブランディングには一定の枠組みはあるものの、
推し進めて行くには、個人の熱量が必要である。
これからブランディングを考える人への、
示唆がもらえるようなセッションでした。
何かの参考になれば幸いです。


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