カウンターワークスとの共創で実現したマルイの出店サービス「OMEMIE」が独自な店づくりを後押し

株式会社丸井は、カウンターワークスとの共創により丸井独自のリアル店舗への出店サービス「OMEMIE」を2022年にスタートさせました。「SHOPCOUNTER Enterprise」の導入第1号として運用を開始した、その背景や効果、意義についてお話を伺いました。

【プロフィール】
株式会社丸井
清水 将貴 小売DX推進部 OMEMIE担当 課長 (写真右)
石井 香奈子 開発部開発1課 チーフリーダー(写真左)
濱田 綾子 店舗サポート部 イベント課 OMEMIE担当 リーダー
株式会社COUNTERWORKS
松倉 恵子 Enterprise事業部 カスタマーサクセス担当

“売らない店”と“イベントフルな店”の拡大を目指して

松倉:まずは貴社の事業内容について、ご紹介をお願いします。

清水:株式会社丸井は首都圏を中心に全国26店舗の商業施設を運営しております。年間5000回以上のイベント開催と、2000を超えるテナント様の出店から成り立つ店舗事業と、取扱高200億超のEC事業がメインです。私はマルイの出店サービス「OMEMIE」の責任者としてプロダクト開発および社内でオンラインリーシングを推進するための仕組づくりを行っています。現在の部署は20名程が在籍しており、PR・マーケティング、サイト運営、インサイドセールスといったWEBサービスを推進するための役割を担っているのが「OMEMIE」推進担当です。

石井:私が所属している開発部は、主に店と本部・関連部署が密接に連携しながら26店舗のプランニング、テナントリーシング、出店からその後の営業支援など一貫して行っています。

濱田:イベント課はマルイの掲げる“イベントフルな店”作りを目指して、26店舗に200近くあるイベント区画で、年間5000回以上のイベントを実施しています。イベント管理だけではなく、日々のテナント様とのコミュニケーションや、お困りごとにも対応しています。

清水:他の商業施設との違いは“売らない店”と“イベントフルな店”というコンセプトを掲げていることですね。飲食やサービステナントはもちろん、ECが主戦場でリアル店舗を持ったことがないテナント様、その場では販売せず実際に触ったり体験してもらうことで新規の顧客を増やしていくようなテナント様の出店を積極的に受け入れています。また短期で出店可能なポップアップ・イベントスペースを展開し、誰でも気軽にマルイに出店できるような仕掛けを作っています。

石井:マルイに来店するお客様にとっては、今までオンライン上にしか展開しておらず実際に手に取って試すことができず、想像することしかできなかったものが、アクセスしやすいマルイの店舗で実際に体験できる。それは私達が想像していた以上に付加価値のあることでしたね。

松倉:丸井様が弊社のSHOPCOUNTER Enterpriseの第1号導入企業となり、2022年に「OMEMIE」を立ち上げたわけですが、その背景には、“売らない店”、“イベントフルな店”が密接に関係しているんですね。

清水:はい。イベントフルな店を実現するには、通常のリーシングではリーチできない、出会うことができないブランドにもっと目を向けることが必要だと考えたことが背景にあります。ECは誰でも簡単にショップ開設ができるのに対して、リアル出店というのは手続きが煩雑なことが多く、チャレンジしやすい環境ではないんです。

そこで当初は、COUNTERWORKSが提供するポップアップストアの出店支援プラットフォーム「SHOPCOUNTER」に掲載することからはじめました。その際「丸井」という検索ワードで流入するケースが多いことをフィードバックしてもらいました。だったら丸井の専門サイトを作ってみよう!という発想に切り替わったのがきっかけです。その時ちょうど、COUNTERWORKSが掲げる「意志ある人と、自由をつくる。」という企業ビジョンと、丸井が目指す理念が一致して、共創がスタートしたんです。

松倉:「OMEMIE」導入前は、社員の皆さんはリーシングや商談管理などをどのようにしていたのでしょうか?

清水:自分たちの今までのつてを頼りに属人的にリーシングをマンパワーで頑張っている人が大半だったと思います。とにかく足を使うという印象です。直近はウェブで検索したり、インスタグラムなどのSNSを駆使してリーシングを行う人が出てきている印象です。商談管理は試行錯誤しながらエクセルなどを使って可視化するというのは元々やっていましたが、その人の頭の中にしか商談履歴が残ってないという課題もありました。

その上、イベントフルな店を目指していった結果、開催数も年間で5000回以上という数になりました。当然、契約書一つとっても5000回作らなければいけないですよね……。それをオンラインで完結することによって我々だけでなくテナント様双方の業務効率化もさせたいと考えました。

COUNTERWORKSと二人三脚で理想のオンラインリーシングを模索

松倉:弊社との共創はいかがでしたか?

