公開日:2016年5月26日
更新日:2019年7月18日

ファッションビジネスの中心地!今注目のNYスタートアップ事情

ファッション系のスタートアップが続々と誕生しているNY。この記事ではNYのスタートアップ・シーンやファッション・ビジネスを中心としたMeetupイベント(NYC×Fashion×Startup)のレポートを通して、NYのスタートアップシーンの今を読み解きます。

5/16に開催された「NYC×Fashion×Startup」。
NYのスタートアップやファッションビジネスに興味をもつ人のためのMeet UPイベントです。

今回はイベント後半の識者5名によるパネルディスカッションの模様をレポートします!

前半のMaterial Wrld Co-Founder・矢野莉恵氏のトークセッションレポートはこちらから

スタートアップの集積地として存在感を増す ニューヨークの特徴

「NYC×Fashion×Startup」は5/16に開催されたNYのスタートアップ・シーンやファッション・ビジネスに興味のある人たちのためのMeetupイベント。
ルビーグループが運営するTheFLAGの運営責任者・吉岡芳明氏が発起人となって開催されました。

イベント後半のパネルディスカッションの前に、まずはNYのスタートアップを取材し、実際に現地のスタートアップでインターンとして勤務した経験ももつ江原理恵氏よりNYのスタートアップシーンの特徴について解説していただきました。


▲RE株式会社 代表取締役江原理恵氏。ボタニカルデザイナー、ソーシャルメディア関連の企画・支援、ニューヨークのスタートアップシーンの取材など多岐にわたって活躍している。
私は数年前にNYでのインターンを経験し、実際に現地のスタートアップで働きながらNYのスタートアップシーンを取材してきました。
その経験をふまえて、NYスタートアップの特徴をみなさんにお伝えできればと思います。

まず私がNYに興味をもった理由ですが、リテール系のサービスが多く、その中でもデザインの優れたプロダクトが多いと感じがことがきっかけでした。
経済規模も大きく、人口が密集している世界最大規模の都市であることも理由のひとつです。

都市の規模としては東京もNYに近い大きさですが、「東京とNYの大きな違いは多様性」です。

私が聞いた話では、NYでは700もの言語が使われているそうで、宗教もライフスタイルも全く異なる人たちが集まって暮らしているのがNYという街です。
世界で最もグローバルで、最大の都市がNYであると言えるでしょう。

そんなNYではテック系企業に従事しているのが30万人、73億ドルの投資が行われています。

スタートアップといえばシリコンバレーのイメージですが、NYもここ最近「シリコンアレー(Alley=裏通り)」と呼ばれ注目を集めています。

スタートアップ集積地としての歴史が長いシリコンバレーはすでにFacebookやTwitterといった巨大な企業を生み出していますが、NYは少し遅れて1995年ごろからスタートアップ支援に力をいれはじめ、現在ではファッションやアドテックなどのスタートアップが集積する街になりました。
NYはシリコンバレーと比べて女性起業家の比率が高いのも特徴ですね。

また事業領域が多セクターにまたがっているのも特徴で、「◯◯系」とひとくくりにできない企業も多数あります。
例えばメディア系サービスがコマースに参入してモノを売り始めるといった動きがよく起きています。

ブランド立ち上げの手助けをする企業やサービスもたくさんあって、クラウドファンディングのKickstarterで資金を集めながらブランドの認知を高めてから正式にブランドをオープンさせるという流れも増えてきています。

他にもRINGLYなどのファッショナブルなハードウェアも人気を集めています。

このようにITを絡めたユニークなブランドからリテールやファッション事業者をサポートする企業まで幅広く存在しているのがNYファッションスタートアップの特徴です。

今後注目すべきはフルスタック型のメーカー


▲パネルディスカッションの様子。左からモデレーターの(株)ソウゾウ代表取締役社長 松本龍祐氏、Material Wrld Co-Founderの矢野莉恵氏、RE(株) 代表取締役江原理恵氏、(株)TO NINE 代表取締役 増田智士氏、(株)ソウゾウ Webデザイナー 井上雅意氏、土屋鞄製造所 沼田 雄二朗氏。

