最近注目を浴びているビジネスモデルの新潮流・D2C。聞いたことがある人も少なくないのではないでしょうか。D2Cの定義やメリット・デメリット、国内外の成功事例などをご紹介します。
D2Cは「Direct to Consumer」を略した言葉で、メーカーが卸売業者や店舗などを介さずに、自社が運営するECサイトから消費者に直接商品を販売するビジネスモデルのことです。D2Cと表記することもあります。商品の企画から生産・販売まで、間に業者をはさまずに一貫して行うため、高品質な商品でも低価格で提供することができます。中でもアパレルや美容、食品など、これまでは店頭での接客を経ていた商品が多く扱われています。
日本ではまだ馴染みが薄く、取り組んでいる企業も少ないビジネスモデルですが、アメリカではスタートアップ企業がこのD2Cをうまく活用したことで大きな成功を収めた事例があり、日本でも注目度が高まってきています。
D2Cはなぜ今、盛り上がっているのでしょうか。それは、SNSの台頭が関係しているといわれています。SNSの登場によって、企業が消費者とダイレクトにコミュニケーションを取ることができるようになったことで、店頭販売に頼らなくとも消費者に働きかけることができるようになったため、D2Cは今、話題になっているのです。
D2Cにはこれまで主流だったビジネスモデルと比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しくチェックしていきましょう。
【メリット】
■中間業者にマージンを取られることがないため、利益率が高いケースが多い
これまではメーカーと消費者の間には中間業者の手が入り、マージンが上乗せされることで、商品の価格が上昇してしまうこともありました。
しかし、上でもすでに述べたように、D2Cではメーカーと消費者との間に介在する業者がいません。このようなシンプルな構図になったことにより、それまで中間業者に支払っていたマージンがなくなり、余分なコストを削減することができるようになりました。また実店舗を持たない場合、固定費もカットできます。
こうしたコストカットの結果、メーカーは利益率を高めつつ、消費者には商品をより安く提供することができるケースが多くなりました。
■AmazonなどのECサイトへの出品の際に発生する価格競争を避けられるケースが多い
Amazonや楽天などの大手ECサイトに商品を出品した場合、そのECサイトの知名度の恩恵にあずかり、多くの消費者に見つけてもらいやすくなるというメリットは確かにあります。しかしながら、ほかに出品されている膨大な競合商品との価格競争をしなければならないという状況にも陥ります。
D2Cの場合、競争相手のいない自社ECサイト内で消費者と相対するため、価格競争を行わずに販売することができるケースが多くなっています。
■Amazonや楽天などの大規模ECサイトに対して自由度が高い
上にも記したように、Amazonや楽天などの大手ECサイトには集客力という強みはありますが、多くのルールやシステムの制約が存在し、独自のマーケティング施策を行うには難しい場所です。一方、D2Cの場合、自社ECサイトで独自色を押し出した施策も自由に行うことができるのです。
■自社ECやSNSを通じて消費者の声をダイレクトに吸い上げて商品に反映させることが可能
D2Cでは、自社ECサイトやSNSなどで消費者と直接密にコミュニケーションを取ることによって、消費者の生の意見や要望などを吸い上げ、それらを商品の改善や新商品開発、マーケティング戦略などに活かすことができます。
■SNSを通じたブランディングによりユーザーの囲い込みが期待できる
D2Cでは、SNSを活用して消費者との信頼関係構築、いわば“ファンづくり”で成功することができれば、自社に対して惚れ込んでくれる、熱量の高い消費者をより多く囲い込むことができます。
■スタートアップベンチャーが知名度を得るための手段として有効
上記のようなSNSの活用などによって、消費者とのコミュニケーションやブランディングなどに成功することができれば、創業して間もないスタートアップベンチャーでも知名度アップが期待できます。
このように多くのメリットが得られるD2Cですが、一方でデメリットも存在しています。上記のようなメリットがある裏に、どのようなデメリットがあるのかも、しっかりと確認して対策しておきましょう。
【デメリット】