清水:COUNTERWORKSとは、2019年から対話を重ね、丸井への入り込み方がすごく深かったんですよね。担当者の方からは、オンラインリーシングにおけるインサイドセールスとフィールドセールスの区分けや役割についてまで、事細かに教えていただきました。それが今の組織にもしっかり繋がっており、共創は今もなお続いております。また、募集サイトの構築や、PR・マーケティングのあり方など我々が知らない領域についてもアドバイスやお手本を見せてくれました。

松倉:どうやってお客様を獲得し、契約まで持っていくかといったフロー全体の設計を一緒に伴走をしてきたと認識していただいているんですね。

清水:はい。おっしゃる通りです。

松倉:「OMEMIE」導入にいたるまで苦労したところはどういうことでしたか?

濱田:当時、私は店舗のイベント運営とリーシングも担当していました。リーシング業務がDX化されて便利になるんだろうというのは頭ではわかってはいても、それを実際に自分たちの現場でどのように活用していくのかが全くわからない状況でした。特に我々は大所帯なので、全員が一定レベルまで活用できるようになるまで非常に大変でした。

石井:私たちのいる開発部には、いわゆる百貨店のような売上歩合による仕入契約から、不動産型で家賃収入を基本とする定期借家契約への転換を行ってきました。丸井としての大きな変革を経験したメンバーも多いので、今までの業務をDX化することで更なるアップデートが求められることに不安を感じている雰囲気がありました。

松倉:と言いますと?

石井:常設の出店というのは、出店交渉の要である経済条件、区画の内装・設備工事の知識を全部セットで把握しつつ期日を守り無事開業までサポートすることが求められます。うまく進めていけるようになるまでのスキルを身につけるには、個人差はありますが、数年単位で時間がかかるケースもあります。「こんなに難しい仕事が誰でも簡単に実現できるのか?」という雰囲気はありました。ところが、若い世代を中心とした開発部に入ってくるメンバーにとっては、初めから「OMEMIE」というツールをうまく活用しながら、同じようなリテラシーを持ったテナント様と一緒に使いこなしているんですよね。

アナログ世代のプロ意識を下の世代に伝えていき、デジタル世代の技術の活用方法を上の世代に伝えていく。お互いの得意なところを受け入れて一緒に取り組むまでのチームをつくるという点が難しく感じることもありました(今では、わからないことを素直に教えて!と声を掛け合える組織に変わり、良い風土に代わっているように感じます!)

濱田:イベントの場合は、開催期間が短いので数をこなしていかないといけない。そのため社内で関わる人間が非常に多く120人ぐらいいます。そのメンバーになぜ「OMEMIE」を使っているのか? 何のためにやっているのか?をきちんと意識付けをしたうえで同じ方向を向いて一緒に頑張っていくという土壌作りが必要だなと感じました。

トップの理解と現場の地固めで風土を醸成していく

松倉:みなさんどうやって、その苦労を克服していったのでしょう? これからDXを考えていく企業様にもアドバイスになるようなお話が伺えればうれしいです。

清水:この取組みに対して社長自らがコミットしてくれたことが非常に大きかったですし、一番重要だと感じています。些細なことでも相談しやすい雰囲気を作ってくれたことが、組織全体の風土醸成にもつながりました。もう一つは、石井のような現場のキーマンがどこの会社にもいると思うんですが、そのキーマンと一緒に、徹底的に自分たちが実現したいあるべきリーシング像に向けて、言い続ける、やり続けることですね。

石井:私も周りの同僚達も言い続けるし、何か困ったときは清水にもフラットに相談に行けるという円滑な人間関係を日々醸成するフローは、どの企業にもできることではないですが、重要なのかな、と。今年の10月で私も「OMEMIE」に関わって1年になりますけど、そこは強く感じています。

松倉:イベント課では120名の意識付けに苦労されたということでしたが、解決するためにどのような工夫をされましたか?

