公開日:2017年3月28日
更新日:2023年11月30日

メディアが「場」を作る意味とは?大手メディアに学ぶリアルイベント戦略/後編

ここ数年で、メディア主催のイベントやカフェが増えてきました。これまで紙やWebを通して情報発信してきたメディアが、あえてリアルの場をもつ意味とは?4つのメディア事例からその理由に迫るレポートの後編です。

メディアを取り巻く環境は激変する中、新聞や雑誌などのマスメディアが仕掛けるイベントが増えてきました。

これまで紙やWebを通して情報発信してきたメディアが、あえてリアルの場をもつ意味はどこにあるのでしょうか?

そこで今回はPeatixが主催したいま、メディアが「場」を作る意味  それぞれのメディアが考えるリアルの場の役割とは – イベントサロンvol.13のイベントレポートを通して、メディアが場をもつ意味について考察します。

»前編はこちら

(前編は朝日新聞メディアラボの鵜飼氏、コンデナストジャパンの菊井氏のトークです!)

TV、WEB、リアルすべてを掛け合わせるSENSORSの考える、リアルの意義とは

▲日本テレビ放送網株式会社 SENSORSプロデューサー 原 浩生氏

3番目に登壇したのは、日本テレビで放送されているSENSORSのプロデューサー原氏。

TV番組の枠を超えてWEBメディアやリアルイベントを運営する理由について伺いました。

原氏:SENSORSは最先端のクリエイティブやテクノロジー、エンターテイメントを紹介する日本テレビの番組です。

しかしただ番組を放送するだけではなく、WEBメディアやイベントを絡めるなど新しいメディアのあり方を模索しています。

というのも、スマートフォンの登場によってこれまでのテレビのコミュニケーションスタイルでは見てもらうのが難しくなってきているんですね。

毎週何曜日のこの時間にテレビの前に30分とか1時間座って見てくれ、というのは難しいと。

またこれまでは視聴率で番組の価値を測っていましたが、リアルタイム視聴が減っている中で新しい指標を作っていく必要も感じています。

そんな中で立ち上げたのがSENSORSという番組で、日本テレビ社内では橋だけつないで少しだけ外に出るという意味で “出島”と表現しています。

具体的には、番組と連動したWEBメディアの運営や、年に一回「SENSORS IGNITION」というイベントを開催しています。

特にSENSORS IGNITIONでは、ゲストをはじめそこに集う人々と交流してもらうことを目的としており、話すことで記憶に残し、次のアクションにつなげてほしいという思いがあります。

番組に出演してくださった方は全員 “SENSORS MEMBER”と呼んでいるのですが、こうしたアーリーでイノベーティブな人たちのつながりをどれだけ作れるか、という点を視聴率に代わる今後の指標のひとつとして考えています。

そして4月からはそうした人々への投資や出資も増やしていく予定です。

– Q:番組の出演者やSENSORS IGNITIONへの登壇者はどのように選ばれているのでしょうか?

原氏:メンバー全員で “SENSORSっぽい人”の感覚を共有し、私たちのメディアらしい人を取り上げるようにしています。

メンバーの中に、まさに “SENSORSっぽい人”がいるので、その人のセンスとネットワークも大きいですね。

– Q:近年個人でも動画配信が容易になりましたが、イベントで動画を活用するポイントなどはありますか?

原氏:動画配信の場合、やはり1時間座って見続けてもらうのが難しいですよね。

今回のようなイベントであれば、その場所に来てもらいさえすればしばらく座っていてくれますが、動画はワンクリックで離脱することができるので。

そういう意味では、その場で見て体験できるライブ配信の価値は上がっているように思います。

個人で配信するのであれば、動画の質よりもリアルタイム性を重視するのがよいかもしれません。

ほしい未来は、つくろう。一人ひとりのはじめの一歩を生み出すために、greenz.jpがやっていること

▲NPO法人グリーンズ 植原 正太郎氏

ラストを飾るのは「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」をめざすウェブマガジンgreenz.jpを運営するNPO法人グリーンズの植原氏。