■自社のECシステムと物流システムを立ち上げる必要がある
D2Cでは、メーカーと消費者との間に入る業者がいないということは当然ながら、それまで中間業者が行っていたことを自社で全て賄わなければならないということになります。そのため、消費者とやり取りを行う自社ECシステムや、消費者に商品を届ける物流システムを構築する手間やコストがかかってしまいます。
■自社ECに頼り切るため、信頼度という意味ではブランディングが大変
昨今の自社ECサイトの立ち上げ自体は、ひと昔前と比較すれば、さほど難しいものではなくなりました。しかし、集客のための施策を自社で行わなければならず、運営が軌道に乗るまでは集客力不足で赤字になってしまう場合もあります。また、集客力アップのために専門人材を登用した場合、コストが増してしまうケースも考えられます。
■集客がSNS中心となるため、常に話題性のあるコンテンツを発信し続ける必要がある
D2Cにおいて消費者とダイレクトにつながる場であり、集客の要となるSNS。ここでより多くの消費者の耳目を惹きつけ、ファンを獲得するには、ただ漫然と投稿し続ければ良いわけでは決してなく、常にキャッチーな情報を発信し続けなければなりません。SNSマーケティングに明るい人材の登用が必要になる場合もあるでしょう。
D2Cで成功するには、理屈を理解するだけでなく、成功を掴んだ企業がどのようにD2Cを活かしたのか、過去の事例もしっかりとチェックしておきましょう。
ここではまず、D2Cが日本よりも早く盛り上がりを見せた海外の事例をご紹介します。
【Glossier(グロッシアー)の事例】
ニューヨークのコスメブランド「Glossier」は、D2Cの成功事例としてとりわけ有名です。
Glossierの創業者であるエミリー・ワイズは、もともとVOGUE社にスタイリングアシスタントとして勤めていました。その時の経験を活かしてファッションブログを開設したところ、そのブログは月間約140万人が訪れる大人気ブログへと成長。このブログでユーザーと交流を深めていくにつれ、エミリー・ワイズはユーザーのリアルな声を反映させたコスメブランドを立ち上げることを決意し、2014年にGlossierを起業しました。
Glossierは創業と共に圧倒的な集客に成功し、短期間で急成長を遂げました。エミリー・ワイズのファッションブログがすでに多くの熱狂的なユーザーを囲い込んでおり、創業と共にブログユーザーがGlossier のサービスサイトになだれこんだためでした。
Glossierはブログに留まらず、インスタグラムを活用したSNSマーケティングでも成功を収めます。
具体的な施策の例として、インスタ映えを利用した事例があります。Glossierの商品にインスタ映えするようなステッカーを同梱し、そのステッカーとGlossierタグ(または商品のタグ)を使ったユーザーの投稿を、Glossierがリポスト。それを見たほかのユーザーがまた同様に投稿する……という流れを作った施策です。こうした仕掛けを成功させ、Glossierのインスタグラムのフォロワーはぐんぐん増加していきました。
なお、Glossierの快進撃においては、もともとGlossierの商品がユーザーの声を反映させて開発された、ユーザー目線の優れた商品であったこともポイントです。商品に力があるからこそ、ブログやSNSが盛り上がりを見せたのです。
【Casper(キャスパー)の事例】
アメリカのマットレスブランド「Casper」も、創業から最初の2年間で約100億ドルを売り上げた実績があり、D2Cの成功事例としてよく取り上げられます。
アメリカのマットレス市場は日本と比べて非常に大きく、商品のバリエーションも膨大です。ところが、選択肢がとても多いということは、消費者は自分にぴったりの商品を自分で綿密に比較検討した上で選ばなければならないということでもあり、業界内でも問題になっていました。
そうした消費者のストレスに着目したCasperは、睡眠のための理想的なマットレスを研究開発し、ただ一つのモデルのみ販売するという戦略を展開。配達には業者を使用せず、Casperが消費者の家に直接届ける仕組みで、コンパクトな箱にマットレスを圧縮するという配送方法で物流コストもカットしました。