濱田:清水のいうトップから浸透していく風土醸成と並行して進めたのが、個人の能力や適性、習熟度に合わせた学習スタイル「アダプティブラーニング」です。イベント課の中には店舗エリアごとに担当がおり、そこにOMEMIE担当を人ずつつけて、一人ひとりに最適化された学習内容を提供してスキルを上げていきました。

松倉:一人ずつですか?

濱田:イベント担当というのは1エリアの中でも、現場の運営をする人、契約手続きをする人といったように、必要な学習内容が各々違います。全体の研修だけだと、人によって知りたい部分が異なるので、アダプティブラーニングで私達が各エリアに赴いて、細かくサポートをする必要がありました。

清水:現場の人が自分事として使って、現場目線で伝えていかないと広まらないですよね。

松倉:トップの理解と現場を補足していく具体的な工夫が必要なのですね。ちなみに、周囲へしつこく言い続けるという石井さんの強いモチベーションを維持できたのはなぜでしょうか?

石井:まず一つ目は、お客様に誇れるいい店を作りたいという思いがブレないということです。二つ目はパートナーであるテナント様に対して、出店を提案する商談の場で「OMEMIE」は説得力があってうまく活用できるという自信があったからだと思います。例えば、今までは紙面を中心とした資料の作成や、アナログなやり取りを複数回行っていたことが「OMEMIE」を活用し、興味のある店舗の区画一覧をモニターで一緒に確認しながら現地確認のような紹介も叶いますので、テナント様もリアリティをもって条件を検討してくださって、具体的なイメージができたから、じゃあ実際にマルイへ足を運んでみようか!とその場で判断をしてくださる…などといったメリットが大きいんです。

共通言語で会話ができるようになり作業効率がアップ

松倉:「OMEMIE」の立ち上げ後、どのような変化がありましたか?

清水:このような大きなプロジェクトの場合、ついつい目先の自分の仕事に目が行きがちで、新しいことを受け入れるのに時間がかかり、後回しになりがちなのですが、「OMEMIE」を信じてみんなで取り組んできて、組織として一体感が出てきたと感じています。

濱田:共通のツールを使ってみんなが同じやり方で管理ができるようになったため、イベントスケジュールの全体共有が可能になりました。みんながこの「OMEMIE」という共通言語で話をすることができるようになって、非常に良い取組みに繋がったと思っています。

定量的な効果で言えば、作業の簡略化と抜け漏れがなくなったことで、1回のイベント出店に対する業務時間が約60分も削減されました。具体的には、売り場の担当スタッフが1社1社に対してメールを送ったり、出店いただくにあたってデータのやり取りをする際の抜け漏れがなくなりました。このように作業効率がアップした分、売り場に立つ時間が増え、よりお客様を接客できる時間の確保につながったと聞いています。

松倉:それは大きな効果ですね。 今後の展望、次の目標などをお聞かせください。

清水:現状はテナント様とのマッチングが中心ですが、「OMEMIE」を中心に情報の一元化やリーシング業務自体が誰でもできるようにしていきたいです。そして、誰が対応してもすべてのテナント様に対して同一のクオリティで対応できるようにしていきたいですね。

石井:リーシング担当として、一人前の業務を覚えられるまで数年間かかっていたところが、「OMEMIE」が入ったことによって短期間でスキルが取得できれば、若手メンバーにとってはキャリアの前倒しが期待できると思いますし、ベテランのメンバーにとってはこれまで時間がかかって当たり前だった業務が効率化できれば、時間にゆとりが生まれて、テナント交渉の内容ももっと深い話ができる。そうすると今よりずっと早い段階でベテランと若手がミックスされたバランスの良いチームができると思っていて、お互いのいいところを活かして伸ばすという私はそういったチームづくりを目指したいです。

濱田:テナント様とお客様にいかに喜んでもらえるか、マルイに足しげく通い続けてもらうことができればいいなと思います。

松倉:今後、どんなテナント様に参加いただけると嬉しいですか?

石井:「OMEMIE」を導入して、自分たちでは気が付いていなかったようなカテゴリーのテナント様からオファーをいただいた!ということに驚かされることが多いんですよね。

それって自分の開発領域が全然拡げられていないという発見にもつながるんです。どんどんこちらにそういう気づきを与えてくださるテナント様との出会いが「OMEMIE」を通じてできたらいいなと思っています!

松倉:すばらしいですね。今後も「OMEMIE」を通じてたくさんのよい出会いが生まれるよう、私も頑張っていきます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

マルイの出店サービス OMEMIE(おめみえ)

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