松本氏:それではここから先はNYスタートアップに造詣の深い5名の型とパネルディスカッションを行っていきたいと思います。
まずは先ほどご登壇いただいた矢野さんと江原さん以外の3名の方に自己紹介をしていただきたいと思います。

増田氏:はじめまして、(株)TO NINEの増田です。
私は2年前に起業したのですが、きっかけは世界のマス市場で日本のブランドが存在感をしめせていないと感じたことでした。
海外の人たちの口からは日本のブランドとして「ユニクロ」と「MUJI」しかでてこなくて。

逆に日本から見ると、このプロダクトがなぜ世界で戦えないのか?と感じるブランドがたくさんあり、そのサポートをしていきたいと思い起業しました。
これまでにも初期のファクトリエで立ち上げをサポートしたり、Knotという時計ブランドを立ち上げ初期からサポートしてきました。

井上氏:(株)ソウゾウで新規事業を担当している井上です。
私は自分でサイドビジネスとしてファッションブランドを立ち上げました。
テクノロジーの進化によって立ち上げまでは容易になったものの、その後の売る部分をサポートする仕組みが少ないように感じています。

その思いを本業であるソウゾウでも生かして、ブランドの「売る」部分をサポートすることでさらに新しいブランドが生まれやすい土壌を作っていきたいと考えています。

沼田氏:土屋鞄製造所の沼田です。
私は会社でのリサーチ業務として2年前に1年ほどNYにいました。

NYではマス向けではないけれど、特定の人に人気が高いオンライン発のブランドが増えてきており、土屋鞄ももともとはECからはじまったという経緯もあり、NYスタートアップの新しい動きを随時リサーチしています。

松本氏:早速ですが、皆さんが注目しているスタートアップはどんなものがありますか?

沼田氏:最近は企画から販売まで一貫して行う「フルスタック型」が増えてきていますね。

Casper(キャスパー)というマットレスブランドがあるのですが、オンラインで直接販売する方式をとることで店舗の土地代や販売員の人件費を削減し、高品質なアイテムを安価に提供しています。

「品質に対して価格が安いこと、ECメインであること、おしゃれであること、ソーシャルグッドな要素があることの4つの要素」をもつブランドが各カテゴリで人気を集めているように感じます。

江原氏:私もフルスタック型の企業に注目していて、今後もこの流れは広がっていくと考えています。
Harry’s(ハリーズ)という髭剃りのメーカーがあるのですが、ここもフルスタック型でマーケティング費や中間マージンをなくすことで高品質な商品を安価に提供しています。

矢野氏:私はGRASIE(グラシエ)に注目しています。
もともとブログ発祥のビューティー系メディアだったのですが、メディア発の化粧品ブランドを立ち上げてコマースに参入しました。

アメリカのブロガーは戦略的に活動している人が多いので、個人でも百貨店を巻き込んだりランウェイで売り込むといった動きが活発なのも特徴です。

他にはINTURN(インターン)も地味ですが画期的なサービスです。
ファッションブランドにとって在庫処分は切っても切れないものなのですが、アナログで手間がかかることが大きな課題でした。

そこでINTURNはデータエンジニアが分析し、アナリティクスで自動的に値付けをしてINTURNの会員制サイトで販売するという仕組みを作っています。

一般的に毎シーズン2割ほどの売れ残りが発生するので、地味ではありますがブランドにとっては非常に便利なサービスです。

あとはOutdoor Voices(アウトドア・ボイスズ)というアスレティックウェアのブランドにも注目しています。
健康的なライフスタイルを好む層に人気のブランドで、コンテンツとインフルエンサーの使い方が上手いのが特徴です。

VC(ベンチャー・キャピタル)から調達もしていて、VCから調達をするということはニッチなままではいられず大きな成長を求められるので、いかに「ニッチな視点のままで成長できるか」が今後の課題だと思います。

松本氏:VCはどういう視点で出資先のファッションスタートアップを選んでいるのでしょうか?