Casperは消費者を面倒な「選択する」作業から解放しただけでなく、中間コストを省いた分、商品をリーズナブルに提供し、もし購入してみて合わなかった場合は100日以内なら無料返品可能という条件をつけて安心感もプラスしました。さらに、インフルエンサーを活用したSNSでのおしゃれなプロモーションを実施し、多くのフォロワーの獲得にも成功しました。
【Warby Parker(ワービーパーカー)の事例】
D2Cの先駆者といわれるのが、2010年に4人の学生が立ち上げたメガネブランド「Warby Parker」です。Warby Parkerは高品質なメガネを提供しながらも、中間業者を省いたことで、一般的なメガネよりも安価な一律95ドルでの販売を実現しました。
しかし、Warby Parkerがメガネブランドとして画期的だったのは、メガネの試着にまつわる施策でした。
メガネを購入する時は店頭に足を運んで、あれこれと試着を繰り返す作業が発生するものです。そんな中、Warby Parkerはオンラインでメガネを試着することができる仕組みを採用。消費者は最終的に5つのメガネを選択でき、選んだメガネが自宅に配送され、5日間実際に無料体験できるのです。なお、体験後の返送も無料です。
さらにWarby Parkerは、メガネを試着する際、消費者の多くが身近な人に感想を聞く傾向があるという点に着目。消費者がメガネを試着した画像などをSNSでシェアするよう促す施策を展開することで、広告費をかけずに認知度を高めることに成功しました。また、その投稿に#Warby Parker などとハッシュタグを付けると、Warby Parkerのスタッフからフィードバックコメントがもらえるというサービスも実施しました。
海外だけでなく、日本にもD2Cを活かし、躍進している企業があります。ここでは国内におけるD2C活用例をご紹介します。
【Minimal(ミニマル)の事例】
「Minimal」は2014年にスタートしたクラフトチョコレートメーカーです。Minimalは代表自らカカオ産地に足を運び、良質なカカオ豆の選定や仕入れ、チョコレートの成形までの全工程を自社で管理する、新しいチョコレート作りのスタイル“Bean to Bar(ビーントゥバー)”を採用し、日本でその先駆者的ポジションを獲得しました。
実店舗を持つMinimalでは、店頭にチョコレートへのこだわりを綴った説明書を設けるなど、消費者にファンになってもらう施策を実施。さらに、SNSでのブランディングや、WEB限定トライアルセットの販売、毎月チョコレートが届く定期便など、オンラインでの施策にも力を入れています。
【ALL YOURS(オール ユアーズ)の事例】
「ALL YOURS」は、服を着用した時に感じるさまざまなストレスを解消する商品を製造・販売するアパレル企業です。例えば、「雨に濡れる」という課題を解決する商品として、急な雨でも対応できる水を弾くパーカーを販売するなど。商社や小売店などを経ず、商品の製造から販売まで自社で一貫して実施するD2Cモデルを取り入れ、高機能でありながら、適正価格での販売を実現しています。
なおALL YOURSでは、プロダクトのユーザーたちに商品開発のプロセスに参加してもらったり、イベントなどでブランド体験を深めてもらったりと、ユーザーと共にブランディングを行うことを重視しています。ユーザーと「共創」する取り組みの一つであるクラウドファンディングのチャレンジは成功を収め、話題になりました。
【objcts.io(オブジェクツアイオー)の事例】
「objcts.io」は、イノベーターの感性を刺激する製品作りを行うレザー製品ブランドです。その中心的アイテムであるバックパックは、15回の試作を繰り返し、本革を使用しながらも軽量化と高い防水性を実現しています。
objcts.ioでは、製品の企画・製造~販売までを社内で全て担うだけでなく、ECサイトとオフィス併設のショールームを活用して実店舗のコストカットを行うというD2Cモデルを採用しています。さらに、ユーザーと直接つながることができるというD2Cの特性を活かし、ユーザーの意見を取り入れて次々に製品改良を行っているのもポイントです。
時代の変化に伴い、消費のあり方やビジネスモデルも日々スピーディに進化し続けています。D2Cもそのような流れの中の一つで、これまでの常識を覆しながら、ビジネスモデルの最先端をひた走っています。今後もその動向に注目してみてはいかがでしょうか。
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