イベントや学びの場などを積極的に開催し、人のつながりとそこから生まれる次の一歩を引き出すNPO法人グリーンズの、メディアを起点としたコミュニティの作り方について伺います。

植原氏:私はgreenz.jpというWEBメディアで、コミュニティエディターという役割を担っています。

これはライターのように記事を書くのではなく、イベントを開催したり読者同士をつなげる、というものです。

greenz.jpは「ほしい未来は、つくろう」をコンセプトに2006年に立ち上げた環境系のエコマガジンなのですが、情報発信だけでは限界があると感じていました。

そんなときにロンドンではじまった「green drinks」というイベントを知り、その東京版としてgreen drinks Tokyoというイベントをはじめました。

これは今でも毎月1回、第二木曜日に開催しています。

はじめは純粋に集まって飲むだけのイベントでしたが、回を追うごとにトークイベントやワークショップを絡めるなど新しい取り組みをいれていきました。

今ではひばりヶ丘や松戸、房総など東京以外の場所での開催も支援しています。

そうしたイベントをきっかけにうまれたアイデアをかたちにしたい!という方向けに開催しているのがグリーンズの学校です。

6回ほどの講座を連続で受けていただくことで、単発のイベントよりも深く学び、実践につなげてもらうことができます。

それ以外にも寄付会員であるgreenz peopleの方限定で参加できるイベントや出前グリーンズなどのイベントも開催しています。

何かが生まれるときは人と人とがつながるときだと思っていますので、今後もかたちを変えながらこうしたイベントを続けていく予定です。

– Q:greenz.jpでは環境や政治などのテーマを扱われていますが、そういったテーマに関心のない層を巻き込んでいく集客のコツを教えてください。

植原氏:2011年くらいまではイベント自体の数が少なかったのでイベントを開催すれば集まったのですが、今はイベントの絶対数が増えたので集客に苦戦するときもあります。

気をつけているのは他のイベントにはない、エッジのたったテーマでやるということ。

なので忙しいときは無理してイベントを開催せず、本当に自分たちがやりたい企画だけやるようにしています。

ライト層を巻き込むという点については、まず身近に感じてもらえる切り口を用意するようにしています。

環境や政治という硬いテーマも、子育てや地域を絡めた切り口であれば多くの人に興味をもってもらえます。

さらにイベントで興味をもってくれた人には次のステップとしてより深く学べるグリーンズの学校のような場を設けることで、その場の濃度を調整するようにしています。

– Q:green drinks Tokyoを毎月開催されているということで、イベントを続けるコツ、また逆にやめたイベントもあるのかを知りたいです。

植原氏:先ほどご紹介したとおりgreenzでは様々なイベントを開催しており、毎週1、2件イベントを開催しているような状況です。

それだけの数を4名で回しているので、「型をつくる」ということを意識しています。

green drinks Tokyoは毎月第二木曜日と日程が決まっていますし、場所やケータリング、告知スケジュールなどもすべてフォーマット化していて、あとはゲストだけ調整すれば開催できる、というようなかたちを作っています。

ただ毎月開催しているのも理由があって、半年に1回、3ヶ月に1回というペースだと人が定着しないんですね。

なので、フォーマット化した省エネイベントを毎月コンスタントに開催するようにしています。

green drinks Tokyoのように長く続いているものもあれば、やめたイベントもたくさんあります。

少ない人数で回しているので、何か新しくはじめたら既存の何かをやめる、というかたちでイベントの母数を増やさないように気をつけています。

これからのメディアに必要なのは一方的な「情報発信」ではなく新しいものを生み出す「つなげる力」

4つのメディアに共通しているのは、リアルの場を通して従来の「情報発信」という役割から人と人、人と場所、人と企業などを「つなげる」役割にシフトしているということ。

場所やイベントをプラットフォームとして様々な人を集めてつなげることで、次の新しいものが生まれる場を作り出しています。

今後はさらに、こうしたメディア主催のイベントやコミュニティづくりが活性化していきそうです。

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