矢野氏:まずファッション業界はデータで決まる世界ではないので、「こうすればよい」というのがわかりにくく、当たり外れの大きな分野だと思います。
そしてブランドは在庫をもつことになるのでリスクが大きいというのもあります。

ただ時期によって人気のカテゴリというのがあって、例えば2010年ごろはフラッシュセールが大人気で、フラッシュセールを立ち上げれば誰でも資金調達できるといった状況でした。
最近では店舗をもたずにECメインでやっている会社は投資効率がいいことから評価が高い傾向にあります。

ただOutdoor Voicesの例でもお話ししたように、スタイリッシュで分野特化したニッチな存在だからこそ評価されているブランドは「マス化した瞬間にお客様が離れていってしまうというジレンマ」も抱えています。

沼田氏:WARBY PARKER(ウォービーパーカー)あたりはそろそろEXITを目指しているんでしょうか?

矢野氏:WARBY PARKERは調達金額も大きいのでIPOを考えているかもしれませんが、調達金額が数十億程度のところは売却先を探しているところも多いです。
アメリカでは「百貨店も買収に積極的」なので、ノードストロームやニーマンマーカスといった大手百貨店への売却事例もたくさんあります。

アメリカと日本ではECの市場規模の違いが大きい

松本氏:日本だと三越伊勢丹も今年に入って投資事業会社を設立しましたし、今後日本でもファッションスタートアップのEXIT先として百貨店がでてくる可能性もありますね。逆に日本のスタートアップシーンについては皆さんどのように見ていらっしゃいますか?
増田氏:日本のスタートアップは海外の企業やサービスを「日本版にローカライズさせているところが多い」印象です。
例えばファクトリエはEVERLANE(エバーレーン)と似たビジネスモデルです。

あとはOh My Glasses(オーマイグラッシーズ)もWARBY PARKERの日本版といった感じです。

オーダーシャツやオーダースーツを提供する企業も増えてきていますし、先ほども話にでてきていたフルスタック型は日本でもトレンドになっていきそうですよね。

井上氏:私は自分自身がブランドを立ち上げたこともあり、sitateru(シタテル)nutte(ヌッテ)などの小規模ロットでもものづくりができるサービスに注目しています。

工場は常に稼働しているわけではないので、空いているところを使ってクラウドのようなかたちでものづくりができるんです。

あとはorigami(オリガミ)も実際に取り入れてみているのですが、まだすぐに売れるという状態ではないので、これからに期待しています。

松本氏:日本とNYで文化や土壌の違いはあるのでしょうか?

沼田氏:日本ではまだECが普及しきれていない印象はありますね。

アメリカではミレニアル世代と呼ばれる10代〜30代の若者層を中心にECでの買い物が活発で、カスタマーエクスペリエンスが優れているブランドにお金を使う傾向にあります。

矢野氏:やはり日本はアメリカに比べると格段に便利だということが大きいと思います。
アメリカは広すぎて買い物のための移動が大変なので、ECに頼っている面があります。

松本氏:アメリカでのグローバルシッピングの動きはいかがですか?日本に比べると言語の壁がなくスムーズにいきそうなイメージですが。

矢野氏:そこはアメリカにとっても課題ですね。
税金の関係やその国に合わせたカスタムに手間暇がかかるので、大手でもまずは国内限定からはじまって1つ1つ国別に増やしていくところが多いです。

松本氏:グローバルシッピングをやりやすいアイテムというのはあるんでしょうか?

増田氏:やはりサイズはないファッション雑貨はやりやすいと思います。
サイズは国に関係なく共通の悩みで、課題がある分可能性も大きいのではないかと思っています。